DNA のメチル化は、遺伝子発現、遺伝的刷り込み、X 染色体不活性化、染色体安定性の調節において極めて重大な役割を担うエピジェネティックの機序です。DNA メチレーションと成長、細胞分化、疾病との関連性に関心がある研究者は、様々な方法を使用してメチル化されたDNA 領域をマッピングしていますが、メチル化DNA 免疫沈降とマイクロアレイ解析を組み合わせたメチレーションアレイ解析は強力な解析方法のひとつです。この解析方法では、正常サンプル・腫瘍サンプルなどのサンプル間でのメチル化DNA 領域を同定し比較することができます。
1. サンプルの断片化:
ゲノムDNA を低分子に断片化します。
2. DNA 変性:
断片化DNA 溶液を加熱して一本鎖にし、2 つのプールに分けます。
3a. 免疫沈降:
リファレンス(インプット)サンプルとして一定量を取り分けておき、残りのサンプルを5- メチルシチジン抗体で免疫沈降します。
3b. 濃縮:
抗体複合体をアフィニティにより濃縮し、非結合断片を洗い流します。
4. 増幅:
免疫沈降により濃縮されたDNA 断片(IP)と分取しておいたインプットサンプルを増幅・精製します。
5. 標識:
IP およびインプットサンプルを、それぞれCy5、Cy3 で標識します。
6. ハイブリダイゼーション:
標識IP およびインプットサンプルをそれぞれ適当量プールし、変性後にNimbleGen DNA メチレーションアレイに競合ハイブリダイゼーションさせます。
7. アレイの洗浄・乾燥:
ハイブリダイゼーション後のアレイは、NimbleGen ウォッシュバッファーキットを使用して洗浄し、NimbleGen マイクロアレイドライヤーを使用して乾燥させます。
8. アレイのスキャニング:
洗浄・乾燥後のアレイは、NimbleGen MS200 マイクロアレイスキャナーを使用して、635 nm (Cy5 チャネル)および 532nm (Cy3 チャネル)でスキャンします。
9. データ解析:
NimbleScan ソフトウェアを使用してデータを抽出します。IP 対インプット比を算出し、その比率データから判定されたピークは遺伝子の転写開始点と共にゲノム上にマップされます。
▲図1 メチレーションアレイ解析実験手順
NimbleGen の DNAメチレーションアレイ解析用デザインでは、50-75mer のDNAプローブを平均 100bp (標準設定)に配置したタイリングアレイを使用します。
DNAメチレーションアレイ解析で使用するアレイデザインは大きく分けて 3 つの種類があります; 全ゲノムタイリングアレイ、プロモーターアレイ、カスタム(ターゲット限定)アレイ。それぞれの特徴は下記のとおりです。
○ 全ゲノムタイリングアレイ :
領域等を限定せずに全ゲノムに対してプローブを設計しています。1x2.1M アレイ 10 枚のセットと、4 枚のセットの 2 つの種類があります。4 枚セットはコストを抑えて全ゲノムが解析できるように設計した ECONOMY セットアレイで、10 枚セットと比較して平均プローブ間隔が約 2 倍の 205~255bp となっています。
▲図2-1 ヒト DNAメチレーションアレイ解析用全ゲノムタイリングアレイ プローブ設計模式図
○ プロモーターアレイ :
コストを抑えて高解像度のデータを得るために、各遺伝子のプロモーター領域にプローブを設計しています。
・ 網羅的な解析をしたい場合にオススメ! 「デラックスプロモーターアレイ」: プロモーター領域に加え、CpG アイランド領域、miRNA プロモーター領域へもプローブを配置しています。プロモーター領域として全遺伝子の転写開始点の前後 11kb に渡ってプローブを設計していますので広範囲なデータを得ることができます。1x2.1M アレイフォーマットのアレイデザインですので、1 サンプルの解析に 1 アレイスライドが必要です。
・ サンプル数が多い場合にオススメ! 「CpG プラス RefSeq プロモーターアレイ」: プロモーター領域に加え、CpG アイランド領域にプローブを配置しています。デラックスプロモーターアレイと異なり、miRNA プロモーター領域にはプローブは配置されていません。また、プロモーター領域として全遺伝子の転写開始点付近を対象としていますが、プローブ設計範囲は各転写開始点の前後約 3kb です。3x720K アレイフォーマットのデザインですので、1 アレイスライドで 3 サンプルの解析が可能です。
・ サンプル数が少なく、コストを抑えた解析をしたい場合には・・・ その他のプロモーターアレイ: プロモーター領域をどのデータベースから取得しているかで複数のアレイデザインをご用意しています。1x385K アレイフォーマットのアレイデザインですので、解析コストを抑えることができますが、プローブ設計範囲が狭い場合や、対象遺伝子が限定的である場合がありますので、デザインの詳細をご確認の上でご選択ください。
▲図2-2 ヒト DNAメチレーションアレイ解析用プロモーターアレイ プローブ設計模式図
○ カスタムアレイ(ターゲット限定アレイ) :
米国の ENCODE 計画の解析結果との比較を行うためなどのアレイ、Non-Coding RNA 解析用アレイ、HOX 遺伝子解析用アレイなどがカタログアレイとして設計されています。また、ご自身の研究対象に合わせたターゲット限定アレイをカスタムアレイとして設計することも可能です。カスタムアレイの設計は、設計コンセプトを添えて Roche NimbleGen にご依頼ください。
お客様の研究のご予定、ご予算、研究対象に合わせて、受託サービスをご利用いただくことも、マイクロアレイをご購入いただき実験していただくこともどちらも可能です。
■ 受託サービス :
カタログアレイをご指定いただくか、カスタムアレイの設計をご依頼いただき、ゲノムサンプルを送付いただきますと、メチレーションアレイ解析データを納品いたします。
[アレイデザイン情報、蛍光シグナル値の生データ、テストサンプル対リファレンスサンプルシグナル比から解析したゲノムビューワー対応メチレーションアレイ解析結果ファイル、メチレーションアレイ解析結果概要(エクセルファイル)、ゲノムビューワー対応アノテーションファイル]

▲図3-1 メチレーションアレイ解析受託サービスワークフロー
■ アレイ販売 :
カタログアレイをご指定いただくか、カスタムアレイの設計をご依頼いただき、ご自身で実験を実施してください。

▲図3-2 メチレーションアレイ販売ワークフロー
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▲図4 ヒトDNAメチレーション2.1Mアレイを使用した解析例
OT(卵巣奇形腫細胞)と、CHM(胞状奇胎細胞)のメチル化領域を3種類の異なるヒトメチレーション解析用アレイ(黒色下線:プローブ設計領域)で調べました。それぞれのアレイ解析での結果は、IPでのエンリッチメントの有意性を示すP値で表示しています(青:OT、緑:CHM)。 |
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