高解像能融解曲線分析(HRM)によるブドウのマイクロサテライト解析

Gene Expression Corner

John F. Mackay1*, Christopher D. Wright2, and Roderick G. Bonfiglioli1,2
1Linnaeus Laboratory, Gisborne, New Zealand, 2Riversun Nursery Ltd, Gisborne, New Zealand
*Corresponding author: john@linnaeus.co.nz

イントロダクション

近年、ブドウ栽培における接ぎ木の枝とその台木の品種の認証(サーティフィケーション)が重要視されてきています。ニュージーランド国内で使用されている多くの台木(例 : 5C、SO4、5BB、 125AA、420A Mgt )は同じ系統由来で、これらはみなVitis berlandieriVitis ripariaという品種の交雑種です。このような遺伝的に制限のある品種を使用していることは他国でも珍しいことではありませんが、相同性が非常に高いためアンペログラフィー(各品種の特徴を形態学的に分類する手法)に基づいた品種の同定が困難です[1]。

DNAの反復配列を解析するマイクロサテライト解析によって、ブドウの穂木(接ぎ木の枝)とその台木の品種を容易に同定することが可能です[2 - 4]。一般的な解析には、非常に手間のかかる銀染色によるポリアクリルアミドゲルや、それよりやや手間のかからない、自動分離して蛍光を読み取るシークエ ンサーを使用する方法が用いられています。このシークエンサーを使用する方法でも、蛍光ラベルされた各マイクロサテライトに対応したプライマーを使用しな ければならなく、またPCR産物の希釈や機器へのアプライなどの手間とコストがかかります。

我々は、SNP探索とジェノタイピングに利用されることの多い高解像能融解曲線分析(High-Resolution Melting Analysis : HRM)の手法を用いて、様々な未分類のサンプルおよび同じ品種の既知のサンプルにおけるマイクロサテライトの増幅産物の融解曲線を比較することで、ブド ウのマイクロサテライトを同定できるかどうかを検証しました。このアッセイは組織適合抗原(HLA)を同定することで確認をしました[5]。

材料と方法

100 - 150 mgの若くまだ開いていない葉をグアニジンバッファー内でホモジナイズした後、ゲノムDNAを抽出し濃度を測定して各20 ng/μlになるようPCRグレードの水で希釈し、これをサンプルとしました。

比較の基準とするマイクロサテライト[2]はあらかじめ解析しておきました。LightCycler® 480 High Resolution Melting Master、最終濃度2 mMのMgCl2、 各0.25μMのプライマー、50 ngのゲノムDNAを混合してPCRを行いました。96ウェルプレートを使用し、トータル液量10μl または20μlで反応させました。サイクリングの条件は、すべてのマイクロサテライトが同じプログラムで増幅するようにタッチダウンPCRのプログラムで 行い、増幅プログラムに続けてHRMのためのメルティングプログラムを加えました。その際は、蛍光取得を25回/℃に設定して行いました。

結果と考察

当初は反応に加えるゲノムDNA量を一定にしていませんでした。そのため最大で10倍の濃度のばらつきがありました[6]。しかし、抽出したゲノム DNAの量をPCRに用いる前に20 ng/μlになるよう希釈して使用したところ、よりよい再現性が得られました。原因は、未希釈のサンプルに含まれるわずかな多糖類の濃度のばらつき(また は他の阻害物質)がメルティングに影響していたものと考えられ、希釈によって阻害物質の濃度のばらつきがなくなったサンプルと比較対象となる既知サンプル の増幅の際のCp値も一致するようになりました(データ未掲載)。1回のランで様々な品種の台木を区別することができました(図1)。

本方法の感度を確認するために、今まで区別しにくかった2つの台木の品種をテストしました[7]。前報では、台木品種5CとSO4のマイクロサテライト VVMD32は、1つのアレルを共有していて、もう1つのアレルは2 bp(CTの繰り返し1回)の違いが見られました。ソフトウェアによるHRM解析においてこれらのサンプルを区別することができました(図2)。我々は、 本方法がより広いアプリケーションに応用できるかを確認するために、他の植物でもテストしました。オリーブ品種のマイクロサテライトにおいて明瞭に区別す ることができました(図3)。

図1:近種の6品種(Vitis berlandieri種とVitis riparia種の交雑種 : 5C、SO4、125AA、3309C、161-49C、 420A)由来のブドウの台木の差異。5つのサンプルにおけるマイクロサテライトZAG62のバリエーション。

図2:5C、SO4台木由来の5つのDNAサンプルにおけるマイクロサテライトVVMD32。2つの品種は1つのアレルを共有し、他のアレルは2 bp(CTリピート1回)の違いが見られます。

図3:2品種(Frantoio、Koroneiki)のオリーブから抽出した5つのDNAサンプルのマイクロサテライトDCA-3(a)、UDO-12(b)における融解曲線プロファイル。

結論

密閉容器の中で迅速に反応を行い、高い分解能をもたらすHRMは他のリアルタイムPCRアプリケーションにもメリットをもたらしますが、マイクロサテラ イト比較で我々の求めるブドウやその他の作物の認証(サーティフィケーション)を、大規模に迅速に行えることが今回の検討で分かりました。

リファレンス

  1. de Andres MT et al. (2007) Am J Enol Vitic 58:75-86
  2. This P et al. (2004) Theor Appl Genet 109:1448-1458
  3. Sefc KM et al. (1998) Vitis 37:15-20
  4. Lin H, Walker MA (1998) Am J Enol Vitic 49:403-407
  5. Zhou L et al. (2004) Tissue Antigens 64:156-164
  6. Montgomery J et al. (2007) Nature Prot 2:59-66
  7. Walker MA , Boursiquot JM (1992) Am J Enol Vitic 43:261-265

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