学術的なご相談、資料請求、機器サポートなど、お客様のさまざまなニーズに対応します。
Ariane Sadr-Nabavi1*, Michael Hoffmann2, Christian Weilke2, Yu-Li Sun2, and Claudia Nevinny-Stickel-Hinzpeter1
1Medizinisches Versorgungszentrum München, Abteilung Humane Genetik; 2Roche Applied Science, Germany
*Corresponding author: sadrnabavi@yahoo.de
High Resolution Melting (HRM)は、変異解析および検出のための、確実で新しいスクリーニング技術です。新規の変異探索の際、HRMを用いれば、一つの遺伝子の全てのexon をシークエンスする必要はありません。多くのexonからなる多数の遺伝子の解析にとって、時間とコストを節約できる大変優れた手法です。
今回ご紹介する研究では、LightCycler® 480 システムによるHRMと、変異スキャニングのための従来法であるdHPLC(denaturing high-performance liquid chromatography)を比較しました。ヒトのサンプルをdHPLCでスクリーニングするWAVE 4500 HT システムは、シークエンス解析によって、より詳細に特徴づけられる未知の変異を同定するために、我々の研究室で、長年にわたり使用されています。
我々は、プライマー配列や、アッセイの至適条件を、できる限り変更することなく、dHPLCアッセイをHRM法に移行することが可能 かどうか調べました。以前に同定されていた研究用サンプルと、(入手可能な場合は)目的配列を含んだプラスミドをコントロールとして用いて、乳がんと卵巣 がんに関連したヒトBRCA1遺伝子の12個のexonを対象にしたアッセイを確立しました。これらのサンプルを、LightCycler® 480システムとWAVEの両方を用いて、同時に解析しました。両方法で得られた結果を、感度と特異性で比較しました。
MagNA Pure LC システムを用いて、サンプルごとに200μl の全血からゲノムDNAを抽出しました。
まず最初に、以前に確立されたPCR反応条件をもとに、LightCycler® 480 機器で、LightCycler® 480 High Resolution Meltingマスターを用いたPCRに、最適なアニーリング温度とMg2+ 濃度を決定しました。
まず、BRCA1遺伝子の全てのPCR断片について、最適なMg2+ 濃度を、タッチダウンPCR(アニーリング温度 65 ~ 53 ℃)で確立しました。Mg2+ 濃度は、1.5 ~ 3.5 mMの間で評価し、いくつかのサンプルでは、5 ~ 10% DMSOを添加しました。94℃, 2分での初期変性;35サイクルの94℃, 30秒 → アニーリング温度, 30秒 → 72℃, 1分;最終伸張反応 72℃, 7分の3ステップのプロトコールを用い、最後は室温に設定しました。
我々は以前に、BRCA1遺伝 子の変異解析のために、23個のexonをカバーする34種の断片を増幅するプライマーをデザインしました。増幅産物は、PCRやdHPLC解析のよう な、ルーチンの解析に使用されており、いくつかの断片はシークエンスも実施されています。これら34種のPCR断片のうち12種が、 LightCycler® 480システムによるHigh Resolution Melting (HRM)解析と、dHPLCを比較するために選択されました。以前、dHPLC及びシークエンシングに使用されたものと同じプライマーが、本研究で使用 されました。全てではありませんが、ほとんどの場合、wild-type とheterozygous、または変異のhomozygousのコントロールが入手できました。12種の解析された断片のうち、以下にexons 9、11、20 の6つの断片について、dHPLCとHRMによって得られた比較解析を詳細に議論します。LightCycler® 480システムのGene Scanning ソフトウェアモジュールを用いた解析では、wild-typeのプラスミドが、常に比較のためのベースラインとして選択されました。
Exon 9 のPCR産物のサイズは、292 bpで、重複配列が多く、2つの変異箇所を含んでいます。3つの異なるコントロールサンプル:intron 9 内の変異のheterozygous ゲノムサンプル(het-G; mutation+64delTIVS9)、変異の heterozygousとhomozygous のコントロールプラスミドサンプル(het-P と hom-P; mutation c.676C>A) を用意しました。両方の変異は、PCR断片の中央付近に位置しています。こちらについて、3つの未知サンプルA、S 及び K を解析しました(図1)。Heterozygousコントロール (het-P と het-G)とwild type (Wt-P) の違いは、HRM(左)とdHPLC(右)の両方で、明確に識別可能でした。さらに、両方法において、サンプルSとKについて、明らかに異なる結果(両方 ともhet-G)が得られました。サンプルAは、dHPLCでは、hom-Pと類似の結果が得られましたが、HRMでは、他の全てのサンプルとは異なる結 果でした。さらにシークエンスにより確認したところ、サンプルAは、hom-Gのgenotypeであることが示されました。さらに、HRM法では、 dHPLC法では、その違いを簡単に検出できなった het-Pとhom-Pのサンプルの間の明確な違いを検出することができました。
Exon 11A のPCR産物の長さは、394 bpです。2つの既知の変異を含む、前方部に多数のチミジンの繰返し部位をもった比較的長い断片です。3つの変異コントロール:heterozygous の変異ゲノムコントロール(het-G; mutation c.969_970insTCATTAC)と、特定のSNPに対する heterozygous と homozygousのコントロールプラスミドサンプル(het-P と hom-P; mutation c.999A>T) が使用されました。両方の変異は、フォワードおよび、リバースプライマーから、50 bp以上離れています。こちらについても、3つの未知サンプルA、S及びKを解析しました。2つの変異het-Gとhet-Pは、dHPLCとHRM解析 で、明確に識別できました(図2)。どちらの方法でも、3つ全ての未知サンプルA、S及びKは、wild type に相当することが判明しました。dHPLCに比べて、HRM解析では、いくつかのケース、例えば hom-Pとwild type (Wt-P) などにおいて、より高い分離能が得られました。
Exon 11E のPCR産物の長さは、445 bpです。dHPLCとHRM解析にとっては、比較的長い断片です。
本テストでは、heterozygous のコントロールプラスミドサンプル(het-P; mutation c.2187A>T)をコントロールとして用いました。この変異は、PCR断片の3’領域の近くに位置しており、dHPLCとHRMの両方で、明確 に識別できました。再度、3つの未知サンプルA、S及びKについて、本exon における変異を試験しました。その結果、どちらの方法においても、サンプル間の違いを検出できました。サンプルSとKが一つのグループに、サンプルAが別 のグループに分類されました。その後の、シークエンシングにより、サンプルS及びKは、mutation c.2196G>A を含んだheterozygous であることが示され、サンプルAは、別の変異 c.2201C>Tのheterozygous であることが示されました。HRMとdHPLCの両方で、この違いは明確に同定できました(図3)。
Exon 11H のPCR産物の長さは、329 bpで、GC含有率は低く、40%です。比較的アデニン含量が高いために、dHPLCによる本産物の同定は、比較的困難です。本exonに対する変異コン トロールは、変異c.2765T>Aのhomozygous と heterozygousのコントロールプラスミドサンプル(hom-P と het-P)です。dHPLCとHRMの両方で、wild type(Wt-P)と比較して、本変異のheterozygousの検出が可能でした。しかしながら、HRMとdHPLCのどちらも、hom-Pを wild-typeコントロールから、明確に識別することは、出来ませんでした(図4)。
3つのサンプルA、S及びKが試験されました。サンプルSとKは、変異 c.2731C>T のheterozygousです。この違いは、dHPLC と、LightCycler® 480システムの両方で識別でき、シークエンシングにより検証されました。サンプルAは、hom-P 及び het-Pと同じグループであることが判明しました。サンプルAは、wild type 及び、未知サンプルS、Kとは異なっていると結論づけられましたが、シークエンスだけが、それを完全に特徴づけることが出来ました。
Exon 11K のPCR産物の長さは、313 bpです。変異 c.3667A>G のheterozygous (het-G) のコントロールゲノムサンプルを解析し、未知サンプルA、S及びKを試験しました。サンプルS及びKは、両方とも、変異 c.3667A>G の heterozygous であり、dHPLC と LightCycler® 480 システムの両方で、明確に同定できました(図5)。さらに、LightCycler® 480システムは、変異 c.3667A>Gのhomozygous である サンプルAとwild type の違いを検出できました。この違いは、dHPLCを用いて識別することは困難でした。
Exon 20 の PCR産物の長さは、380 bp です。本exonでは、変異 c.5382_5383insC のheterozygousのコントロールゲノムサンプルと、変異 c.5350G>C のheterozygous と homozygous のコントロールプラスミド、未知サンプルA、S及びKを試験しました。dHPLC と HRM は、heterozygousの変異ゲノムコントロールサンプル(het-G; c.5382_5383insC)と、heterozygousの変異プラスミドコントロールサンプル(het-P; c.5350G>C)を、区別することが出来ました。homozygousの変異プラスミドコントロールサンプル(hom-P; c.5350G>C)は、HRM解析でのみ、wild type と明確に区別することが出来ました(図6)。3つの未知サンプル A、S 及び K は、どちらの方法でも、変異は検出されず、wild type と同定されました。全体的に、本exon の解析で得られた結果は、とても明確でした。
研究モデルとして、BRCA1 遺伝子を対象とした、既存のdHPLCと、最近開発されたHigh Resolution Melting の2つの遺伝子スキャニング法の比較解析を行った結果、どちらのシステムも、感度と特異性において、同等であることが示されました。しかしながら、我々の 研究室で実施した比較解析では、HRM法が、反応チューブを開封する必要もなく、1チューブで、PCRとそれに続く解析を同一の機器で実施することが出来 るため、LightCycler® 480システムが、dHPLC法を用いるよりも、ずっと簡便でした。LightCycler® 480システムのさらなる利点は、プラスミドとゲノムDNAの両方をターゲットとして使用でき、PCRの直前に、wild type のテンプレートを添加することが可能なことです。PCR産物の、カラム精製や酵素処理後のシークエンシングは、SYBR Green I とは全く異なるLightCycler® 480 High Resolution Melting Masterに含まれるDNA結合色素の特性により、問題なく実施することが可能です。dHPLC法では、プラスミドとゲノムDNAの両方をターゲットと して使用できますが、結果が明らかに改善されるので、wild type のテンプレートが、通常PCRの後に反応溶液に添加されます(PCRチューブを開封する必要性があります)。しかしながら、コンタミネーションのリスクを 伴う、作業が必要となります。このほか、dHPLCと比較したLightCycler® 480システムの利点は、メンテナンスの必要性が減少することです。High-performance liquid chromatography(HPLC)機器は、一般的に、プレートタイプのPCR装置よりも、より多くの保守・メンテナンス・メーカーサポートを必要 とします。さらに、dHPLCシステムの日々の操作や、メンテナンス作業は、より複雑で時間がかかります。変異箇所がPCRプライマーの近傍(16 bp 以下)に存在するとき、場合によっては、HRM解析が困難なことがあるようです。このような現象は、dHPLCによる解析では、同様には発生しませんでし た。そのため、dHPLCからHRM法に移行する際、いくつかのプライマーは、再デザインが必要となる場合があります。ただし、本研究において、我々はプ ライマーの再デザインを実施しなかったことを踏まえれば、多くのアッセイが至適化の必要なく、移行できる確立は高いと思われます。従来の融解曲線分析で検 出されるようなプライマーダイマーが存在する場合でも、データは十分解析できました(データ未掲載)。全ての exon 及び変異のために、コントロールとして、プラスミドが準備できない場合においても、新規の未知の変異(例:サンプル A におけるexon 9 )も増幅、検出可能で、その後のシークエンスにより、容易に詳細な解析、同定ができました。
HRM及びdHPLCのどちらも、変異断片のみの移動度パターンあるいは、融解曲線パターンに基づいた断片のジェノタイピングでは、正確で 信頼できる結果は得られませんでした。そのため、wild-type コントロールとは異なる未知サンプルを完全に同定するには、必ずシークエンシングのステップが必要です。これは、HRMとdHPLCの両方の結果にあては まります。変異のheterozygous の解析については、両方のシステムとも、明確な結果を示しました。しかしながら、LightCycler® 480システムによる解析では、変異のheterozygous 及び homozygousの違いも、検出することができました(例: BRCA1 exon 11K、exon 20)。このような判別は、LightCycler® 480システムで可能でしたが、変異のhomozygousの認識は、アンプリコンサイズや、GC含量など、断片の特性に強く依存しますので、変異のhomozygousのコントロールとwild type 解析結果を比較しておくことを強く推奨します。
要約すると、既に確立されたPCR/dHPLCを基本としたプロトコールから、LightCycler® 480システムでのHRM解析による変異スキャニングのプロトコールへの移行は、容易であることが実証され、中程度のGC含量で、500 bp 以下の中程度の大きさのPCR断片では、明瞭な結果が得られました。これにより、バイオ医学研究での変異のスキャニング及び検出において、dHPLCシス テムを、LightCycler® 480システムで置き換えるには、ほとんど労力が必要ないことが判明しました。
![]() |
図1: Exon 9
Exon 9 に対するHRM(左)とdHPLC(右)を用いた変異スキャニング解析結果の比較
![]() |
図2: Exon 11A
Exon 11A に対するHRM(左)とdHPLC(右)を用いた変異スキャニング解析結果の比較
![]() |
図3: Exon 11E
Exon 11E に対するHRM(左)とdHPLC(右)を用いた変異スキャニング解析結果の比較
![]() |
図4: Exon 11H
Exon 11H に対するHRM(左)とdHPLC(右)を用いた変異スキャニング解析結果の比較
![]() |
図5: Exon 11K
Exon 11K に対するHRM(左)とdHPLC(右)を用いた変異スキャニング解析結果の比較
![]() |
図6: Exon 20
Exon 20 に対するHRM(左)とdHPLC(右)を用いた変異スキャニング解析結果の比較
| 製品名 | 製品番号 | 包装単位 | 希望価格 |
|---|---|---|---|
| LightCycler® 480 インスツルメント II | 5 015 278 | 1台(96 ウェル) | ご照会 |
| 5 015 243 | 1台(384 ウェル) | ご照会 | |
| LightCycler® 480 Gene Scanningソフトウェア | 5 103 908 | 5 ライセンス | ←製品番号をクリック |
| LightCycler® 480 High Resolution Melting マスター | 4 909 631 | 5 x 1 ml(500回/20μL反応) | ←製品番号をクリック |
当社のカタログに掲載する製品は、ライフサイエンス分野の研究のみを目的としています。特に明記のない限り、診断用途目的には使用できません。カスタムバイオテック製品は、特に明記のない限り工業原料用のみを目的としています。
本ウェブサイトでは、幅広い利用者を対象とした製品情報を掲載しています。お住まいの国では利用できない製品、もしくは認可を受けていない製品の詳細情報が掲載されている場合もあります。それぞれの居住国における正当な法的手続や規制、登録、慣習法を満たしていない可能性のある情報の閲覧に関しては、当社は一切の責任を負いません。
〒105-0014 東京都港区芝2-6-1