LightCycler® 480リアルタイムPCRシステム:相対定量法に革新的な解決

Gene Expression コーナー

Gudrun Tellmann and Oliver Geulen
Roche Applied Science, Penzberg Germany

イントロダクション

現在、遺伝子発現解析は科学研究分野において極めて重要です。多くの遺伝学研究者は定量リアルタイムPCRが、迅速で高感度な遺伝子発現レベル測定方法 のゴールドスタンダードであると感じています。しかし、総ての定量リアルタイムPCRテクノロジーが遺伝子発現解析に適しているわけではありません。
定量リアルタイムPCR法には多くの種類が存在し、各々はその必要条件や複雑性、信頼性によって特徴づけられています。しかし、これらの方法は、主に2 つの解析テクノロジー-絶対定量法と相対定量法-に分類できます(図1)。解析の複雑性や、最終的な結果に求められる形式に合った方法を選択して下さい:

→絶対定量法は単一の目的配列を定量する方法で、その結果は絶対値として表されます(例, ウイルスロード-コピー数/ml)。このようなアッセイはウイルス学や微生物学のような分野において日常的に行われます。

→他方、相対定量法は同じサンプル中の二つの異なる配列(例, 目的遺伝子(GOI)と、もう一つの遺伝子)を比較する方法で、その結果はこれらの目的遺伝子の比率として表されます。比較するためのもう一つの遺伝子 は、対象実験中の総ての条件で一定に発現をしているリファレンス遺伝子[定常的に発現している遺伝子(ハウスキーピング遺伝子)]を用います。このリファ レンス遺伝子は内在性コントロールとしても知られ、サンプル間差を補正するために用いられます。このような解析は癌研究などの分野において有用です。

遺伝子発現研究では、目的遺伝子のスタート地点(例, 正常検体や未処理検体)と様々な時間経過における遺伝子発現プロファイルの変化(例, 羅患や薬剤処理後のタイムコースで、どの程度発現量が変化するか)の測定がよく行われています。相対定量は、少なくとも二つの状況下(例, 正常検体/羅患検体、または薬剤など未処理検体/処理検体)における、目的遺伝子の発現様式を容易に比較することが出来るため、遺伝子発現や遺伝子投与量 測定に最適なテクニックです。

PCR効率:PCR定量の核心

総ての定量リアルタイムPCRアプリケーションと、その総ての相対定量の計算の信頼性はPCRの品質に依存します。

PCRによる増幅は酵素触媒反応によって行われます。総ての酵素プロセス、さらに総ての生体触媒反応がそうであるように、得られるPCRもその各々の品 質は異なります。PCRの全体的な品質は「PCR効率」(E)を計算することで評価することができます。PCR品質における最も高い効率は2であり (E=2)、これは総てのPCRサイクルにおいて目的分子数が2倍になることを意味しています。

昔の時計が沢山の小さな歯車の影響を受けて動作していたように、PCRも沢山のファクターに依存しています。PCRが最大限の効率でなされるためには、 プロセスに影響する一つ一つの総てのファクター(例, サンプル調製, 核酸(NA)の精製やPCR前の様々なステップなど)を最適化しなければなりません。ご存知の通り、多くのPCRは2よりも低い効率で行われています (E<2)。

ここで、相対定量アッセイは二つのPCRを比較することで行われることを思い出しましょう(例, 同一サンプルを用いた目的遺伝子とハウスキーピング遺伝子の増幅)。しかし、二つの異なるPCRは同一のPCR効率ではないかもしれません。このような場 合、これらPCRの比較に基づく解析は全く正確性を欠くものとなるでしょう。

さらに、総ての増幅反応はその反応プロセス全体に渡り、効率が同じではありません。計算式によって記述されるような直線回帰:(Nn=N0×2n)に従うことはないでしょう。これは最終的な結果にも影響を与えます。

明らかに、これらの効率に対する考慮はアッセイの正確性に影響するため、与えられた実験系に最も適切な相対定量法を選択するときに考慮しなければなりません。

2つの相対定量法

新発売のプレートタイプ(96/384-wellフォーマット)のリアルタイムPCRシステム、LightCycler® 480は、正確な相対定量(例, ΔΔCt法, メソッド)のために、PCR効率の違いの問題を解決する、ソフトウエアを提供します。LightCycler® 480の相対定量ソフトウエアは研究の迅速なトラッキングを容易にするよう、自由度が高く設計されています。

ΔΔCt法

ΔΔCt法は初期の相対定量実験に用いられてきた方法であり、今日でも未だに迅速で簡単な遺伝子解析法として提供されています。しかしながら、この方法 は本来この定量法に付随するある仮定を満たしているとき(例, 目的遺伝子とリファレンス遺伝子の両方のPCR効率が最適化され、かつ、同一でなければならない)にのみ、正確な相対定量結果が得られます。ΔΔCt法の 計算では、両者のPCR効率を2、すなわち各々のPCRサイクルで分子数が2倍になると仮定しています(図2a)。

もし、目的遺伝子とリファレンス遺伝子のPCR効率が一致せず、また最適化されていない場合、ΔΔCt法では誤った遺伝子発現データを与えることになり ます。このような場合、実際のPCR効率値に基づいた方法(例, Roche Applied Scienceが提供するメソッド)が、より正確なデータを提供することとなります。

メソッド

Roche Applied Scienceが提供するメソッドは、同一実験内、または実験間の目的遺伝子とリファレンス遺伝子のPCR効率の違いを補正することができるので、より正確な相対定量データを提供することができます。

メ ソッドは、いわゆる相対的スタンダード(図2bと図2c)を用いて、目的遺伝子とリファレンス遺伝子の増幅効率の違いを分析します。これらのスタンダード は単一サンプルの段階希釈であり(例, 希釈なし、1:10、1:100、など);これらの濃度は相対的な単位(例, 1、0.1、0.01、など)で表されます。これらサンプルの希釈系列でスタンダードカーブを作成することで、メ ソッドでは、時間と手間のかかる人工的に作成あるいはクローニングされたスタンダードの調製や、各々の絶対値での測定を省くことができます。さらに、相対 的スタンダードは、通常のサンプル材料を含んでいるので、未知サンプルに最も近いPCR効率を提供することができます。

さらに、メ ソッドはラン間差(例, 試薬の化学的な違いに起因するもの)も補正することができます。この補正には、一つのサンプル(例, 相対定量スタンダードの内の一点など)を目的遺伝子とリファレンス遺伝子のアッセイ間のキャリブレーターとする必要性があります。これらのアッセイ間の キャリブレーターを一連の研究中の総てのランに繰り返し用い、共通の評価基準を与えることで、一連の総ての実験が比較できるようになります。

結論

新しいLightCycler® 480システムは絶対定量や相対定量データを算出するために、洗練されたソフトウエアアルゴリズムを備えています。遺伝子発現や遺伝子投与量研究のため、自由度の高いLightCycler® 480の相対定量ソフトウエアは複数の選択肢を提供します。ΔΔCt法やRoche Applied Scienceのメソッドでは個々の実験系のPCR効率に応じて信頼できる遺伝子発現データを得ることができます。

Order INFO

製品名 製品番号 包装単位 希望価格
LightCycler® 480
インスツルメント
4 640 268
4 545 885
1台(96ウェル)
1台(384ウェル)
ご照会
LightCycler® 480
相対定量ソフトウエア
4 727 851 1個
製品番号をクリック
LightCycler® 480
マルチウェルプレート96
4 729 692 5×10プレート
製品番号をクリック
LightCycler® 480
マルチウェルプレート384
4 729 749 5×10プレート
製品番号をクリック
LightCycler® 480
プローブマスター
4 707 494
4 887 301
5×1 ml
10×5 ml
製品番号をクリック
ユニバーサルプローブライブラリーセット
    ヒト
    マウス
    ラット

 

4 683 633
4 683 641
4 683 650

1セット
(90プローブ)
製品番号をクリック
トランスクリプター
リバーストランスクリプターゼ
3 531 317
3 531 295
3 531 287
250 U(25回)
500 U(50回)
2000 U(200回)
製品番号をクリック

図1:種々のPCR定量原理の概要。詳細な情報についてはwww.lightcycler.comをご参照ください。

図2:LightCycler® 480を用いた同一ランでの2つの異なる相対定量解析。

RNAはトランスクリプター逆転写酵素を用いて逆転写されました。目的のcDNA配列はLightCycler® 480 Probes Master試薬で増幅し、Universal ProbeLibraryプローブで検出しました。本図は未知サンプルとキャリブレーターサンプル(緑線)での典型的な目的遺伝子とリファレンス遺伝子(赤線または青線)を示しており、一方は(a)ΔΔCt法で、他方は(b)メソッドで解析しました。PCR効率(E)=2である仮定に基づいているデータ(a)に反して、メ ソッドによるデータは目的遺伝子(淡赤色, E=2.021)とリファレンス遺伝子(淡青色, E=1.966)の段階希釈から得られた各々の反応の実際のPCR効率に基づいています。(b)の最終的な結果は目的遺伝子(未知サンプルとキャリブレー ター)とリファレンス遺伝子(未知サンプルとキャリブレーター)のCp値から自動的に計算され、これらの結果は(C)のように表現されます。

BIOCHEMICA2006NUMBER4(No105)

当社のカタログに掲載する製品は、ライフサイエンス分野の研究のみを目的としています。特に明記のない限り、診断用途目的には使用できません。カスタムバイオテック製品は、特に明記のない限り工業原料用のみを目的としています。
本ウェブサイトでは、幅広い利用者を対象とした製品情報を掲載しています。お住まいの国では利用できない製品、もしくは認可を受けていない製品の詳細情報が掲載されている場合もあります。それぞれの居住国における正当な法的手続や規制、登録、慣習法を満たしていない可能性のある情報の閲覧に関しては、当社は一切の責任を負いません。

ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社 〒105-0014 東京都港区芝2-6-1