Universal ProbeLibrary:ゼブラフィッシュ遺伝子発現定量のための万能ツール

Gene Expression コーナー

Christoph Leucht and Laure Bally-Cuif
Department of Zebrafish Neurogenetics, GSF-National Research Center for Environment and Health, Institute of Developmental Genetics, Ingolstaedter Landstrasse 1, D 85764 Neuherberg, Germany

硬骨魚類のゼブラフィッシュは、モデル生物として人間を含む脊椎動物の発生や疾患関連過程の研究に広く利用されています。
これらの過程を分子、細胞レベルで理解するためには、遺伝子発現レベルの評価が必要とされることがあります。
遺伝子レベルの評価を行なう為には、定量リアルタイムPCR(qPCR)は重要なツールではありますが、ゼブラフィッシュを用いた研究においては比較的軽視されてきました。
本稿では、ゼブラフィッシュ胚のcDNAを用いて行った、Universal ProbeLibrary (UPL)を用いたqPCR(UPL-based qPCR)と、従来のSYBR Green Iを使ったqPCR(SYBR Green I-based qPCR)の比較について説明します。
我々は、Universal ProbeLibraryを用いた方法が、SYBR Green Iを使用した方法と比較して同等かそれ以上の性能を示すことを明らかにしました。

イントロダクション

ProbeFinderソフトウェアを使用したUniversal ProbeLibrary は、研究者が目的としている転写産物に対し、迅速かつ適切なプライマーとプローブの組合わせが提供できる、便利で簡単な定量リアルタイムPCRシステムです。
従来のSYBR Green Iを使用したqPCRでは、SYBR Green Iに代表されるようなPCR増幅されたすべての二重鎖DNAを非特異的にラベルするような方法が用いられてきました。
このラベルの過程では、目的としていないPCR産物やプライマーダイマーもラベルされてしまいます。
これらとは対照的に、Universal ProbeLibraryアッセイは、ラベルされたプローブ〔例.,FAM標識加水分解プローブ〕により、目的とするPCR産物を配列特異的に検出できるアッセイを提供します。
遺伝子特異的プライマーとプローブの組合わせは、特異性と感度の向上をもたらします。
Universal ProbeLibraryは、Locked Nucleic Acid(LNA:酸素原子を介した架橋構造を持つヌクレオチド)をプローブの構成要素としています;
※LNAプローブは、短鎖でもターゲット部位に結合でき、リアルタイムPCRまたはin situ ハイブリダイゼーションにも使用することが可能な、短鎖核酸分子(8-9ヌクレオチド)です。

Universal ProbeLibraryは、フルオレセイン(FAM)標識され、標準的なPCR条件と、検出フォーマットに使用できるようデザインされた加水分解(Hydrolysis)プローブです。
短鎖LNAプローブは 異なるスプライスフォームの転写産物の同時検出が可能であり(“common assay”を使用します)、また、複数の転写産物に結合するプローブによっていくつかのスプライスフォームを別々に検出すること (“differentiating assay”を使用します)も可能です。
本稿では、ゼブラフィッシュの遺伝子発現についてUniversal ProbeLibraryの評価について示します。
まず新規にデザインしたUniversal ProbeLibraryアッセイと、カスタムデザインによるSYBER Green Iアッセイについて比較しました。
さらに、複数のリファレンス遺伝子を用いて遺伝子発現の相対定量を行うために、Universal ProbeLibraryで3種類のハウスキーピング遺伝子の評価をしました。

材料と方法

RNA単離と逆転写反応

トータルRNAは、受精後24時間(24hpf)のゼブラフィッシュ胚50個より、市販のRNA抽出キットを使い抽出しました。
ファーストストランドcDNA合成は、Transcriptor First Strand cDNA合成キットを用い、1μgのTotal RNAと、Oligo(dT)プライマーを用いて行いました。

プライマーデザイン

Universal ProbeLibraryアッセイ用のプライマーは、ProbeFinderソフトウェアを用いてデザインしました。
SYBR Green Iアッセイ用のプライマーは、VectorNTI(インビトロジェン社)を用いてデザインしました。

定量PCR

Universal ProbeLibraryアッセイには、LightCycler® TaqMan® Masterを用いました。SYBR Green Iアッセイには、LightCycler® FastStart DNA MasterPLUS SYBR Green Iを用いました。

機器

Universal ProbeLibraryアッセイの増幅条件は、初期変性を94℃で10分間、94℃で10秒、55℃で20秒、72℃で5秒をを40-50サイクル行いました。
SYBR Green Iアッセイは、初期変性を94℃で10分間、94℃で10秒、55℃で5秒、72℃で5秒を40-50サイクル行いました。
すべてのSYBR Green Iアッセイでは、60℃から95℃までのメルティングカーブ解析を行いました。

結果と討論

我々は、胚発生期に発現する15種類のゼブラフィッシュ転写産物を測定するために、Universal ProbeLibraryを用いたアッセイデザインにProbeFinderソフトウェアを使用しました。
同じ転写産物のサブセットでは、カスタムデザインのプライマーペアを従来のSYBR Green Iアッセイ用に構築しました。

オンラインアッセイデザインセンター(www.universalprobelibrary.com)上のProbeFinderソフトウェアは、非常にユーザーフレンドリーであり、既知のアクセッション番号、キーワードまたは遺伝子名を用いて良好なアッセイデザインを見いだすことに成功していることがわかりました。
ゼブラフィッシュ遺伝子データベースは高品質であるため、結果は明確かつ良好に設計され、表示されます。

両アッセイの比較には、ゼブラフィッシュcDNAの1:10希釈系列を使用しました。
Universal ProbeLibraryアッセイでは、15種類のうち14種類において良好な結果が得られました。しかしながら、1種類のアッセイにおいてうまくいかないものがありました (hey2) [表1]。
SYBR Green Iアッセイでは、すべてのアッセイが上手くいきました[表1]。うまくいかなかったアッセイでは、ゲル電気泳動で産物が検出できませんでした(データ未掲載)。これはおそらくプライマーデザインの不良によりうまくいかなかったことを示しています。
直線性の点からは、Universal ProbeLibraryアッセイはSYBR Green Iアッセイより全体的に良好な結果を示しました。

2つの検出フォーマットの比較に加え、我々は、ゼブラフィッシュ研究者が相対的遺伝子発現のアッセイを行なう際に正確な標準化に使用できる、より多くのリファレンス遺伝子を見出そうと試みました。
これまでのほとんどの論文では、ゼブラフィッシュ研究者達はたった1種類の遺伝子(ほとんどが bactin1)を標準化に用いていました。
一般的には、複数のリファレンス遺伝子の使用は、リファレンス遺伝子1種類だけの使用に比べより良い方法と言えます。(www.gene-quantification.info と[1])
ゼブラフィッシュには2個のbactin遺伝子があるので、bactin2に加えてgapdhのアッセイを行いました。すべての遺伝子で、最初に選択したUniversal ProbeLibraryアッセイは成功しました(図1)。
図1には、3種類の遺伝子についてそれぞれの1:5希釈系列を示しました。

表1 Universal ProbeLibrary と SYBR Green Iアッセイ

  Universal ProbeLibrary Forward/reverse primer Probe No. (UPL) SYBR Green I Forward/reverse primer
her5 GGAGCAAAAAGACATGAGAAGG/ TCTCAAGGTTTCTAGGCTTTGATT 63 TGAAAACATACACAAATCGCACTC/ CCTCATAGAGATGCACCTGAGTTT
pax2a GGCAGCTACCCACCTCTA/ ATTTCCTGAAAAGTCGCTTCC 151 TGTGTCAGCAAAATTCTCGGA/ TTCCACAACTTTGGGCGTC
fgf8 GAAGATGGCGACGTTTGTG/ CCCTCCTGTTCATACAGATGTAAA 17 TTTACACAGCATGTGAGTGAGCA/ GGTTCGGCTGTAAAGCTGGTA
fgfr1 CTCTCAGGGGTCTCCGAATA/ GAGGTTTCCCGAGAACCAG 43 AAAGTAGAGCCGGCCGACT/ TCCACCTCGTCTTCTTCATCTG
canopy1 CCTCTTGTTTTCACGTAACGTCT/ GCCACAAGAACAAGGCAAAT 54 AGTCAAAGAAAGATGAAGCACTGTACT/ TTTTTTGGATCCGTCTGACTGA
her9 GAGCGAGAATCAACGAGAGC/ TCCAATTTAGAGTGTCTGGAGCTA 44 CCTTGGGCAGCTGAAGACTC/ GGTGCTTGACTGTCATCTCCAG
neurog1 GATTCTGCAAAACCTCAAGCA/ TCGGAGTATACGATCTCCATTGT 23 CCACTGTGCACGTCGTGAA/ CCAATGCGTCGTTAAGGTTG
pea3 CCAGCAAGTGCCTTATACTTTAGC/ TGCGTCCATGTATTTCCTTTT 147 TCCTGCAGCCACAAGCAA/ TAGATCCTCCTGCTCCTGCC
fgf4 GTGGAGAGGGGAGTTGTGAC/ TGCATTCGTTTGTGAACTGC 150 CCGGGGAAAAAAGAGATATCAG/ AAACCCAATGCCAACGTTG
hey2 CAGCGACATGGATGAAACC/ CATCTTATAAATGAACCATTGCTTTG 71 TCTTGAGCATTGGCTTCCG/ AACCAGACGGACACGGAGAG
wnt1 TGTCCTCTCTCACTGGCACA/ CGAGGATGCCACATTCACTA 77 CTCTGAAGGGGCCATTGAGT/ ACATTGTCGCTGCAGCCTC
GAD67 AAGGGAGAAGCTGCACAGG/ GTCTCCCTGTGGTTGGTAGC 157 ATGCGCTCTTCTCACCTGGT/ CAGACATGCCTTTGGTTTTGAC
elavl3 ACCCAGCTCTACCAGACAGC/ TGGTTATGGGGGAGAATCTG 131 GTCAGAAAGACATGGAGCAGTTG/ GAACCGAATGAAACCTACCCC
bactin1 TCACTCCCCTTGTTCACAATAA/ GGCAGCGATTTCCTCATC 76 CACACCGTGCCCATCTATGA/ AGGATCTTCATCAGGTAGTCTGTCAG
bactin2 AAGGCCAACAGGGAAAAGAT/ GTGGTACGACCAGAGGCATAC 56 CTGACTGACTACCTCATGAAGATCCT/ CCTTGATGTCACGGACAATTTC
gapdh AACTTTGGTATTGAGGAGGCTCT/ TCTTCTGTGTGGCGGTGTAG 114 n.d.
,h3>結論

我々のライトサイクラーとProbeFinderソフトウエアを使ったUniversal ProbeLibraryを使用したリアルタイムPCRは、ゼブラフィッシュ胚で遺伝子の正確な発現比率を測定するのに非常に有用なツールであることがわかりました。
従来は、ゼブラフィッシュ胚の遺伝子発現レベルを算定するためには、DIGまたはフルオレセイン標識RNAプローブを使ったin situハイブリダイゼーションが用いられてきました。この方法は必ずしも理想的な定量方法とは言えません。
ロシュ・ダイアグノスティックスは、上記問題点を克服可能な、短時間に、興味のある、あらゆる遺伝子のアッセイのデザインを行うことができる、高い信頼 性かつ迅速なツールとして、Universal ProbeLibraryを自信を持って皆様に紹介できるようになりました。
更に我々は、ゼブラフィッシュにおける遺伝子相対定量の成功への道を開く、3種類の潜在的リファレンス遺伝子のアッセイを確立することができました。

リファレンス
  1. Vandesompele J et al. (2002) Genome Biol 3:RESEA RCH 0034

Order INFO

 
製品名 製品番号 包装単位 希望価格
Universal ProbeLibrary Extension Set, Probes #91~#165 4 869 877 1セット ←製品番号をクリック
Universal ProbeLibrary Set, Human 4 683 633 1セット ←製品番号をクリック
Transcriptor First-strand cDNA Synthesis Kit 4 379 012 1キット(50回) ←製品番号をクリック
LightCycler® TaqMan® Master 4 535 286
4 735 536
1キット(96回)
1キット(480回)
←製品番号をクリック
LightCycler® FastStart DNA MasterPLUS SYBR Green I 3 515 869
3 515 885
1キット(96回)
1キット(480回)
←製品番号をクリック

図1:3種類の潜在的リファレンス遺伝子。
ゼブラフィッシュ胚(24hpf)由来cDNAの、1:5希釈を用いた5段階希釈の(a)bactin1, (b)bactin2, と(c)gapdhの増幅曲線

BIOCHEMICA2007NUMBER2(No107)

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