ユニバーサル プローブライブラリーを用いたリアルタイムPCRによるトウモロコシのmRNAの定量解析

Gene Expression コーナー

Ina Horst and Christoph Peterhansel*
RWTH Aachen, Institute for Biology I, Aachen, Germany
*Corresponding author: cp@bio1.rwth-aachen.de

ユニバーサル プローブライブラリー(UPL)はlocked nucleic acid(LNA)を用いたリアルタイムPCRのための測定システムです。 我々は二つの検出プラットフォームにおいてトウモロコシの転写産物のUPLを用いた場合の遺伝子定量の効率を評価しました。その結果、UPLはDNA結合 型色素や既存のプローブを用いたアッセイの魅力的な代替法であることが示されました。

イントロダクション

定量的リアルタイムPCR(以下qPCR)は遺伝子発現レベルを測定する重要な方法で、従ってin vivoにおける遺伝子機能について の情報を得ることができます。一般的にqPCRにはDNA結合型色素(例えば、SYBR Green I)や配列特異的なプローブを用いる二つの異なる方法があります。蛍光色素を用いるアッセイにおいて、DNA結合型色素は二重鎖DNAに結合し、PCRに おいて蓄積される非特異的産物やプライマーダイマーのような二重鎖DNAをも検出します。プローブを用いるアッセイにおいて、蛍光標識された配列特異的な プローブは、プライマー結合部位間の増幅産物にアニールします。 従って、プライマーとプローブの両者の結合部位を含む正しい増幅産物からのみシグナルを発生します。今までのプローブを用いたアッセイの欠点は蛍光色素を 用いたアッセイに比べ自由度が低い点でした。ユニバーサル プローブライブラリーはプローブアッセイからこの欠点をなくすように設計されています。 このライブラリーは僅か8-9ヌクレオチドから成る、165種類の異なるプローブから構成されています。プローブは”locked nucleic acids”を含んでいるため[1]、その短いオリゴ長にもかかわらず標準的なアニーリング温度条件にて結合部位に効率的にアニールすることができます。 他方、この小さなプローブサイズであるが故にトランスクリプトーム中の複数の部位に結合することができ、1つのプローブを用いて異なるmRNAを測定する こともできます。アッセイの特異性はプライマーとプローブの組み合わせによってもたらされています。ユニバーサル プローブライブラリーは完全なプローブセットか生物種に特化したセットのいずれかで入手することができます。 オンラインのアッセイデザインセンター(www.universalprobelibrary.com)を利用して、ヒト、ラット、マウス、ショウジョウバエ、線虫、シロイヌナズナ、霊長類を初め、最近では、トウモロコシ、ゼブラフィッシュ、ライスのイントロンスパニングアッセイをデザインすることができます。

ここに、我々は既存のSYBR Green Iのアッセイと新規にデザインしたユニバーサル プローブライブラリーのアッセイとを比較することで、トウモロコシのユニバーサル プローブライブラリーの品質を評価しました。さらに、キャピラリータイプのLightCycler®システムとABI PRISM® 7000システムの2つの定量的リアルタイムPCRプラットフォームの性能の違いについても調べました。

材料と方法

RNA単離と逆転写

RNAは100 mgの地上葉からTRIZOL-ブロモ-クロロプロパン法[2]を用いて単離されました。DNAの混入を取り除くため、1μg RNA当たり1 UのDNase Iと終濃度2 mMのMgCl2を添加し、37℃で15分間インキュベートし、その後、変性ステップとして70℃で15分間インキュベートしました。cDNA合成は約1μgのトータルRNAと50 pmolのランダム9-merプライマーを用いて行いました。

定量的PCR

SYBR Green Iを用いたLightCycler®システムでのqPCRは、LightCycler® FastStart DNA MasterPLUS SYBR Green Iを使用し、これに対し、SYBR Green Iを用いたABI PRISM® 7000システムでのqPCRは、FastStart SYBR Green I Master(Rox)を使用して行いました。 ユニバーサル プローブライブラリーによる定量は、各々LightCycler® TaqMan® MasterとFastStart TaqMan® Probe Master(Rox)を使用して行いました。SYBR Green Iアッセイは、300 nMのプライマーを用いて行い、ユニバーサル プローブライブラリーアッセイは、200 nMのプライマーと100 nMのプローブを用いて行いました(表1)。その他の総ての反応条件は使用説明書の記載に従って行いました。

ABI PRISM® 7000システムを用いた場合の増幅条件は、初期変性ステップとして95℃で10分間、95℃で15秒間と60℃で1分間を1サイクルとして40サイクル行いました。LightCycler®シ ステムを用いた場合の増幅条件は、SYBR Green Iのアッセイについては、初期変性ステップとして95℃で10分間、95℃で20秒間と60℃で20秒間と72℃で20秒間を1サイクルとして45サイク ル行い、UPLアッセイについては、初期変性ステップとして95℃で10分間、95℃で10秒間と60℃で30秒間と72℃で1秒間を1サイクルとして 45サイクル行いました。総てのSYBR Green Iのアッセイでは60℃から95℃までの融解曲線分析を行いました。

結果と論考

我々はユニバーサル プローブライブラリーがトウモロコシの転写産物の検出に適切かどうかを検討するための代表的な集合指標群として、トウモロコシ(Zea mays) の20種類の異なるmRNA配列に対して、ユニバーサル プローブライブラリーを用いたアッセイをデザインしました。調査されたRNAの半数は光合成機構に関連する酵素をコードしているため、緑色の葉組織におい ては高く発現されていました。その他のRNAはデータベース上に存在するトウモロコシのRNA配列からランダムに選択しました。 2つの異なる測定原理の性能を比較するため、最適化されたSYBR Green Iアッセイを用いました[3]。

オンラインのアッセイデザインセンター(www.universalprobelibrary.com)上のProbeFinderソフトウェアに配列を入力するのは非常に簡単で、デザインされたアッセイの情報は分かりやすく列挙されていました。

総てのアッセイは、トウモロコシcDNAの1:4の段階希釈系列を用いて行いました。 デザインされた20種類のアッセイ中、15種類のアッセイにおいて、最適化をすることなく非常に優れた性能が示されました。希釈系列から作成された標準曲 線は、その発現レベルから予想された希釈レンジにおいて、完璧な傾きを示しました。うまくいかなかった5種類のアッセイ中の3種類については、ゲル解析に おいてPCR産物は増幅されていましたが、プローブによる検出ができていませんでした。残りの2種類のアッセイについては、増幅が検出されませんでした。 これはおそらく用いた組織において遺伝子発現がなかったことによると思われます。

この成功率はユニバーサル プローブライブラリーアッセイを用いて他の生物種においてデザインされた場合の95-99%に比べると低いです。この結果はトウモロコシのゲノム配列がい まだ完全ではないこと、そして、プローブとプライマーが未知の転写産物の未知配列に結合する可能性によって説明できるかもしれません。

一般的に、ユニバーサルプローブライブラリーのクロッシングポイントは若干遅れますが、感度と特異性はSYBR Green Iのアッセイに近いものでした。主な利点は図1に示されています: 両方のアッセイにおいて、発現量の高い光合成に関連するホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPC)のcDNAは6個総てのcDNA希釈系列か ら増幅が観察されました。しかしながら、SYBR Green Iのアッセイではネガティブコントロールにおいて増幅シグナルが観察されましたが、ユニバーサル プローブライブラリーでは観察されませんでした。融解曲線分析により、ユニバーサル プローブライブラリープローブでは検出されなかったSYBR Green Iのアッセイでのネガティブコントロールにおける増幅シグナルはプライマーダイマーによるものであることがわかりました。これはゲル電気泳動によっても確 認されました(データ未掲載)。

我々はさらにユニバーサル プローブライブラリーの2つのqPCRプラットフォーム、LightCycler®システムとABI PRISM® 7000システムにおける性能を比較しました。図2は、中程度に発現している光合成に関連する酵素であるホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ (PEPCK)に対するプローブ-プライマーの組み合わせによる特異性を示す典型的な結果を示しています。ユニバーサルプローブライブラリーアッセイは両 方のシステムにおいて良い結果が得られました。LightCycler®システムを用いたとき通常クロッシングポイントは若干速く、これはより高感度であることを示しています。

結論

アッセイデザインセンターと共に用いるユニバーサル プローブライブラリーは、トウモロコシmRNA中の転写産物の定量検出において、簡単で効果的な新しい選択肢を提供します。

リファレンス

  1. Braasch DA, Corey DR (2001) Chem Biol 8:1-7
  2. Chomczynski P, Mackey K (1995) Anal Biochem 225:163-164
  3. Hahnen S et al. (2003) Photosynthesis Res 75:183-192

Order INFO

製品名 製品番号 包装単位 希望価格
LightCycler® 1.5インスツルメント 4 484 495 1台 ご照会
LightCycler® 2.0インスツルメント 3 531 414 1台 ご照会
LightCycler® TaqMan® Master 4 535 286
4 735 536
96回/20μ反応
480回/20μ反応
製品番号をクリック
FastStart TaqMan® Probe Master (ROX) 4 673 450
4 673 468
4 673 476
100回/50μ反応
500回/50μ反応
2000回/50μ反応

製品番号をクリック

FastStart SYBR Green I Master (ROX) 4 673 514
4 673 522
200回/50μ反応
2000回/50μ反応
製品番号をクリック
LightCycler® FastStart DNA MasterPLUS SYBR Green I 3 515 869
3 515 885
96回/20μ反応
480回/20μ反応
製品番号をクリック
Universal Probe Library Set, Human #1-#90 4 683 633 1 set(90プローブ)* 製品番号をクリック
Universal Probe Library Extension Set, Probe #91-#165 4 869 877 1 set(75プローブ)* 製品番号をクリック
*各250回/50μ反応
表1: アッセイ情報
Transcript Assay type Forward primer Reverse primer Probe No.
Phosphoenolpyruvate carboxylase (PEPC) SYBR Green I AGAACTCAAGCCCTTTGGGAAGC GTCGGCGAACTCCTTGGACAGC -
PEPC UPL AAGGACATCACTGACGACGA CTGAAGGCTGCTTGGATCTC 128
Phosphoenolpyruvate carboxykinase (PEPCK) UPL ACAATGGCGTGTCCAACAT ACCACGTTCTCCAGCACAG 75

図1:PEPC mRNAに対するUPLアッセイとSYBR Green Iアッセイの比較。
(a)cDNAの6段階の希釈系列とネガティブコントロールにおけるSYBR Green Iアッセイの増幅曲線。
(b)cDNAの6段階の希釈系列とネガティブコントロールにおけるUPLアッセイの増幅曲線(Display mode F1/F3)。
(c)SYBR Green Iアッセイでの融解曲線。 総ての実験は3重測定で実施されました。

図2:2つの異なるプラットフォームにおけるPEPCK mRNAに対するUPLアッセイの比較
(a)LightCycler®システムでのPEPCK mRNAの増幅曲線(Display mode F1/F3)。
(b)ABI PRISM® 7000システムでのPEPCK mRNAの増幅曲線。

BIOCHEMICA2007NUMBER1(No106)

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