FuGENE® HDトランスフェクション試薬によるヒト初代骨格筋筋芽細胞の効率的なトランスフェクション

Protein Expression コーナー

Stefanie Grunwald and Astrid Speer
Molecular Biology, Department of Life Science and Technology, Technical University of Applied Science Berlin, Germany

イントロダクション

細胞のトランスフェクションは遺伝子発現の誘導に使用される主要なテクニックの一つです。C2C12細胞などの細胞株では多くの適切なトランスフェク ションやプロトコールが入手可能ですが、ほとんどの初代細胞とヒト骨格筋筋芽細胞(SkMC)は非常にトランスフェクションしにくい細胞です。いくつかの 論文で非ウイルスシステムを使用したヒト初代骨芽細胞のトランスフェクションの成功例が報告されています[1,2,3]。これらの方法はリン脂質などの陽 イオン系脂質、エレクトロポレーション、リポソームとアデノウイルス関連タンパク質の組み合わせなどを含みます。しかし、トランスフェクション効率は低 く、試薬の毒性とトランスフェクション効率の妥協となっています。

特に、細胞が制限されるジストロフィーや萎縮症の個々の初代SkMCでは、高いトランスフェクション効率と低い毒性が必要とされます。それゆえ、初代SkMCにおけるFuGENE® HDトランスフェクション試薬の効率と毒性を試験し、他の試薬やシステムと比較しました。

材料と方法

ベクターDNAの調製

プラスミドpReciever M03(Genecopoeia)を説明書に従い、エンドトキシンフリーの条件下で精製しました。cDNAインサートを含むプラスミドの全長は7 kbでした。

細胞培養とトランスフェクション

初代SkMC(Muscle Tissue Culture Collection; Munich, Germany)は5% FCS(PromoCell, Germany)を含む骨格筋細胞増殖培地を使用して培養しました。
トランスフェクションのために、細胞をトリプシン処理し、6ウェルプレートに4×105個の細胞を播種しました。FuGENE® HDトランスフェクション試薬のプロトコールに従い、トランスフェクションを播種の後に直接行いました。プロトコールの指示に従い、様々な試薬:DNA比 とコンプレックス溶液量を使用しました(表1)。例えば、2μgのDNAを100μlの血清及び抗生物質不含の培地(OptiMEM, Invitrogen)に希釈しました。これに3μlのFuGENE® HDトランスフェクション試薬(比率3:2)を加え、15分間インキュベートしました。このミックス(100%)を細胞に一度に加えました。200%と 400%ではアプライする液量をそれぞれ2倍、4倍しました。細胞は新鮮な培地で洗浄し培地を交換するまで24時間インキュベートしました。
比較のために、細胞はトランスフェクション試薬E及びF、システムAでトランスフェクションしました。

トランスフェクション効率の分析

72時間後、細胞を洗浄しトリプシン処理し、溶解バッファーであるTRI PUREを加える前に再度、1×PBSで洗浄しました。DNAを説明書どおりに分離しました。RNase Hとプラスミドを1箇所切断するStu IをDNAに加えました。
トランスフェクションされたベクターDNA量を測定するためにリアルタイムPCRを行いました。2種類のプライマーペアを使用しました。最初のプライマーペアは、ベクターに組み込まれたcDNAインサートと同様に、www.pseudogene.orgに 見られる2個の既知の内在性偽遺伝子も認識します。実験に使用した細胞は同じドナー由来ですので、全ゲノムと偽遺伝子の数は同じであり、考慮する必要はあ りませんでした。第2のプライマーペアは、そのフォワードプライマーはcDNAインサートのためのフォワードプライマーと相同で、リバースプライマーは次 のイントロンDNA内にあるようにデザインされ、インサートの内在性DNAを増幅するために使用しました。

5種類のコピー数の3重測定によるベクターDNAの希釈系列を実行しました。計算された標準曲線は1.99の効率を達成しました。すべてのサンプルのた めに、表1にあるようにベクターのインサートcDNAの増幅と、各反応で使用されたDNA量の変動を較正するための内在性のDNAの検出という、2回のリ アルタイムPCR反応を行いました。すべてのサンプルの補正された結果は標準曲線に適用され、各実験でのコピー数を回収しました。

結果と討論

図1はFuGENE® HDトランスフェクション試薬、トランスフェクション試薬E及びF、システムAでの結果を表しています。最も高いトランスフェクション効率(4×105個の初代SkMCから分離された2.4×1010コピー数)は、FuGENE® HD:DNAが6:2で200%のコンプレックス量を使用したときに得られました。一見、この値は非常に高いように見えますが、このようなコピー数はいくつかの初代細胞で報告されています[4]。これらの著作は細胞当り103個のプラスミドをインジェクションしたときに、30-50%の細胞でかすかなGFP蛍光シグナルしか見えないということを示しています。明瞭なシグナルのためには、細胞当り105個のプラスミドDNAが必要とされます。FuGENE® HDのみで処理された陰性コントロールがリアルタイムPCRで弱いシグナルを示すことは、ベクターDNAのコンタミネーションというよりは2つの既知の偽遺伝子よりの結果と考えられます。

トランスフェクション試薬E及びF、システムAでは検出されたベクターDNAのコピー数はFuGENE® HDに比べ非常に低い割合でした。トランスフェクション試薬Eはこの3種類の中で最大の効率を示しましたが、FuGENE® HDの最も高い結果の25分の1にしか過ぎませんでした。それに加え、非常に高い細胞毒性を示していました。毒性への印象は、細胞とトランスフェクション 試薬のインキュベーションの後、24時間後に顕微鏡でモニターしました。トランスフェクション試薬E及びF、システムA でのトランスフェクションの間に30-40%の細胞が死滅したのに比べ、FuGENE® HDは100%及び200%の容量では毒性は測定されず、400%で軽い毒性が見られました。

結論

FuGENE® HDトランスフェクション試薬を用いて、初代ヒトSkMCが最小限の毒性でトランスフェクションできました。この細胞は標準的なトランスフェクション試薬に抵抗性であり、毒性に敏感です。
結論として、FuGENE® HDトランスフェクション試薬は、7 kbもプラスミドベクターを初代ヒトSkMCに導入するための、簡単で毒性の少ないトランスフェクション法を始めて提供しました。

次の研究として、この優れた結果が他のベクターDNAで、また細胞の増殖率が非常に低い筋ジストロフィーからの細胞でも、再現できるかどうかを試験する予定です。

リファレンス

  1. Pampinella F et al. (2002) Mol Ther 5:161-169
  2. Espinos E et al. (2001) Neuromuscul Disord 4:341-349
  3. Campeau P et al. (2001) Gene Ther 8:1387-1394
  4. Schindelhauer D, Laner A (2002) Gene Ther 9:727-730

表1:初代ヒトSkMCのトランスフェクション効率で試験された様々なパラメーター。

  陰性コントロール  
DNAのみ FuGENE® HDトランスフェクション試薬のみ FuGENE® HDトランスフェクション試薬:DNA
FuGENE® HDトランスフェクション試薬:DNA(μl:μg) 0:2 3:0 6:0 12:0 3:2 6:2 12:4
コンプレックスの容量(%) 100
200
100
200
200 200 100
200
400
100
200
400
100
200
400

図1:トランスフェクションされたプラスミドDNAのコピー数。
FuGENE® HDトランスフェクション試薬、トランスフェクション試薬E及びF、システムAよりの4×105個の初代SkMCから分離されたプラスミドDNAのコピー数。

BIOCHEMICA2007NUMBER3(No108)

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