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Martje Tonjes1, Jenny Schlesinger1, Markus Schuler1, 2, Ilona Dunkel1, Jorn Bethune1, 3, and Silke R. Sperling1*1Cardiovascular Genetics, Department of Vertebrate Genomics, Max Planck Institute for Molecular Genetics, Berlin, Germany 2Department of Computational Molecular Biology, Max Planck Institute for Molecular Genetics, Berlin, Germany 3Department of Mathematics and Computer Science, Free University Berlin, Germany
*Corresponding author: sperling@molgen.mpg.de
先天性心奇形は、ヒトで最もよくみられる出生時欠損ですが、その基礎にある発症機序はほとんど明らかになっていません。連鎖解析および候補遺伝子ア プローチを用いて、先天性心欠損の原因となる複数の遺伝子変異(CITED2、GATA4、NKX2-5)が同定されました[1-3]。しかし、心奇形の ほとん どは、発現度と浸透度がさまざまであり、多因子性・多重遺伝子性が基礎にあることが示されています。このことは、欠損の発現において、転写因子の制御機能 が重要な役割を果たしていることを示唆しています。心発生と疾患の分子経路をよりよく理解するため、我々は、心奇形での制御が解除されている包括的な遺伝 子ネットワークについて検討しました。
我々はこれまでに、定量リアルタイムPCR(384-wellフォーマット)により、さまざまな心奇形を有する患者由来の心臓サンプル190個で、42遺 伝子の遺伝子発現プロファイル異常の評価を行いました[4]。その結果、制御の相互関係と、興味深い候補遺伝子を含む疾患特異的なmolecular portraitsを同定できました。認められた相互作用のいくつかは、クロマチン免疫沈降法およびRNA干渉により確認しました(未発表データ)。得ら れたネットワークを拡張するため、我々はさらに候補遺伝子を250個選抜し、これらの遺伝子の発現レベルを、先天性心疾患患者および健常者由来の心組織サ ンプル93個を用いて評価しました。
ハイスループットmRNAプロファイリングには、新しいLightCycler®1536リアルタイムPCRシステムを使用しました。この新しいシステムの性能、精度、スピードを評価するため、過去の解析(競合システムを使用)で測定 した全ての遺伝子も、比較の対象としました。
結果の再現性は、双方のシステムでほぼ同じでしたが、新しいLightCycler®1536 Instrumentでは、短時間でより高いサンプルスループットが得られ、試薬とサンプルの量を低減できました。
心臓サンプルは全て、臨床試験審査委員会の承認を受け、心臓手術時に患者または患者の両親からインフォームドコンセントを得たうえで、German Heart Instituteから入手しました。生検標本は、さまざまな心奇形を有する患者の右心室と正常なヒト心臓から採取しました。全てのサンプルは切除後、直 接、液体窒素中で急速に凍結させ、-80℃で保存しました。
使用説明書に従い、TRIzolを用いて心組織サンプル93個からトータルRNAを抽出しました。トータルRNA5µgを、AMV逆転写酵素とランダ ムヘキサマープライマーを用いて逆転写し、1:40に希釈しました(1.25ng/µL)。
心臓病の遺伝子300個の包括的なセットを選抜し、Universal Probe Library、およびwww.universalprobelibrary.comにて無料でアクセスできるProbeFinderソフトウエアを用い て、プライマーをデザインしました。プライマーは、多数の転写産物のバリアントを有する遺伝子の共通領域を認識するようデザ インし、TIB MOLBIOLで合成しました。qPCR効率を評価するため、標準HEK293 cDNAの4倍希釈系列を、LightCycler®480 リアルタイムPCR Instrumentの384-wellフォーマットを用いて、テストアッセイで測定しました(総反応液量10µL:テンプレート2µLと、 1×RealTime ready DNA Probes Master、プライマー300nM、プローブ400nMを含むマスターミックス8µL)。増幅曲線の質は、プライマーごとのPCR効率 (1.8~2.2)および終点の蛍光値(EPF>5)を基に評価しました。図1に例を示します。
LightCycler®1536 Multiwell PlateのPCRセットアップには、Innovadyne Nanodrop ExpressピペッティングロボットとAgilent PlateLoc Thermal Microplate Sealerを使用しました。まず、HEK293 cDNAの連続的な1:2希釈(図2)により、cDNAの適切な量と容量を決定しました。発現レベルの高い遺伝子、および低い遺伝子(HPRT およびPITX2)の増幅曲線を比較し、反応1回あたり1ngのcDNAを使用することにしました。
次に、事前にスクリーニングした250個のアッセイを選択し、サンプル93個とコントロール3個(HEK293 cDNAとテンプレートなしのコントロールを含む) の発現解析を、LightCycler®1536 Systemを用いて3重測定にて行いました。プログラムは以下の条件で行いました。初期熱変性:95℃で1分、増幅(45サイクル):95℃で1秒(温 度変化率:4.8℃/秒)、60℃で30秒(温度変化率:2.5℃/秒)、冷却:40℃で30秒(温度変化率:2.5℃/秒)、ソフトウエア設 定:Mono Color Hydrolysis/UPL Probes、ピペッティングコントロールモード:マスターコントロール。qPCRの反応溶液組成は、サンプル0.8µLと、1×RealTime ready DNA Probes Master、プライマー300nM、プローブ400nMを含むマスターミックス1.2µLでした。ハウスキーピング遺伝子HPRT を用いて、遺伝子の発現量を補正しました。全部で50枚のLightCycler®1536 Multiwell Platesを、1プレートあたり5種類の異なるアッセイで解析しました。
我々の研究の目的は、遺伝子発現解析用のハ イスループットシステムとしての、新しいLightCycler®1536 Systemの性能とスピードを評価することでした。我々の心臓病の制御ネットワークを拡張するため、qPCRアッセイ300個をデザインし、 LightCycler®480 Instrumentで事前にスクリーニングしまし た。このうち17%は最初のテストランで失敗したため、発現アッセイから除外しました。反応1回に必要なcDNAの最低量を決定するため、HEK293 cDNAの段階希釈において発現レベルの高い遺伝子と発現レベルの低い遺伝子の増幅を検討しました(図2)。測定結果は、理論上の希釈倍率である“2” と一致していました。1回の反応に0.5ngのcDNAを使用したときも、直線的な増幅が認められ、多重測定の結果はほぼ同一でした。しかし、心臓病の遺 伝子の多くは発現レベルが低いことが知られており、クロッシングポイント(Cp)値が35を越えないようにするため、発現解析には1ngのcDNA を含む0.8µl溶液を用いました。多重測定の類似度は、テンプレートの濃度に依存していました。そのため、サンプル容量はわれわれのアプリケーションで 予測されていた量よりも多くなりました。
次に我々は、先天性心疾患患者および健常者の右心室の心臓サンプル93個の遺伝子250個の遺伝子発現解析を行いました。合計50枚の LightCycler®1536 Multiwell Plateを、各プレートあたり5種類のアッセイを用いて、7日間で解析しました(図3)。失敗したのは、心臓サンプルの大部分において、実施したアッセ イのわずか7.5%でした。HEK293 cDNAコントロールから、アッセイが機能したことは明らかであり、このほとんどが、転写物の発現量が低かったことによるものでした。
ワークフローの全てのステップ(ピペッティング、シーリング、定量を含む)において、LightCycler®1536 Systemが、便利で、迅速かつ強力なツールであることが証明されました。このシステムを用いれば、特異的で、感受性が高く、比較可能なアッセイの実施 が可能です。さらに、LightCycler®1536 ソフトウエアは非常に使いやすく、予備的な結果を迅速に概観でき、簡単なデータエクスポートオプションがあります。非常に便利な特徴は、図4に示した heatmapツールです。このツールは、5回実施したアッセイの正しい分布、三重測定の類似度、2つの水コントロールにコンタミネーションがないことを 直接示します。
結果として得られた発現プロファイルは、競合システム(384-wellフォーマット)で得られたものと非常に類似していました。LightCycler®1536 Systemで得られた標準化した発現比率と、競合システムで得られたデータを比較したところ、図5 a に示すとおり、良好な相関が明らかになりました (Pearsonの相関係数r=0.725)。合計で、ヒト心臓サンプル71個で測定した40個の遺伝子を解析したところ、興味深い候補遺伝子には、複雑 な疾患であるファロー四徴症[4]を有する集団で、特異的に制御が解除されていることが明らかになったサブグループが含まれました(図5b)。発現レベル は2つのシステムでほぼ同一であることが明らかになりました。このことは、得られたLightCycler® 1536ハイスルー プットデータの信頼性が高く、我々の心臓病の制御ネットワークを拡張させる可能性があることを示しています。
本研究では、LightCycler®1536リアルタイムPCRシステムが、ハイスループット遺伝子発現解析に非常に適しており、マイクロアレイの便利な代替品となることが明らかになりまし た。新しいLightCycler®1536 Instrumentは、スループットが高く(1536データポイント/PCR)、迅速なPCRプロトコー ルと組み合わせているため、過去に使用した競合システムよりも短時間で発現データを取得でき、さらに、試薬とサンプルの必要量を有意に減量できます。
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| 図1:デザインしたアッセイの評価
標準HEK293 cDNAの連続希釈(1:4、1:16、1:64、1:265、テンプレートなしのコントロール)を用いたテストアッセイの増幅曲線を、 LightCycler® 480 Instrumentを用いて作成しました。(a)は良好なアッセイ、(b)は終点の蛍光値が低すぎて失敗したアッセイです(y軸参照) |
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| 図2:発現レベルの異なる遺伝子の増幅曲線の比較。
HEK293細胞のHPRT とPITX2 の発現レベルをLightCycler®1536InstrumentでcDNAの希釈系列(2ngは青、1ngは赤、0.5ngは緑、NTCは灰色)を 用いて測定しました。決定した希釈倍率は、理論上の希釈倍率である2と良く一致しました。測定は12重測定で行いました。 |
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| 図3:発現解析のタイムフレーム
ワークフローは、テストアッセイの調製と確認を含んでいます (UPL=Universal Probe Library) |
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| 図4:LightCycler®1536ソフトウエアのheatmapチャート
1枚のプレートにおける、テンプレートなしのコントロールサンプル(NTC)2個を含むcDNAサンプル96個を用いた5種類のアッセイのCp値を示しま した。サンプルのCp値は、青(Cpの最高値)から赤(Cpの最低値、凡例参照)までの連続的なスペクトルとして示しています。 |
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| 図5:LightCycler®1536 systemと競合リアルタイムPCRシステム(384-wellフォーマット)との遺伝子発現比率の比較
遺伝子発現比率はHPRTで補正し、健常者と比較しました。(a)遺伝子40個とサンプル71個のPearsonの相関係数を用いた ドットプロット(r=0.725)(b)ファロー四徴症の患者群の心臓に関連した転写物サブセットの比較 |
BIOCHEMICA2010 NUMBER1 (No118)
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