CGHアレイ解析は、タイリングプローブへのテストゲノムとリファレンスゲノムのハイブリダイゼーションを比較することにより、ゲノムDNAの欠失・増幅領域を網羅的に調べる方法です。1回の実験(1枚のアレイ)でゲノム全体を網羅することもできますし、密にプローブを設計することで微小な増幅・欠失を検出することもできます。
~~ゲノムコピー数変化(CNV)~~
ヒトの個体差を決定する要因としてSNPに代表される個人間のゲノム塩基配列の違いに注目した研究が行なわれてきた。一方でゲノムコピー数の個人差としてはVNTRやマイクロサテライトなどが知られていたものの、これらは1kb以下の小さな違いであり、遺伝子の数の違いには至らないことから、ヒトの1つの細胞には父親由来と母親由来の遺伝子が1コピーずつ、計2コピーあるというのが定説であり個人差という観点からは注目されてはいなかった。しかし近年、主にアレイCGHを用いた全ゲノムコピー数解析の結果、正常な形質を持つヒトのゲノム中にも数kbから数Mbに及ぶゲノムコピー数の個人差(Copy Number Variation: CNV)があることがわかってきた。 (中略) 現在ではヒトCNVは公共データベース(Database of Genomic Variations, http://projests.tcag.ca/variation/)上で公開されており、ヒト遺伝子の約1割がCNV中に含まれ、それらの中には様々な疾患や薬剤感受性に関連する遺伝子、あるいは免疫機能などに関わる遺伝子などが含まれており、それらが遺伝子の発現量の差を介して、生活習慣病や自己免疫疾患への疾患羅病性を含むヒトの形質の個人差に広く関与する可能性が示唆される。
「アレイCGH診断活用ガイドブック 知っておきたい染色体微細構造異常症」
(稲澤譲治ら 編、 株式会社 医薬ジャーナル社)より抜粋(一部改変)
1. サンプルの調製:
試験サンプル・リファレンスサンプルから抽出したゲノムDNA(gDNA)を標準的な分子生物学的手法で精製します。
2. 標識:
テストgDNA・リファレンスgDNA を、NimbleGen デュアルカラーDNA ラベリングキットを使用し、それぞれ、Cy3 とCy5 で標識します。
3. ハイブリダイゼーション:
一定量のテストgDNA・リファレンスgDNA に由来するそれぞれの標識DNA を混合し、NimbleGen アレイに競合ハイブリダイゼーションします。ハイブリダイゼーションにはNimbleGen ハイブリダイゼーションシステムを使用します。
4. アレイの洗浄・乾燥:
ハイブリダイゼーション後のアレイは、NimbleGen ウォッシュバッファーキットを使用して洗浄し、NimbleGen マイクロアレイドライヤーを用いて乾燥させます。
5. アレイのスキャニング:
洗浄・乾燥後のアレイは、NimbleGen MS200 マイクロアレイスキャナーを使用して、532 nm(Cy3 チャネル)および635 nm(Cy5 チャネル)でスキャンします。
6. データ解析:
データはNimbleScan ソフトウェアを使用して抽出します。正規化およびlog2 比の計算(Cy3 / Cy5)後、Roche NimbleGenが開発し、NimbleGen 高密度アレイのために最適化したsegMNT アルゴリズムを使用して、コピー数の増減を同定します。
さらに、DEVA ソフトウェアの利用で画像からの数値化~セグメント解析を自動化することができます。それらのデータはDEVA ソフトウェア上でそのまま視覚化できます。
▲図1 CGHアレイ解析実験手順
CGHアレイ解析では、ゲノム領域毎に偏りのないデータを得るために一定の間隔にDNAプローブを設計したタイリングアレイを使用します。塩基配列によりプローブを設計できない場合がございますので、正確に一定の間隔にはなりません。一つのプローブの5'末端位置から次のプローブの5'末端までの平均の長さを平均プローブ間隔(またはMedian値で算出します)と呼んでいます。検出可能なCNVの長さの目安は、プローブ間隔の約5~10倍です。
※ ► CGHアレイ解析 製品番号・価格・デザイン対応表_v120501(PDF)
○ 全ゲノムCGHアレイ : 領域等を限定せずに全ゲノムに対してプローブを設計しています。全ゲノムを1枚のアレイで解析するように設計しているのでアレイフォーマットによってデータの解像度が異なります。※ 染色体別に解析する ヒト染色体特異的CGHアレイ もヒトサンプルの解析の場合にはご利用いただけます。
▲図2-1 ヒト全ゲノムCGH解析用カタログアレイ模式図
○ フォーカスアレイ : 設定した領域に対して高い密度でプローブを設計することでその領域内での小さな変異をも検出できるようにしたものです。一方で、設定した領域以外のゲノム上にもある程度の間隔でプローブを配置する事で、バックボーンデータが得られます。
カタログアレイとしては、ヒトエクソンフォーカスアレイ ( ヒトエクソン領域内はプローブを必ず設計)、ヒトCNVアレイ (ヒトCNV領域に集中的にプローブを配置)、Cytogenetic アレイ (ヒト疾患関連領域などに重点的にプローブを設計)を利用することができます。
▲図2-2 ヒトフォーカスアレイ模式図; エクソンフォーカスアレイ
○ カスタムアレイ : 全ゲノムアレイなどで特定した領域のみに対して高密度にプローブを配置したアレイをマルチプレックスアレイで設計することで、解像度の高い解析をハイスループットかつ高コストパフォーマンスで実施することができます。また、カタログアレイ以外の生物種などあらゆるカスタムニーズにお応えします。
▲図2-3 カスタムアレイ模式図; ハイスループット解析用アレイ模式図
2011年春にHD4プラットフォームのマイクロアレイが新登場しました。NimbleGenのマイクロアレイは、1枚のスライドガラス上に合成できるプローブの種類(フィーチャーの数)によって、385Kプラットフォーム、HD2プラットフォーム、HD4プラットフォームと進化し続けています。
▲図3 NimbleGenマイクロアレイのプラットフォームとアレイフォーマット模式図
○ 小さな変異を見逃したくない! ブレイクポイントをなるべく正確に特定したい!
プローブ間隔を狭くするほど、細かい変異を見逃しにくくなります。NimbleGenの1x4.2Mアレイでは、1枚のマイクロアレイスライド上に420万種類ものプローブを合成できます。例えばヒトカタログアレイを使用すると、全ゲノムにわたり、約300bpに1本ずつのプローブが設計されておりますので、検出できる最少のCNVサイズは約 1.5 kb を達成!セグメントは 300 bp 幅で算出されるので、ブレイクポイントの特定にも優れています。
○ 効率よく低コストで高解像度の解析をしたい!
調べたい領域が特定されている場合や、全ゲノム解析で興味深い領域が特定されると、その領域について多数の検体(サンプル)のデータを取得する必要が発生します。こうした場合には12x135Kアレイなどのマルチプレックスアレイでのカスタムアレイの設計をご依頼ください。NimbleGenのマルチプレックスアレイは、ハイスループットでの解析を可能にしながらそれぞれのサブアレイで利用できるプローブ数も多いところに特徴があります。例えば 「100 bp に1本ずつプローブを配置する」というような超高密度アレイを設計してた場合でも13.5Mbpのゲノム領域を調べることができます(21番染色体の大きさのおおよそ1/3に相当するサイズです!)。この例の場合なら、最少のCNV検出サイズは約 500 bp と、高解像度なデータが得られます!!
受託サービスをご利用いただくか、マイクロアレイをご購入いただきご自身で実験してください。
■ ご自身で実験

▲図3-1 CGHアレイ販売ワークフロー
■ 受託サービス
カタログアレイをご指定いただくか、カスタムアレイの設計をご依頼いただき、ゲノムサンプルを送付いただきますと、CGHアレイ解析データを納品いたします。
[アレイデザイン情報、数値データ(蛍光シグナル値の生データ、テストサンプル対リファレンスサンプルシグナル比から解析したゲノムビューワー対応CGHアレイ解析結果ファイル)、CGHアレイ解析結果概略図(PDF)、CGHアレイ解析結果概要(テキストファイル)、ゲノムビューワー対応アノテーションファイル]

▲図3-1 CGHアレイ解析受託サービスワークフロー
CGHアレイの解析はDEVAソフトウェアの利用でより便利になりました。DEVAソフトウェアは、自動画像インポート、自動フィーチャーエクストラクション、自動一次データ解析、視覚化機能を備えた解析ソフトウェアです。様々な自動化機能を利用することで、ハンズオン時間を短縮し、快適な解析が可能です。
特にCGHデータ解析ではDEVAソフトウェアに新たに追加された下記の機能を利用することで、より実験結果の解釈が容易になりました。
1. コンセンサスセグメントプロット作成機能 (共通変異領域の抽出)
2. アノテーションマッピング機能 (近傍にコードされる遺伝子の検索)
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図4は、ヒトゲノム配列の遺伝子領域にのみDNAプローブを設計した遺伝子領域にのみDNAプローブを設定計した変則的なヒト全ゲノムCGHアレイを用いた解析例です。1遺伝子あたり26個のプローブが設計できました。ヒト正常ゲノムDNAを標準ゲノム、ヒト膵臓がん細胞株のゲノムを試験ゲノムとして解析を行い、染色体の番号・染色体上の位置を横軸に遺伝子あたりのシグナル強度比をlog2比でプロットしています(log2比1は2倍、log2比0は1倍、log2比-1は1/2倍です)。上図中横軸の数字は染色体の番号を示しています。下図は19番染色体データの拡大図で、丸を付した領域でゲノムDNAの増幅が確認されたことを示しています。 |
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ヒト19番染色体のうち、全ゲノムCGHアレイ解析でDNAの変化が検出されなかった領域を詳細に解析するために、50merのDNAプローブを130塩基間隔でタイリングして高密度ゲノムCGHアレイを作製しました。プローブの間隔を狭くすることでより微小な塩基配列の変化が検出できることを示しています。 |
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2種類のヒト胃がんサンプルに対する弊社のCGHアレイとBACアレイの比較結果を上記に示します。弊社のCGHアレイはすでに確立されているBACアレイの結果を良く再現しつつ、網羅的、かつ分解能の高い結果を得ることができます。 |
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ヒトリファレンスゲノムと、バーキットリンパ腫細胞から抽出したゲノムDNAをそれぞれラベル化し、Human CGH 2.1M Whole-Genome Tiling v2.0D arrayにハイブリダイゼーションを行いました。Cy3(バーキットリンパ腫)/Cy5(リファレンスサンプル)比データからセグメント解析(コピー数変異候補箇所のスクリーニング)を行っています。上図では全染色体を表示していますが、下図は6番染色体上に検出されたコピー数増幅領域を拡大しています。 |
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口蓋心臓顔面症候群の22番染色体上の欠失(~4Mb)を、2.1M、3x720K、12x135Kの3種類のヒト全ゲノムタイリングアレイで解析しました。12x135Kでは一つのプローブのみが赤矢印で示した欠失箇所を検出していますが、3x720Kや2.1Mでは多くのプローブで欠失を検出しており、より密にプローブをタイリングしたアレイでの検出力が優れていることを示しています。 |
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ヒト全ゲノムタイリングアレイで精神遅延患者間の比較を行いました。サンプル4番と5番では、アンジェルマン症候群/プラダー・ウィリー症候群領域(15番染色体)の欠失(黒矢印)が、推定上normal CNVs(白矢印)の隣接した位置に検出されました。サンプル1番~3番にはこの領域の欠失は検出されず、これ以外の領域に増幅/欠失が検出されていました(data not shown)。 |
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