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Claudia Fila (2009), Roche Applied Sciences, Cellular Analysis アプリケーションノート No. 3
本研究では、まず市販されている3種類のトランスフェクション試薬を用いてBax遺伝子をHeLa細胞にトランスフェク ションし、その後xCELLigenceシステムを用いて、生じた細胞死を定量し、その特性を明らかにしました。ここに示したワークフローを用いること で、様々なトランスフェクション試薬の効率と細胞毒性を評価し比較するだけでなく、タンパク質の過剰発現に応答したアポトーシスとネクローシスを判別する ことも可能でした。
アポトーシスは細胞死の主要な機構です。 Bcl-2結合Xタンパク質、すなわちBaxは、ミトコンドリアのアポトーシス経路において、外膜透過性(outer membrane permeabilization)を亢進させます。これは、アポトーシス細胞死過程において、不可逆となるポイントです。HeLa細胞で、アポトーシス 促進作用を有するBaxが一過性に過剰発現されると、アポトーシス経路が誘導されます。しかし、細胞へのBax導入に使用されているリポソーム型および非 リポソーム型のトランスフェクション試薬は、細胞毒性による副次効果を有意に示すことがあるため、結果を誤って解釈してしまう懸念があります。
本研究では、各種のin vivoおよびin vitroアッセイを利用したワークフローで、3種類 の市販のトランスフェクション試薬を使用しました。トランスフェクション効率はほぼ同じですが、FuGENE®HDトランスフェクション試薬を用いたときのみ、細胞毒性による副次効果が非常に低く、Bax誘導細胞死の特異的なモニタリングと検出が可能でした。
タンパク質発現およびトランスフェクション効率
タンパク質発現を評価し、トランスフェクション効率を決定するため、増強型緑色蛍光タンパク質(EGFP)のタグをつけた融合タンパク質としてBax を発現していている細胞を、EGFPのみをトランスフェクションした細胞(コントロール)と比較しました。pEGFPおよびpEGFP-BAXプラスミド を、トランスフェクション試薬としてFuGENE® HDか、他の2種類の市販の試薬(ここではTF1またはTF2とします)のいずれかを用いて、HeLa細胞に導入しました。タンパク質発現量は、全てのト ランスフェクション試薬でほぼ同じでした(データ非掲載)。トランスフェクション効率は適切であり、EGFPでは約80%、EGFP-baxでは 65~70%でした。タンパク質は細胞内で適切に局在しました(データ非掲載)。
リアルタイム細胞解析によるトランスフェクション依存性の細胞効果の解析
xCELLigenceシステムを用いて、標識を用いる必要性のない、インピーダンスに基づく細胞モニタリングを連続的に行いました。この方法で、細 胞の反応を非侵襲的にリアルタイムで捕らえることができました。E-Plate 96で、播種後26時間以内の増殖中のHeLa細胞に、pEGFPまたはpEGFP-BAXを、各レプリケートに対して直接トランスフェクションしまし た。細胞接着、増殖、およびトランスフェクションへの反応を、xCELLigenceシステムを用いて15分ごとに記録しました。トランスフェクション直 前の測定値に対するセルインデックス(CI)値を用いて標準化し、システムに含まれるRTCAソフトウエアを用いて、平均値を各時間に対してプロットしま した(図1)。
このようにして、3種類のトランスフェクション試薬によるpEGFPまたはpEGFP-BAXのトランスフェクション後の細胞挙動の変化を記録しました。 FuGENE®HDトランスフェクション試薬を用いてコントロールプラスミドpEGFPをトランスフェクションした細胞は、トラン スフェクション操作による影響をほとんど受けず、トランスフェクションしていないコントロール細胞と同じ速度で増殖しました。このことは、FuGENE®HDトランスフェクション試薬が、非特異的な副次効果を引き起こさないことを示唆しています。FuGENE®HDトランスフェク ション試薬を用いてpEGFP-BAXをトランスフェクションした細胞の増殖曲線は、トランスフェクションの6時間後に反応を示し、この反応は、EGFP をトランスフェクションしたコントロールとは明らかに異なっていました。このことは、アポトーシス促進性EFGP-bax融合タンパク質の過剰発現に成功 したことを示しています。
これとは対照的に、トランスフェクション試薬TF1およびTF2を用いてDNAコンストラクトをトランスフェクションしたところ、CI値はトランスフェク ションの時点と同じレベルで維持されました。コントロールベクターのみを有するトランスフェクション細胞でも、回復しませんでした。このことは、トランス フェクション手法そのものにより全般的な副次効果が生じたこと、そして、細胞死が主としてこれらのトランスフェクション試薬による高い細胞毒性に起因した ことを示唆しています。
細胞生存能の低下
細胞集団内の生存可能な細胞を定量し、トランスフェクション後の細胞死の程度を評価するため、WST-1アッセイを行いました。テトラゾリウム塩WST- 1をE-Plate 96の各ウェルに直接添加し、トランスフェクトした細胞と共に、細胞培養インキュベータ内で1.5時間インキュベートしました。代謝が活発な細胞では、 WST-1は分解されて色を示すホルマザンとなり、標準的な分光光度計で解析できます。トランスフェクション45時間後の結果は、xCELLigence システムによるリアルタイム細胞モニタリングの結果と相関していましたが、FuGENER HDトランスフェクション試薬でpEGFPをトランスフェクションした細胞は、生存能が中等度に低下したのみであったのに比べて、他の細胞サンプルは、ト ランスフェクションしていない細胞と比較して生存能が大きく低下しました(図2)。
細胞死タイプの評価:アポトーシスとネクローシスの区別
細胞死の分子機構を明らかにするため、すなわち、 アポトーシスとネクローシスを区別するために、トランスフェクションしたHeLa細胞のさらなる機能解析を行いました。
―細胞フリーの培養上清におけるLDH活性の検出(ネクローシス)
典型的なネクローシスの指標は、細胞培地への細胞質内分子の放出を伴う細胞溶解です。ネクローシスによる細胞死の程度を決定するため、細胞障害性検出キッ トPLUS(LDH)を用いました。このアッセイでは、通常、細胞質中に存在するの乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)が細胞培養上清 に放出された量を定量します。リアルタイム細胞解析実験終了時に、E-Plate 96から細胞フリー培養上清を回収し、LDHの解析を行いました。ポジティブコントロールと比較して、トランスフェクションしていないコントロール細胞の 培養上清は、ほとんどLDH活性を示しませんでした(図3)。FuGENE®HDトランスフェクション試薬でトランスフェクションを行った場合も同様でした。これとは対照的に、TF1またはTF2でトランスフェクションした細胞 は、培養上清のLDH活性が有意に上昇していました。このことは、これらの細胞が、Bax誘導性アポトーシスではなく、トランスフェクションに誘導された ネクローシスにより死滅したことを裏付けています。
アポトーシスによる細胞死をさらに解析するため、全てのサンプルを、細胞死検出ELISAPLUSキットおよびホモジニアス カスパーゼアッセイ,蛍光などの特異性の高い方法でスクリーニングしました。
―細胞質のヌクレオソームの定量(アポトーシス)
アポトーシスでは、様々なエンドヌクレアーゼが活性化され、クロマチンを分解し180bpのヌクレオソームサイズ、およびそれらの倍数の大きさのフラグメ ントが産生されます。細胞死検出ELISAPLUSキットは、アポトーシスの特徴である細胞質内の大量のヌクレオソームの存在を検 出する検査です。リアルタイム細胞解析実験終了時に、細胞をペレット化し、細胞膜は溶解しますが核膜は完全な状態に保てるマイルドな溶解バッファーで溶解 しました。細胞質内の大量のヌクレオソームの存在は、抗ヒストン抗体および抗DNA抗体を使用する、レポーター酵素ベースのビオチン-ストレプトアビジン 結合・比色イムノアッセイを用いて検出しました。検出されたヌクレオソーム量に対応した呈色強度を分光光度計で測定しました。コントロールと、 FuGENE®HDトランスフェクション試薬でトランスフェクションした細胞は、ヌクレオソームをほとんど含んでいませんでしたが、EGFP-baxを過剰発現させたと ころ、トランスフェクション45時間後に、ヌクレオソームが約6倍増加しました(データ非掲載)。これとは対照的に、TF1とTF2を用いたトランスフェ クションでは、中等度の量のヌクレオソームの存在が認められたのみでした。
これらの機能アッセイにより、FuGENE®HDトランスフェクション試薬を用いてpEGFP-BAXをトランスフェクションされ た細胞が、主としてアポトーシスにより死滅したことが確認されました。他の2種類の市販のトランスフェクション試薬を用いた場合、アポトーシスで死滅した のは、アポトーシス促進性タンパク質であるBaxをトランスフェクションした細胞のごく一部でした。
-カスパーゼ活性の評価
アポトーシスの初期の生化学的特徴の1つは、DNA修復と制御に関わる複数の細胞のタンパク質を分解するカスパーゼの活性化です。ホモジニアス カスパーゼアッセイは、in vitroでカスパーゼ活性を定量的に測定する、1ステップの蛍光定量アッセイです。トランスフェクション45時間後に、カスパーゼの基質である DEVD-R110(アスパラギン酸-グルタミン酸-バリン-アスパラギン酸-ローダミン110)をE-Plate 96の各ウェルに添加し、E-Plate をインキュベートしました。DEVD-R110は、活性化されたカスパーゼの量に比例して分解され、遊離型の蛍光色素ローダミン110を放出します。遊離 型の蛍光色素ローダミン110は標準的な蛍光リーダーで検出できます。FuGENE®HDトランスフェクション試薬を用いたトランスフェクションによるEGFP過剰発現では、最低限のカスパーゼ活性の増加が生じたのみでした(データ非掲 載)。FuGENE®HDトランスフェクション試薬を用いてpEGFP-BAXコンストラクトを導入すると、カスパーゼ活性化が2.5倍上昇しました。このことは、アポトーシ ス経路が厳密にBax依存性であったことを示しています。TF1またはTF2を用いてトランスフェクションしたサンプルは全て、かなり高いカスパーゼ活性 を示しました。pEGFP単独でも、これらの細胞のカスパーゼ活性化が上昇したことから、このアップレギュレーションは、Bax依存性ではないと考えられ ました。
これらの機能アッセイにより、FuGENE®HDトランスフェクション試薬を用いてpEGFP-BAXをトランスフェクションされた細胞が、主としてアポトーシスにより死滅したことが確認されまし た。他の2種類の市販のトランスフェクション試薬を用いた場合、アポトーシスで死滅したのは、アポトーシス促進性タンパク質であるBaxをトランスフェク ションした細胞のごく一部でした。
FuGENE®HDトランスフェクション試薬は、Baxなどのアポトーシス誘導タンパク質の影響を検討するのに非常に適しています。FuGENE®HDトランスフェクション試薬を用いたトランスフェクションは、細胞毒性による副次効果を最低限に抑えながら、高いトランスフェクション効率を維持してい ます。これとは対照的に、今回検討を行った他の市販トランスフェクション試薬では、細胞毒性や非特異的作用により、Baxタンパク質の影響と、トランス フェクション試薬そのものの影響を区別することができませんでした。
本稿はClaudia Fila(2009), Roche Applied Sciences, Cellular AnalysisアプリケーションノートNo. 3からBIOCHEMICA用に要約したものです。
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| 図1:一過性トランスフェクションによるHeLa細胞の反応に対するxCELLigenceシステムによるリア ルタイム細胞解析 HeLa細胞(5,000個/ウェル)を1枚のE-Plate 96に播種し、リアルタイム細胞モニタリングにより、15分ごとに26時間、細胞接着と増殖をモニターしました。次に、トランスフェクション試薬として FuGENE®HDか、TF1またはTF2のいずれかを用いて、E-Plate 96で、pEGFPまたはpEGFP-BAXプラスミドの細胞へのトランスフェクションを各レプリケートに対して行いました。トランスフェクション直前の 測定値に対するセルインデックス(CI)値により標準化し、RTCAソフトウエアで平均値および標準偏差を算出しました。全てのサンプルは同じプレートで 測定しました(a)。また、各試薬の効果の差を示すため、FuGENE®HDトランスフェクション試薬(b)、TF1(c)、またはTF2(d)でトランスフェクションした細胞ごとのCI曲線も示しました。 |
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| 図2:様々なトランスフェクション細胞集団におけるWST-1アッセイを用いた相対的な細胞生存能の評価 ト ランスフェクションしたHeLa細胞、およびトランスフェクションしていないHeLa細胞の培地に、トランスフェクション45時間後にWST-1試薬を添 加し、サンプルを37℃でインキュベートしました。1.5時間後に標準的な分光光度計で呈色強度を測定しました。トランスフェクションした細胞集団では、 吸光度が細胞生存能と直接相関します。結果は、トランスフェクションしていない集団を100%とした、相対的な生存能の割合として示しました。 |
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| 図3:LDH放出に基づく細胞毒性の評価 E-Plate 96でHeLa細胞にトランスフェクションを行い、45時間後に、トランスフェクションしていない細胞を組織培養インキュベータ内で15分間溶解させ、ポ ジティブコントロールとしました。全ての細胞フリー培養上清を反応液と共にインキュベートし、分光光度計で呈色強度を測定しました。吸光度は培地のLDH 活性レベルを示し、細胞障害、細胞溶解、ネクローシスの直接的な指標となります。細胞毒性の程度は、トランスフェクションした細胞とトランスフェクション していない細胞の吸光度の差の比と、ポジティブコントロールとトランスフェクションしていない細胞の吸光度の差の比から算出しました。 |
BIOCHEMICA2010 NUMBER1 (No118)
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