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Mohn F et al. (2008) Mol Cell 30:755-766
幹細胞の多能性はクロマチン修飾やDNA修飾などのエピジェネティックな制御によって減少していく。Mohnらは神経発生モデル系のサンプル(3種類の 分化過程に対応した、マウスの発生初期幹細胞、神経前駆体細胞、および最終分化した神経細胞)において、26,275箇所のプロモーターをカバーした NimbleGenマイクロアレイを用いたゲノム網羅的エピジェネティック解析(MeDIP法によるDNAメチレーション解析、ヒストンタンパクの ChIP解析、およびRNAポリメラーゼIIのChIP解析)を行い、その結果よりDNAメチレーションおよびポリコーム群タンパクを介したヒストンメチ レーション(H3K27me3)による多能性および分化能の制御について1つのモデルを導き出している。
幹細胞と神経細胞とでプロモーター領域のDNAメチレーションを比較した結果、全体的なパターンは概ね保存されており、データ評価可能であった 15,100箇所のプロモーターのうち、分化後に新規メチル化されていたのは343箇所(2.3%)、脱メチル化されていたのは22箇所(0.1%)で あった。新規メチル化されていたプロモーターのうち、2-300箇所が神経前駆体細胞でメチル化されていたことから、新規メチル化は最終分化よりもむしろ 多能性変化に関与していると考えられた。一方、幹細胞に対して神経前駆体細胞および神経細胞において新規メチル化されたプロモーター領域ではRNAポリメ ラーゼIIの活性が無かったことから、CpGアイランドのメチル化により発現抑制されていることが確認されたが、これらプロモーター領域の62%は、幹細 胞においてもRNAポリメラーゼIIの活性が無かった。このことから、最終分化における発現抑制はメチル化だけでなく、他のエピジェネティックな変化と組 合わさって起こると考えられる。
ポリコームを介したヒストンメチレーション(H3K27me3)とRNAポリメラーゼIIの活性を比較した結果、負の相関性があることが分かった。ポリ コームターゲットとなった領域の86%でRNAポリメラーゼIIの活性が無く、逆に脱メチル化されたH3K27me3では転写が活性化されていた。 H3K27me3は組織特異性が高いことから、ポリコームターゲットは神経分化過程での感受性が高いと考えられる。また、ポリコームターゲットとなったプ ロモーターはターゲットとなっていないプロモーターよりも神経細胞への分化過程で起こる新規メチル化が4.5倍頻度が高いこと(図1)、幹細胞にてRNA ポリメラーゼIIの活性が無い領域の3分の2がポリコームターゲットであることが分かった。
これらの結果より、Mohnらは発生・分化過程における新規メチル化とポリコームを介した転写抑制がリンクしているモデルを提唱した。つまり、細胞分化 の間に、DNAメチレーションが神経前駆体細胞の多能性を規定し、そのDNAメチレーションと同時に起こるポリコームを介したヒストンメチレーションが最 終分化につながる発現抑制を制御しているということである。
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図1
BIOCHEMICA2008 NUMBER4 (No113)
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