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Sandra Danner1, Anna E. Petschnik1, and Cordula Jany2
1Fraunhofer Research Institution for Marine Biotechnology (EMB), Luebeck, Germany 2Roche Applied Science, Germany
*Corresponding author: cordula.jany@roche.com
本研究では、ラット膵組織由来の初期前駆細胞の分離におけるLiberase TL Research Gradeの性能を解析しました。Liberase TL Research Gradeを用いて組織を酵素消化したところ、分離細胞が高収量で得られました。3種類の胚葉(外胚葉、内胚葉、中胚葉)と初期幹細胞のマーカーが検出さ れました。また、xCELLigenceシステムを用いて、分離した前駆細胞のインピーダンス曲線をリアルタイムで記録しました。
外分泌腺は、膵臓[1-3]、精巣[4, 5]、唾液腺[3, 6]、汗腺[7]で示されているように、非常に多彩な多能性成人幹細胞の供給源となる可能性が示されています。成人幹細胞の初代培養細胞は、持続的に自己 複製する能力があり、in vitroで3種類の胚葉の細胞に分化できます。Fraunhofer EMBは、さまざまな動物組織およびヒト生検標本由来の増殖細胞の分離の成功に適用できる、標準的な分離法を確立しました[8-10]。この技術を利用す れば、コラゲナーゼを用いた2段階のプロトコールで、組織標本を分散させることができます。腺由来の細胞集団は、培養皿に付着して増殖を開始します。in vitro増殖中、これらの腺由来幹細胞は、臓器や種によって、30回以上倍加します[3, 10, 11]。
分離細胞数とその自己複製能は、組織分散後の、生存可能で機能できる細胞の収量によって決まります。細胞収量は、組織分散のために最適な酵素を選び、 酵素処理時間と酵素濃度を変化させることで最適化できます。
Roche Applied ScienceのLiberase第二世代製品は、コラゲナーゼと中性プロテアーゼを組み合わせたものです。高度な発酵条件と最適な精製プロセスによる高 純度な製品であり、機能できる細胞をおだやかに分離できます。
本研究の目的は、ラット膵組織由来の初期前駆細胞の分離におけるLiberase TL(低いサーモライシン濃度)Research Gradeの性能を解析することでした。
ラット膵組織の酵素による分散
ラット膵臓から、 Fraunhofer EMBで確立した標準的な分散プロトコール[8]を用いて細胞を分離しました。このプロトコールは、Liberase TL Research Gradeを用いた1ステップの酵素インキュベーション法に適合させています。Liberase TL Research Gradeは、低濃度のサーモライシン(非クロストリジウム性中性プロテアーゼ)を含む、高度に精製されたコラゲナーゼIとIIの混合物です。
組織を機械的に小片にした後、さまざまな濃度のLiberase TL Research Grade(0.5Wunsch Units[WU]/mg、0.25WU/mg、0.125WU/mg)で37℃で25分間処理しました。開口部を徐々に狭くした(10mL、5mL、 2mLピペット)ガラスピペットで、吸い込みと吸い出しを行ってさらに分散させた後、懸濁液をナイロンメッシュでろ過し、遠心分離後、1回洗浄しました。 自動細胞計数装置を用いて、分離細胞数を計数しました。次に細胞を、25cm2フラスコ2本に播種しました。細胞増殖は、20%ウシ胎仔血清(FCS)を 添加したDMEM培地を用いて単層培養で行いました。
コンフルエントに達した直後、トリプシン処理を行って細胞を細胞培養皿の底から解離させ、付着増殖した細胞の総数を計数しました。
免疫細胞化学
2ウェルのチャンバースライド で培養した細胞を、PBSで洗浄し、1µg/mL DAPIを含むメタノール:アセトン(7:3)を用いて20℃で5分間固定し、PBSで3回洗浄しました。次に細胞に1.65%正常ヤギ血清を添加して、 室温で20分間インキュベートしました。非特異的結合を飽和させた後、細胞を、Nanog、Nucleostemin、GATA4、アルファ平滑筋アクチ ン、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)に対する一次抗体と共に、湿式チャンバー(humid chamber)内で、37℃で60分間インキュベートしました。PBSで3回洗浄した後、細胞をCy3標識抗マウスIgGおよびFITC標識抗ウサギ IgGと共に、湿式チャンバー内で37℃で60分間さらにインキュベートしまし た。細胞を再びPBSで3回洗浄した後、封入剤(mounting medium)で覆い、蛍光顕微鏡で観察しました。染色された細胞構造は全て、典型的な形態学的特性を示しました。このことは、抗体が特異的に結合したこ とを示しています。二次抗体のみを用いて行ったネガティブコントロールでは、非特異的で広汎的な、かすかな染色しか認められませんでした(データ非掲 載)。
リアルタイムインピーダンス曲線
xCELLigence システムを用いて、分離細胞のリアルタイムインピーダンス曲線を記録しました。4種類の細胞量(細胞390個~3,125個)を3重で96ウェルE- Plateに播種し、インピーダンスを15分ごとに5日間測定しました。バックグラウンド測定は、10%FCSを含む100µL DMEM培地を用いて行いました。
ラット膵組織の酵素による分散
まず、Liberase TL Research Gradeの最適濃度を、タイトレーション(titration)により決定しました。0.5WU/mgのLiberase TL Research Gradeを用いた酵素消化後に膵組織の完全な分散が認められ、分離細胞数が最高となりました(図1a)。0.25WU/mgと0.125WU/mgで は、酵素消化が部分的で組織の断片が残り、それに伴って細胞収量が低下しました(図1a)。
完全に分離された組織から得られた細胞は、培養皿の底に接着できませんでしたが、部分消化された組織からは安定した増殖細胞集団が得られました(図 1b)。これらの培養物は、膵臓幹細胞/前駆細胞と形態学的にほぼ同じでした。このように、in vitroで培養でき増殖できるのは 接着細胞のみであるため、適用するコラゲナーゼ濃度は、細胞分離の成功に大きな影響を及ぼします。Liberase TL Research Gradeの高い酵素活性は、分離細胞の生存能に有害な影響を与えると考えられます。その後の解析用に選抜された細胞集団は、コラゲナーゼ活性 0.25WU/mgで酵素消化したものであり、この濃度で、接着増殖細胞集団が得られる分離細胞の最高収量が認められました。
分離細胞の免疫細胞化学による特性決定
分離し た増殖細胞の分化を、幹細胞と分化細胞に関連したマーカータンパク質の免疫細胞化学的染色により解析しました。NanogやNucleosteminなど の幹細胞マーカーが検出されました。Nanogは、胚性幹細胞の多能性の維持に関与するユニークなホメオボックス転写因子であり[12]、推定上の GTPaseであるNucleosteminは、神経幹細胞と胚性幹細胞の核小体で高発現されています[13, 14]。さらに、内胚葉、中胚葉、外胚葉の細胞タイプのマーカーが検出されました。染色陽性は、原始的な内胚葉で特徴的に発現されている転写因子 GATA4[15]、中胚葉のマーカーであるアルファ平滑筋アクチン(α-SMA[16])、および神経外胚葉性細胞でみられる特徴的なフィラメントタン パク質であるグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)[17]について認められました(図2、左)。これ らのマーカーが検出されたことは、分離細胞集団に、幹細胞様の多系列の分化能を有する前駆細胞が存在する可能性があることを示唆しています。しかし、この 細胞集団の特徴についてさらに詳細な特性決定を行うには、この細胞集団に関する包括的な検討が必要です。
分離細胞の増殖挙動
xCELLigenceシステムを用いて、分離細胞の複雑な細胞挙動をリアルタイムでモニタリングしました。結果から、5日間にわたり、インピーダンスが 一定して増加したことが明らかになりました(図3)。この増加は、増殖マーカーKi67の免疫組織化学的染色で示された通り(データ非掲載)、細胞体の伸 長ではなく、細胞分裂に起因すると考えられます。光学顕微鏡で確認されたように、2種類の高い細胞密度で播種した細胞は、培養5日後にほぼコンフルエント に達しました。
我々は、最適(well-titrated)濃度の Liberase TL ResearchGradeを用いて、膵組織由来の幹細胞様特性を持つ増殖細胞集団の分離に成功しました。
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| 図1:Liberase TL Research Gradeの最適濃度の決定 生存可能細胞の分離数の比較(a)、および培養5日後の生存可能な増殖できる接着細胞数の比較(b)。示した結果は1回の実験だけで得られたものであり、 統計学的確証を必要とすることにご注意ください。 |
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| 図2:分離細胞の免疫細胞化学的解析 左:幹細胞(Nanog、 Nucleostemin)、内胚葉細胞(GATA4)、中胚葉細胞(α-SMA)、外胚葉細胞(GFAP)に特徴的なタンパク質が検出されました。 右:DAPIで細胞核を染色したコントロール |
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| 図3:Liberase TL Research Gradeを用いてラット膵組織から分離した分離細胞のインピーダンスのダイナミックモニタリング 得られた細胞を4種類の細胞密度で播種しました。インピーダンス曲線をxCELLigenceシステムを用いてリアルタイムで自動的に 記録しました。5日後は、インピーダンスの増加に加え、細胞数の増加が認められました。 |
BIOCHEMICA2010 NUMBER1 (No118)
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