DIGラベルされたRNAプローブによるニワトリ胚のwhole mount in situ hybridization法

DIG コーナー

Whole mount in situ hybridization法は、胚発生過程での遺伝子発現部位を明らかにするのに簡便で有効な方法である。以下のプロトコールはWilkinson(1993)により発表された方法にもとづいており、マウス胚やニワトリ胚に適用可能である。

DIG標識RNAプローブ合成

DIG RNAラベリングキットのプロトコールに従い、DIG標識RNAプローブを合成する。プローブの長さは700 bp前後になるようにしている。合成されたRNAプローブが700 bpを越えるものは、700 bp程度にアルカリ加水分解して使用している(野村慎太郎、1992, 1994)。

アルカリ加水分解

●合成したRNAプローブを50μlのH2Oに溶解し、加水分解バッファー50μlを加え60℃で加温する。加水分解の時間は以下の式に従う。
 X=(Lo-Lf)/(0.11×Lo×Lf)
 X:加水分解時間(分)、Lo:転写産物の長さ(kb)、Lf:加水分解後の長さ(kb)

●反応終了後、中和バッファーを100 μl加え中和して、エタノール沈殿により加水分解産物を回収する。
 -加水分解バッファー:80 mM NaHCO3, 120 mM Na2CO3, 10 mM DTT
 -中和バッファー:0.3 M CH3COONa(酢酸ナトリウム) pH5.2, 10 mM DTT

胚の固定

●固定後は、RNA操作のため手袋着用で行う。

溶液 時間/温度 回数
4% パラフォルムアルデヒド/ PBS(当日調製) 4 ℃/ 2~16時間(一晩)  
PBS 10分 3回
25% メタノール/ PBS メタノールとPBSの混合溶液は、混合直後に細かい気泡がでるのであらかじめ作製しておく。(PBTの時も同様) 5分  
50% メタノール/ PBS 5分  
75% メタノール/ PBS 5分  
100% メタノール 10分 2回

●-20℃で保存 (2~3カ月以内の使用がのぞましい)

前処理とハイブリダイゼーション

●100% メタノール中で胚の腔所(脳胞、耳胞、心臓など)に穴を開けておく。タングステン針を使用している。

溶液 時間/温度 >回数
75% メタノール / PBT (PBT: PBS,0.1% Tween-20) 5分  
50% メタノール / PBT 5分  
25% メタノール / PBT 5分  
PBT 5分 2回
6% H2O2 / PBT 1時間  
この操作は胚にメラニン色素がある場合におこなうが、メラニン色素の有無によらず毎回行なっている。
PBT 5分 3回
10 μg/ml proteinase K / PBT 5~20分(胚の大きさにより異なる)。室温  
PBT 5分  
0.2% グルタールアルデヒド / 4% パラフォルムアルデヒド / PBT(当日調製) 20分  
PBT 5分 2回
ハイブリダイゼーション溶液 1 ml(サンプルの大きさによる) 胚が沈むまで(目安として5~10分)  
ハイブリダイゼーション溶液: 50% フォルムアミド(脱イオン済み)、5 × SSC、50 μg/ml yeast RNA, 1% SDS, 50μg/ml heparin

●プレハイブリダイゼーション
 2時間/ 65℃(ハイブリダイゼーションと同じ温度)
 -最初の1 mlを捨て、新しいハイブリダイゼーション溶液を500 μl~1 ml加える(胚が溶液に十分に浸る量が必要)。

●ハイブリダイゼーション
 12~16時間/ 65℃(温度はプローブにより異なる)
 -プローブの濃度、ハイブリダイゼーション温度などの条件は検出したい遺伝子により異なる。

プローブの洗浄

溶液 時間/温度 回数
50% フォルムアミド / 5 × SSC / 1% SDS(SSCはRNA用でなくて良い) 30分 / ハイブリダイゼーションと同じ温度 >2回
1回目の洗浄中に胚の腔所に穴を開ける(前回開けた場所と同じで良い)。
50% フォルムアミド / 2 × SSC 30分 / ハイブリダイゼーションと同じ温度 2回
TBST(10 × TBST: 1.4 M NaCl, 27 mM KCl, 0.25 M Tris-HCl pH 7.5, 1% Tween-20) 5分 / 室温 3回
20% lamb serum / TBST 2時間 / 4℃(氷上)  
抗ジゴキシゲニン抗体AP conjugate (2,000倍希釈) / 20% lamb serum / TBST 16時間(一晩) / 4 ℃  

抗体の洗浄

溶液 時間/温度 回数
TBST 5分 3回
TBST 1時間 4回
1回目の洗浄中に胚の腔所に穴を開ける(前回開けた場所と同じで良い)。5回目の洗浄として:
TBST 16時間(一晩)/ 4 ℃  

発色

●NTMT    5 分 3回
 NTMT: 100 mM NaCl、100 mM Tris-HCl pH 9.5、50 mM MgCl2、0.1% Tween-20

●NBT (4-nitro blue tetrazolium chloride) 4.5 μl/ml、BCIP (5-bromo-4-chloro-3-indolyl-phosphate) 3.5 μl/mlを10% ポリビニルアルコール(PVA) / NTMTに溶解。
 -胚が発色液にきちんと沈むようにする。
 -PVAの使用により検出感度が上がる(De Block and Debrouwer, 1993)。PVAは分子量31,000~50,000(Sigma-Aldrich)を使用している。10 % PVA/ NTMT は、PVAをNTMTに加え90 ℃で溶解した後、室温まで下げて使用する(発色前に作製)。PVAの使用により大きな腔所がある胚や発生初期の胚の場合には変形が起こってしまうことがあ る。このような場合にはPVAを使用していない。
 -NBT: 75 mg/ml になるように70 % dimethylformamideに溶解, BCIP: 50 mg/mlになるようにdimethylformamideに溶解。

●暗所で発色。
 -30分間静置。これ以降、適宜観察。
 -バックグランドは70~100 %のエタノール中で脱色が可能。そのため、やや濃い目に発色しておく方が良い。
 -whole mount in situハイブリダイゼーションをおこなった標本から切片を作製する場合には濃い目の発色をしておく。

●PBSで発色液を洗浄。(発色の停止)
 -このまま4 ℃保存。または4% PFA/ PBSで固定(1~2時間)後、PBSで洗浄し4 ℃保存。

●必要に応じてバックグラウンドの脱色を70~100 %のエタノール中で行なう。
 -エタノール濃度は少しずつ高くしていく方が組織にやさしい。脱色終了後は、再び少しずつアルコール濃度を下げていく。

●PBSで保存(4 ℃)。

図1:ニワトリ2日胚でのsmooth muscle α actin mRNAの検出。
体節、大動脈、心臓の一部に発現が見られた。

図2:ニワトリ3日胚でのtbx2 mRNAの検出。
鰓弓、心臓、肢芽、胴部の腹側領域に発現が見られた。

著者:山岸 敏之 先生
 埼玉医科大学 医学部 解剖学

参考文献

  1. 野村慎太郎. 脱アイソトープ実験プロトコール. p72-82. 秀潤社.  1994.
  2. 野村慎太郎 他. 細胞工学ハンドブック 実験医学別冊. p214-221. 羊土社. 1992.
  3. Wilkinson DG. In In situ hybridization: a practical approach. (Wilkinson DG, ed), pp.75-83. IRL Press, New York. 1992.
  4. De Block M and Debrouwer D. Anal Biochem, 215, 86-89. 1993.
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    関連製品名 製品番号 包装単位 希望価格
    DIG RNAラベリングキット 1 175 025 1キット ←製品番号をクリック
    AP標識抗DIG抗体、Fabフラグメント 1 093 274 150 U(200μl) ←製品番号をクリック
    NBT 1 383 213 3 ml ←製品番号をクリック
    BCIP 1 383 221 3 ml ←製品番号をクリック
    BIOCHEMICA2007NUMBER2(No107)

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