シークエンスキャプチャー技術は、次世代ゲノムシークエンスを効率的かつ低コストで行うために、全ゲノム中の連続的な領域や、不連続な領域、エクソン領域など、シークエンスしたいターゲット領域を選択的に抽出する技術です。回収したいゲノム領域に対するプローブを搭載したマイクロアレイを用いてハイブリダイゼーション、洗浄、溶出、増幅を行い、ターゲット領域(回収したいゲノム領域)のみをエンリッチさせます。従来のPCR法をベースとした方法と比較して、時間、コストを大きく削減する事が可能となりました(コスト1/10、時間1/5当社比)。
Roche NimbleGenでは、2種類のキャプチャー法、液相反応試薬であるSeqCap EZと、アレイベースのSequence Capture Arrayを提供しています。


ターゲット領域とは、抽出したい(シークエンシングしたい)特定のゲノム領域です。ターゲット領域としては、 特定の遺伝子群のエクソン 、 疾患関連領域などの特定のゲノム領域 、 エクソームや既知のESTなどの網羅的な断片領域 、など、自由に選択していただくことができます。総塩基サイズが各製品の仕様に収まるようにご選択ください。

▲非連続的な領域(左)、連続的な領域(右)のターゲットシークエンシング例
3段目:ターゲット領域として設定した領域。
2段目:キャプチャー用プローブが設計された領域。
1段目:ターゲットシークエンシング結果(リード/塩基)。

プローブの設計はエンリッチメントの成否とシークエンシング結果において最も重要です。
例えば、ターゲット領域に等間隔でプローブを配置するという標準的なタイリングデザインでは、特にエクソン領域をターゲットとした場合では、エクソン間でのカバレージプロファイルにバイアスが生じる傾向があり、良好なシークエンスパフォーマンスが得られない場合があることが実証されています。
シークエンスキャプチャーアレイ および SeqCap EZ Library では、お客様の指定したターゲット領域に対して、専任のインフォマティシャンが最適なプローブを設計(デザイン)いたします。
385Kアレイでは最大38万5千種類、2.1Mアレイでは最大210万種類という圧倒的に大多数のプローブが利用可能であることから、ターゲットに対して複数のプローブを割りあてることができます。プローブ同士は互いに重なり合う位置に配置されますので、例えばミスマッチやインサーションが入ったゲノム断片が、ある1つのプローブでキャプチャーできなかった場合でも近傍のプローブによりキャプチャーされます。このようにプローブを厚く配置することにより、シークエンスデータの取りこぼしを防ぐことが可能なのです。
▲シークエンスキャプチャープローブ設計模式図
Roche NimbleGenのシークエンスキャプチャーでは長鎖のオリゴヌクレオチドをプローブとして利用しますが、その長さは一定ではありません。リファレンスとなる遺伝子配列に応じて長さを可変させています。さらに、お互いに重なり合うプローブ同士は一定の間隔で配置されているわけではありません。これまでの数多くの実験によって得られた知見に基づく独自のアルゴリズムでプローブが深く重なりあう領域や広く間隔の空いた領域を作ることにより、均一性の高いシークエンシング結果が得られます。
▲シークエンスキャプチャー用プローブ設計模式図
シークエンシング結果が均一的に得られると、結果的に小規模のシークエンシングで十分なシークエンスデータを得ることが可能となります。
▲プローブ設計アルゴリズムとシークエンシングリードの関係模式図
ゲノム配列上には高度に反復して出現するリピート領域が分散しています。ハイブリダイゼーション実験用のプローブはこれらのリピート領域を含まないように設計する必要がありますが、一般的なリピートマスク法を適用すると、ゲノム上の約50%がマスクされてしまい、プローブ設計可能領域が極端に狭まってしまいます。Roche NimbleGenのシークエンスキャプチャーでは独自の方法でリピート領域をマスクすることで特異性を保ちながらプローブ設計可能対象範囲を広くとることができます。このため、プローブが設計できないために研究対象のゲノム領域のシークエンスデータプローブが得られない、という事態を避けることができるのです。
▲各リピートマスク法でマスクされた領域(白)と、プローブ設計可能領域(黒)

非常に小さい領域をターゲット領域として指定した場合には、ターゲット領域を両外側に拡張することで、目的領域が確実にキャプチャーされるよう工夫しています。また、リピート領域に対してはプローブが設計されませんので、プローブを実際に配置した領域と、最初のターゲット領域の指定領域とは一致しません。このため、Roche NimbleGen で設計させていただいたカスタムデザインは、製品の製造の前に必ずデザイン結果の内容をご確認いただいています。お客様の提示されたターゲット領域と、ご提案したデザインとを比較し、シークエンスデータの必要な箇所にきちんとプローブが設計されているかどうかをご確認ください。提案させていただいたデザインで問題ない場合にもその旨を弊社までご連絡ください。デザインに微調整が必要な場合にはその変更内容をご連絡ください。
▲お客様の指定したターゲット領域と Roche NimbleGen によるデザイン結果のプローブ設計領域模式図
参考資料: カスタムSeqCapデザイン結果確認ガイド_1011

シークエンスキャプチャーアレイは常温で、SeqCap EZ Library は冷凍で保存してください。ご注文(デザイン承認)いただいてからおおよそ 4 ~ 8 週間でのお届けとなります。

使用予定のシークエンサーで推奨しているライブラリ調製キットのプロトコールに従い、ゲノムDNA から標準的なショットガンシークエンシングライブラリーを作製します。インデックス(バーコード)利用される場合には、インデックス(バーコード)入りのアダプターを使用しするか、インデックス(バーコード)配列を導入してください。
概要)
ゲノムDNAを断片化・ポリッシングします。 (断片サイズは使用予定のシークエンサーに応じて変更してください)
↓
使用するシークエンサーに応じたアダプターをゲノム断片の両端に結合させます。
↓
少数サイクルのLM-PCR(LM-PCR: Ligation Mediated PCR)により増幅します。
ゲノムの断片化は、ランダムな位置で切断される方法(ネブライザ、コバリス等)で行いますので、調製したライブラリDNAプールには同一ゲノム領域に対して長さと位置の異なる複数分子種の断片が含まれているはずです。このため、1つのプローブからキャプチャーされると予測されるゲノム領域は1種類のプローブの両側に広がり、プローブ配列の箇所が最もカバレッジが厚く、端ほど薄くなると予想されます。
▲プローブとライブラリ分子のハイブリダイゼーションイメージ

概要)
調製したゲノムライブラリーをシークエンスキャプチャーアレイ上でハイブリダイゼーションを行います。
↓
ハイブリダイゼーション後のスライドを洗浄し、プローブと結合しなかった段権を洗浄除去します。
↓
スライド上のプローブと結合している断片を溶出させて回収します。
↓
エンリッチされた断片プールを少数サイクルのLM-PCR で増幅します。
ハイブリダイゼーションに用いるライブラリ分子は少数サイクルの LM-PCR で増幅したものを用います。このため、この、両端にアダプター配列を持つ 2 本鎖 DNA をハイブリダイゼーションに用いると、アダプター配列同士でのハイブリダイゼーションが起こり、プローブに特異的ではない分子が回収されてしまう可能性があります。Roche NimbleGen の各プロトコールでは、このような非特異的ハイブリダイゼーションを防ぐために、HEO ( Hybridization Enhancing Oligo ) を添加しするよう指示しています。これはアダプター配列をブロックするためのオリゴ DNA ですので、使用するシークエンサーの種類によって HEO の配列は異なります。
▲非特異的ハイブリダイゼーションを防止する HEO 模式図

ハイブリダイゼーション・キャプチャーの前後で、ターゲット領域が濃縮されているかどうかを確認します。
ヒトキャプチャーの場合には、アレイまたはSeqCap EZ Library に予めコントロールプローブが含まれています。エンリッチメントの成否を評価するためのプローブをご自身で設計する必要はありません。ヒト以外の生物種での実験の場合には、プローブ設計箇所からいくつかの領域をピックアップして、qPCR プライマーセットを設計してエンリッチメントQCを行ってください。
概要)
ハイブリダイゼーション前後のサンプルをそれぞれの同量ずつテンプレートとして分取し、リアルタイムPCRを行います。
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Ct値(Cp値)の差から、コントロールlociのエンリッチメント倍率を算出します。
↓
十分にエンリッチされているキャプチャー済みサンプルは、emPCR や Cluster PCRなどのシークエンシングプロセスの増幅工程に進めます。

Illumina 社製シークエンサー、Life technology 社製シークエンサー、454 社製シークエンサーのいずれも使用可能ですが、ライブラリを調製する前に使用するシークエンサーを決定し、各シークエンサーに対応したプロトコールでエンリッチメントの実験を行ってください。
近年のシークエンサーのスペックの向上に加え、解析コストを低げたいというニーズから、マルチプレックスキャプチャー法が開発されています。
▲マルチプレックスキャプチャー法 模式図

シークエンシング結果(シークエンシングリード)は、リファレンスゲノム配列に対してマッピングを行います。リファレンスゲノム配列の特定の塩基に対するシークエンスリードの数がカバレッジ ( read depth, 冗長度 ) です。シークエンシング規模を大きくするとカバレッジは大きくなります。
▲カバレッジ模式図
▲マッピング結果例
NimbleGen シークエンスキャプチャーアレイには、385Kフォーマットと2.1Mフォーマットの2種類がございます。
解析対象の生物種(ヒト、またはヒト以外)とターゲットのサイズによって製品をご選択ください。
1. カスタム領域の指定: リファレンスデータベースサイト名と、染色体番号・開始位置・終了位置の情報を記載したタブ区切り形式ファイルを作成してください。公共のデータベースサイトに無いデータを参照する場合には、リファレンスシークエンスをお送りください。未編集のシークエンス配列を参照する場合には、MultiFASTA形式などで保存したデータをお送りください。総塩基サイズが各製品の仕様に収まるようにご選択ください。
(例; UCSC (http://genome.ucsc.edu/) HG19, chr1: 2000-100000, chr1: 100500-200000 ・・・・)
参考資料:
・ Sequence Capture Custom Designs: Guide to Submitting Your Target Sequence (E)
・ シークエンスキャプチャー新規カスタムデザイン ターゲット領域抽出ガイド (J)

▲カスタム領域指定ファイル記入例
2. カスタム領域情報の送付: 1で作成したファイル等を tokyo.arraygroup@roche.com へ送信してください。
3. 代理店様への注文: ご注文を代理店さまへお伝えください。
4. 代理店さまからの弊社への注文
5. カスタムデザインの設計: ご注文受領後、カスタムデザインの設計を行います(おおよそ2週間ほどお時間がかかります。ヒト以外の生物種でのデザインにはこれよりお時間頂く場合がございますので予めご了承ください)。
6. カスタムデザイン結果内容の確認: Roche NimbleGenで設計されたデザインをご連絡差し上げます。内容をご確認ください。
7. カスタムデザインの承認: 提案させていただいたデザインで問題ない場合にはその旨を弊社までご連絡ください。デザインに微調整が必要な場合にはその変更内容をご連絡ください。
8. 製品の製造・お届け: カスタムデザインのご了承の連絡を頂いてから製品の製造を行います(おおよそ4週間~8週間ほどお時間がかかります)。
1. デザイン名の確認: 以前にご注文いただいた際に製品に添付されていたCDに記載のデザイン名とOID番号をご確認ください。

▲デザイン名とOID番号の確認方法例
2. 代理店様への注文: ご注文を代理店さまへお伝えください。その際、デザイン名とOID番号を必ずお伝えください。
3. 代理店さまからの弊社への注文: 代理店さまは弊社へのご注文書の備考欄にデザイン名とOID番号を記入してご連絡ください。
4. 製品の製造・お届け: 製品の製造を行います(おおよそ4週間~8週間ほどお時間がかかります)。
NimbleGen Human Exome 2.1MアレイはHG18を元にヒトの~180,000個のエクソン(アノテーション付きの全てのヒトエクソン)と、~550miRNAをターゲットとして最終的に34Mbがカバーされるよう設計されています設計された非カスタムアレイです(CCDS(Jun 2008)、miRBase(v11 Apr 2008))。SeqCap EZ Human Exome Library v1.0と同等のプローブがアレイ上に合成されています。
ターゲット領域をご確認いただくには、こちらのリンク先をご参照ください。
2010年7月より弊社でのシークエンスキャプチャー受託サービスを中止させていただきました。 なお、北海道システム・サイエンス株式会社様にてシークエンスキャプチャー受託サービスをお取り扱いしております。詳細につきましては北海道システム・サイエンス株式会社様へお問合せください。
表2 チタニウム最適化385Kアレイを用いて、250kbの連続領域のデザインと、1Mbの連続領域のデザインの2種のデザインでリシークエンスの正確性を評価しました。ヒトHapMap DNAサンプル(SNPs既知)を用いて外部の評価機関で独立して4回行い、デザインごとに別の評価機関で実験を行っています。シークエンスはGS XLR70キットを用いてGS FLXシステムで実施しました。ピコタイタープレートをガスケットにより8分割し、250kbをターゲットとしたアレイでの実験ではそのうちの1領域を使用し(1/8 PTP)、1Mbをターゲットとしたアレイでの実験ではそのうちの2領域を使用しました(2/8 PTP ≒ 1/4 PTP)。データはGS Reference Mapperソフトウェアで解析し、既知のHapMap SNPs塩基との一致率を確認しています。 |
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当社のカタログに掲載する製品は、ライフサイエンス分野の研究のみを目的としています。特に明記のない限り、診断用途目的には使用できません。カスタムバイオテック製品は、特に明記のない限り工業原料用のみを目的としています。
本ウェブサイトでは、幅広い利用者を対象とした製品情報を掲載しています。お住まいの国では利用できない製品、もしくは認可を受けていない製品の詳細情報が掲載されている場合もあります。それぞれの居住国における正当な法的手続や規制、登録、慣習法を満たしていない可能性のある情報の閲覧に関しては、当社は一切の責任を負いません。
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