BRCA1 遺伝子を例とした通常のPCR から LightCycler® 480 を使用した HRM (高解像度融解曲線分析) アッセイへの移行の検討

Gene Expression Corner

Rolf H.A.M. Vossen*, Nienke van der Stoep, Johan T. den Dunnen
Leiden Genome Technology Center (LGTC) and the Center for Human and Clinical Genetics, Leiden University Medical Center (LUMC), Leiden, The Netherlands
*Corresponding author: R.H.A.M.Vossen@lumc.nl

イントロダクション

高解像度融解曲線分析 (hrMCA) は、遺伝子における未知の変異を調べるための魅力的なテクニックです。LightCycler® 480 を使用した hrMCA アッセイのデザインが難しいかどうかを調べるために、BRCA1 遺伝子のイントロン 11 領域内の 3 フラグメントを選びました。それらについてアッセイのデザインを行い、既知バリアントの検出感度について検証しました。

材料と方法

通常の PCR の反応条件を参考にして、飽和型 DNA 結合色素が含まれる、LightCycler® 480 High Resolution Melting マスターミックスを使用した反応における最適な条件を決定しました。Mg2+ を添加して濃度を 2~3 mM にし、PCR 条件は、ブロックサイクラーを使用して、55~65 ℃の温度勾配をかけて検討しました。その後、LightCycler® 480 を使用して、PCR および hrMCA を行い、PCR 産物が良好な融解曲線を描くことを確認しました。また、アガロースゲル電気泳動で、PCR 産物が単一で予測された長さであることを確認しました。

結果と考察

3 種類のフラグメントのすべてについて、広い温度幅において、良好な増幅が見られました (図 1)。我々の実験では、元のPCR条件を少し検討するだけで、良好な増幅が得ることが出来ました (タッチダウン PCR も有効です [1] )。

既知の DNA バリアントを区別して検出するために、テンプレートなしのコントロール (NTC) を加えた 24 サンプルを解析しました。サンプルに含まれる DNA バリアントを表 1 に示します。すべてのサンプルについて、96 または 384 ウェルマイクロプレートを使用して 2 重測定で増幅を行いました。全部で、276 反応を行い失敗はありませんでした。96 と 384 ウェルプレート上で得られた増幅と融解曲線分析の結果はほぼ同等でしたが、わずかに融解曲線分析において 384 ウェルフプレートフォーマットの方が良好でした。

表 1 : DNA のバリアント。

DNAバリアント ミューテーション 記述
A c.[2989_2990dupAA]+[3113A>G] heterozygous pathogenic variant and heterozygous polymorphism
B c.3113A>G heterozygous
C c.3113A>G homozygous
D c.3119G>A heterozygous polymorphism
E c.[3113A>G]+[3119G>A] double heterozygous
F c.3436_3439delTGTT heterozygous pathogenic variant
G c.[3485delA]+[3548A>G] heterozygous pathogenic variant and heterozygous polymorphism
H c.3548A>G heterozygous
I c.3548A>G homozygous
J c.[3548A>G]+[3640G>A] heterozygous polymorphism and heterozygous unclassified variant
K c.[3548A>G]+[3627A>G] homozygous polymorphism and heterozygous unclassified variant

図1:3 つの BRCA1 フラグメントのアニーリング温度の決定。
予備実験で決定した温度を矢印で示します。

図2:BRCA1 フラグメント 1 の解析。

図3:BRCA1 フラグメント 2 の解析。

図4:BRCA1 フラグメント 3 の解析。

BRCA1 のフラグメント 1 は 246 bp で、バリアント A、B、C、D、E をカバーしています。ホモ接合型のバリアント C を除くすべてのバリアントを容易に検出することが出来ました (図 2)。野生型とは別に、3 つのグループに分けられる波形が得られました。バリアント A と B は、判別することができませんでした。BRCA1 フラグメント 2 は 268 bp で、バリアント F、G、H、I、J、K をカバーしています。
バリアント F と J を除くすべてのバリアントについて、野生型と他のバリアントとを容易に判別することができました (図 3)。バリアント F と J には、プライマー配列上に変異があったため、野生型しか増幅されず、検出することが出来ませんでした。BRCA1 フラグメント 3 は 378 bp で、バリアント A、B、C、D、Eをカバーしていて、フラグメント 1 とオーバーラップしているフラグメントです。図では複雑に見えますが、ソフトウェア上ですべてのバリアントは容易に判別されています (図 4)。画面上でクリアに判別するために、野生型の代わりに別のバリアントをリファレンスに設定すると良好な場合があります (図 4a と 4b)。この機能は、LightCycler® 480 Gene Scanning ソフトウェア で行うことが可能です。変異 C は、フラグメント 1 の野生型と判別することができませんでした (図 2) が、長さの違いによって(より長いフラグメントとして)検出することができました。

結論

ロシュの提供する高解像度融解曲線試薬と LightCycler® 480 を使用した、増幅と融解曲線分析アッセイのデザインと最適化は、(温度勾配機能を持ったPCRシステムを利用して) 簡単に行うことが出来ました。ブロックタイプのサイクラーでない場合は、タッチダウンPCRの検討をお勧めします。すべてのヘテロ接合体のバリアントが、 良好な感度で野生型と区別して解析することができたため、未知のヘテロ接合体のバリアントが高感度に検出できると期待されます。我々の研究における hrMCA を使用したホモ接合体のバリアントの検出について記載してきましたが、ホモ接合のバリアントを検出する場合は、野生型 DNA をスパイクしてヘテロ接合体を形成させると効率よく結果が得られます。96 および 384 ウェルプレートを使用して同等の結果を得られましたが、384 ウェルプレートを使用した方がわずかに良好でした。この実験は、EuroGentest (Nisnke van der Stoep) の FP6 プロジェクトとのコラボレーションで行われました。我々は、引き続き DNA 診断を目的とした BRCA1、2 遺伝子全体の hrMCA スクリーニング系を構築中です。

リファレンス

  1. Evrard A et al. (2007) Biochemica 3:13-14

Order INFO

製品名 製品番号 包装単位 希望価格
LightCycler® 480 instrument (384 well) 4 545 885 1台 ご照会
LightCycler® 480 Gene Scanning Software 4 980 336 1個
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LightCycler® 480 High Resolution Melting Master 4 909 631 500回反応
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BIOCHEMICA2007 NUMBER4 (No109)

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