さまざまな培地でのLNCaP細胞増殖のリアルタイム解析

Markus Greiner1*, Birgit Kreutzer2, Gerhard Unteregger2, Bernd Wullich3, and Richard Zimmermann1
1Saarland University, Department of Medical Biochemistry and Molecular Biology, Homburg/Saar, Germany 2Saarland University Hospital, Department of Urology and Pediatric Urology, Homburg/Saar, Germany 3University Hospital of Erlangen, Department of Urology, Erlangen, Germany *Corresponding author: m.greiner@uks.eu

新しいリアルタイム法を用いて、さまざまな条件下で、前立腺がん由来細胞株LNCaPの細胞増殖を解析しました。この方 法により、細胞増殖に影響を与える物質を添加する最適なタイミングが決定でき、一過性の影響が見逃されにくくなります。また、フェノールレッドとウシ胎児 血清がLNCaP細胞増殖に与える影響を評価し、ホルモン刺激とビカルタミド(Casodex)投与の干渉についても評価しました。

イントロダクション

LNCaPはリンパ節転移由来の前立腺が ん細胞株でアンドロゲン感受性であるといわれています[1]。添加物が細胞増殖に及ぼす影響を検討するには、LNCaPを低ホルモンウシ胎児血清 (FBS)を含むフェノールレッド無添加の培地で培養する必要があります[2, 3]。その理由としてフェノールレッド含有培地で継代するとLNCaP細胞がアンドロゲン依存性増殖挙動を停止すること[4, 5]、そしてフェノールレッドが生理学的に異常な方法で細胞増殖を促進することが[3]複数の研究で示されているためです。細胞増殖をリアルタイムで解析 するため、我々はxCELLigenceシステムを使用しました。このシステムは、細胞培養用E-Plate 96の底面に敷いた微小金電極で、細胞増殖時の電気的インピーダンスを測定します[6]。これにより我々は、刺激物を添加しない場合と5α-ジヒドロテス トステロン(DHT)、またはLNCaP細胞に影響を与えることが知られているアンドロゲン受容体アンタゴニストであるビカルタミド(Casodex) [7]添加した場合の比較を行い、培地の成分がLNCaP細胞増殖に及ぼす影響を評価しました。

結果と考察

最初の実験では、1×104個/ウェル (96-ウェルMTP)に播種したLNCaP細胞の10%FBSを添加したRPMI(フェノールレッド含有)(=通常培地)における増殖と、10%低ホル モンFBSを添加したRPMI(フェノールレッドなし)(=低ホルモン培地)における増殖を比較しました。双方の培地で培養した細胞をDHT(50nM) またはビカルタミド(5µMまたは20µM)で処理しました。通常培地では、DHT存在下で、1.3倍の細胞増殖が認められましたが、ビカルタミド存在下 では細胞数が減少しました。またDHTは最初の8時間は細胞の付着を低下させませんでしたが、ビカルタミドは細胞の付着を低下させたことも明らかになりま した(図1aおよび1b)。低 ホルモン培地では、1×104個/ウェルの細胞の播種(96-ウェルMTP)8~21時間後に、刺激の効果が認められました。このとき、DHT刺激によ り、細胞増殖が2倍に増加しました(図1cおよび1d)。20µMビカルタミド添加後の細胞増殖の低下は、2種類の培地でほぼ同じでした(図1d)。 DHTとビカルタミドを同時に添加すると、未処理細胞に比べて増殖が低下し、DHTによる細胞増殖に対する刺激は、ビカルタミドを後で添加するとブロック されました(データ非掲載)。

次に、高濃度のDHT(100nM)を添加し、フェノールレッド不含有の通常のFBSを含むRPMI中でのLNCaPの増殖を解析しました。この実験 では、フェノールレッドの影響とFBSの影響を区別できました。DHTとビカルタミドが細胞増殖に及ぼす影響は、2×104個/ウェル(96-ウェル MTP)播種の24~48時間後に最大であることが明らかになりました。この時間範囲では、フェノールレッド不含有の通常のFBSを含む培地での細胞増殖 は、フェノールレッドを含まず低ホルモンFBSを含む培地での細胞増殖に比べて、刺激の受け方がはるかに弱く、フェノールレッドを含む増殖培地では刺激は 完全に無効となりました(図2a)。ビカルタミドの細胞増殖に対する阻害効果は、添加後42時間しか持続しないことも明らかになりました。低ビカルタミド 濃度での実験では、細胞をフェノールレッドと通常のFBSを含むRPMIで増殖させたときに、細胞増殖の低下が最大であり、最も用量依存的であることが明 らかになりました。フェノールレッドを添加しない場合、10µMビカルタミドを添加した時に細胞増殖の有意な低下が認められました。一方、フェノールレッ ドを含まず低ホルモンFBSを含む培地で増殖した細胞では、ビカルタミド5µMでも10µMでも細胞増殖の有意な低下は認められませんでした。(図 2b)。

要約

我々の結果は、アンドロゲン受容体刺激物質や遮断 物質の影響が、増殖培地の組成に大きく左右されることを示しています。低ホルモンFBSを含み、フェノールレッドを含まない培地を用いることを、強く推奨 します。一方、阻害作用は、通常のFBSを含む培地で簡単に解析できます。LNCaPの変異型のアンドロゲン受容体は、エストロゲン、プロゲストゲン、お よびいくつかの抗アンドロゲンで刺激されるため[8]、我々は、通常のFBSと低ホルモンFBSの刺激作用の違いは、プロゲステロン濃度の差(通常の FBS 0.29ng/mL、低ホルモンFBS 0.13ng/mL)やテストステロン濃度の差(通常のFBS 0.08ng/mL、低ホルモンFBS 0.03ng/mL)ではなく、エストラジオール濃度の差(通常のFBS 192pg/mL、低ホルモンFBS<12pg/mL)によって説明できるのではないかと考えています。我々の結果は、細胞増殖に対する阻害作用と刺激作 用をモニタリングする最適なタイミングが、細胞数に強く依存することを示しています。したがって、リアルタイム細胞解析は、これらの作用を検出するうえで 完璧なツールです。

謝辞

この研究は、Deutsche Krebshilfe and the Stiftung Europrofessionのグラントの支援を受けました。

リファレンス

  1. H oroszewicz JS et al. (1983) Cancer Res 43:1809-1818/li>
  2. Lee C et al. (1995) Endocrinology 136:796-803
  3. Lin MF et al. (2000) Cell Biol Int 24:681-689
  4. Langeler EG et al. (1993) Prostate 23:213-223
  5. Lin MF et al. (1993) Arch Biochem Biophys 300:384-390
  6. A bassi Y (2008) Biochemica 3:10-12
  7. Veldscholte J et al. (1992) Biochemistry 31:2393-2399
  8. Veldscholte J et al. (1992) J Steroid Biochem Mol Biol 41:665-F669

 

図1:LNCaP細胞増殖のモニタリング
本文に記載したとおり、1×104個/ウェルのLNCaP細胞を、50nMDHT、5µMビカルタミドまたは20µMビカルタミドの存在下で、E- Plate96の175µLの通常培地(a,b)または低ホルモン培地( c , d ) に播種しました。セルインデックス( a , c ) はxCELLigence RTCA SP Instrumentを用いた3回反復実験の平均値として測定しました。パネル(b)はさまざまな時間間隔で、(d)は8-21時間での培地の相違による 増殖曲線の傾きを示しています。RTCA 1.1ソフトウエアを用いて評価を行いました。
図2:フェノールレッドとFBSがLNCaP細胞増殖に及ぼす影響の解析
2×104個 /ウェルのLNCaP細胞を、175µLの10%FBSを添加したフェノールレッドを含むRPMI培地(実線)または10%FBSを添加したフェノール レッドを含まないRPMI培地(点線)または10%低ホルモンFBSを添加したフェノールレッドを含まないRPMI培地(破線と点線)で、E-Plate 96に播種しました。(a) は、50nM DHTまたは100nM DHT存在下と未処理細胞との比較、(b)は、5μMビカルタミドまた10µMビカルタミド存在下と未処理細胞との比較です。セルインデックスは xCELLigence RTCASP Instrumentを用いて3回反復測定した平均として算出しました。24時間の時点での評価とノーマライズは、RTCA 1.1ソフトウエアで行いました。

BIOCHEMICA2010 NUMBER1 (No118)

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