FuGENE® HDトランスフェクション試薬:ヒトES細胞における高効率遺伝子導入試薬

Gene Expression コーナー

京都大学再生医科学研究所 附属幹細胞医学研究センター 霊長類胚性幹細胞研究領域
長谷川光一、安田晋也、末盛博文

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製品名 製品番号 包装単位 希望価格
FuGENE® HD
トランスフェクション試薬
4 709 691
4 709 705
4 709 713
0.4 ml
1 ml
5×1 ml

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イントロダクション

ヒトES細胞の応用研究において、遺伝子改変技術は様々な場面で強力なツールと成りうる。例えば、特定の遺伝子の発現制御による分化誘導の効率化やマー カー遺伝子や薬剤耐性遺伝子による目的細胞種の分取、トレーサー遺伝子による移植後のES細胞由来細胞の追跡、場合によっては移植した細胞のみを選択的に 死滅させることなども考えられる。しかし、一般的にヒトES細胞に対する遺伝子導入効率は低い。また、ヒトES細胞に使用する遺伝子導入試薬には高導入効 率であることだけではなく、ES細胞とES細胞の安定した培養に必要なフィーダー細胞に対して低毒性であることや、ES細胞の未分化性を阻害しないこと、 また医療応用を考えた場合には動物由来成分を含まないことなどが要求される。
今回、我々は30種以上の遺伝子導入試薬について、ヒトES細胞に対する細胞毒性と遺伝子導入効率を調べた。その結果、FuGENE® HDが最も導入効率が高く、またES細胞に対して低毒性であるばかりでなく、フィーダー細胞に対する顕著な毒性も見られなかった。

材料と方法

ヒトES細胞

ヒトES細胞はKhES-1細胞[1]を用いた。ヒトES細胞は完全に解離してしまうと生存率が著しく低下するため、100細胞程度の細胞塊になるように解離懸濁し、それぞれ105細 胞をMatrigel (BD Biosciences, CA)コートした35mmディッシュに播種した。また、ES細胞に対する遺伝子導入効率を検討するにあたって、フィーダー細胞への遺伝子導入等のノイズを 無くすために、細胞培養にはフィーダー細胞は用いず、ES細胞の未分化性を維持するためにフィーダー細胞の培養上清を用いた。播種後に24時間培養したの ち、遺伝子導入実験を行った。
また、ヒトES細胞をより安定に培養するためにはフィーダー細胞上での培養が必要となるため、フィーダー細胞上に播種したヒトES細胞に対しても遺伝子導入を行い、フィーダー細胞に対する毒性とES細胞の未分化性への影響についても検討した。

遺伝子導入

遺伝子導入実験には、我々が作製したpCAG-GFP-SV40-Neoプラスミド [2]を用いた。FuGENE® HDについては2μgのプラスミドDNAと6μlのFuGENE® HDを100μlのOpti-MEM (Invitrogen, CA)中で15分間複合体形成を行い、それを培地に直接添加して導入を行った。また、FuGENE® 6については1μgのプラスミドDNAと3μlのFuGENE® HDを97μlのOpti-MEM中で15分間複合体形成後に導入した。また、その他の試薬については、それぞれの遺伝子導入試薬の標準的なプロトコールに従って遺伝子導入を行った。FuGENE® HDもしくはFuGENE® 6を用いた導入では24時間遺伝子導入を行い、その他の試薬については24時間もしくは標準プロトコールに従った時間で遺伝子導入をおこなった。遺伝子導入後には培地交換を行い、培養を続け、導入開始から48時間後に細胞を解離回収し解析を行った。

遺伝子導入効率と細胞毒性の解析

遺伝子導入した細胞はトリプシンEDTAで解離し、GFP陽性細胞の割合をFACS Calibur (BD Biosciences, CA)を用いて解析し、遺伝子導入効率として評価した。細胞毒性については、遺伝子導入試薬を添加していないディッシュとの総細胞数を比較することで各 ディシュにおける生存率を算出して評価した。また、導入効率の高かった試薬については三回以上導入実験を行い、再現性を確認した。

結果と考察

ヒトES細胞に対して高効率の遺伝子導入が可能で、かつ低毒性の導入試薬を得るために、37種類の導入試薬について解析を行った。
ヒトES細胞に対する効率を正確に測定するために、フィーダー細胞を用いない培養系[3]でアッセイを行った。その結果、ヒトES細胞に対する遺伝子導入効率はFuGENE® HDを用いた場合が最も高く、次いでFuGENE® 6であった(図 1A)。また、ヒトES細胞に対する細胞毒性については、FuGENE® HD、FuGENE® 6共に70%程度の生存率をしめし、他の試薬と比較しても顕著な細胞毒性は認められなかった(図 1B)。このことから、FuGENE® HDはヒトES細胞に対して、低毒性でかつ高遺伝子導入効率の試薬であることが分かった。
導入遺伝子の発現様式と導入された細胞の形態についても検討を行った。他の試薬を使用した場合はES細胞のコロニーの周辺部のみにしか導入遺伝子が高発現した細胞は認められない場合がほとんどであったのに対し、FuGENE® HDでは比較的コロニーの中央部にも導入遺伝子を高発現した細胞が認められた。このことから、FuGENE® HDは高い遺伝子導入効率であるばかりでなく、比較的均一に遺伝子導入可能であることが分かった(図 2)。解離等の物理的ダメージに弱く、細胞塊として扱うことを要求されるヒトES細胞において、コロニー内の細胞の位置によらず遺伝子導入が可能なFuGENE® HDは非常に有効な遺伝子導入試薬であると考えられた。また、FuGENE® HDによる遺伝子導入後の細胞に顕著な形態の変化は認められず、FuGENE® HDはヒトES細胞の未分化性に対して影響を与えないことも示唆された。
次に、ヒトES細胞を安定に培養するために必要なフィーダー細胞に対する細胞毒性を調べたところ、他の遺伝子導入試薬に比べてFuGENE® HDによるフィーダー細胞に対する毒性はほとんど認められなかった(図 3)。このことから、FuGENE® HDはヒトES細胞に培養系に対してほとんど影響を与えないことが示唆された。

結論

今回調べた多種の遺伝子導入試薬のなかで、FuGENE® HDは最も遺伝子導入効率が高く、均一な遺伝子導入が可能な試薬であった。また、ヒトES細胞とその支持細胞であるフィーダー細胞に対して顕著な細胞毒性 を示さず、ヒトES細胞の未分化性の維持にも影響を与えなかった。これらの結果から、ヒトES細胞への遺伝子導入において、FuGENE® HDは優れた遺伝子導入試薬であることが示された。

リファレンス

  1. Suemori H et al. (2006) Biochem Biophys Res Commun 345: 926-932
  2. Niwa, H et al. (1991) Gene 108: 193-199
  3. Xu C et al. (2001) Nat Biotechnol 19: 971-974
図1:ヒトES細胞(KhES-1株)における各遺伝子導入試薬による遺伝子導入効率(a)と48時間後の生存率(b)。
図2:遺伝子導入開始から24時間後のヒトES細胞コロニーにおける細胞形態と導入したGFPの蛍光。
FuGENE® HDによって遺伝子導入した場合、形態的な変化は認められず、GFP陽性細胞の割合が高く、コロニーの中心部分にも強い蛍光を発する細胞が観察された。
図3:フィーダー上のヒトES細胞への遺伝子導入。
導入開始から24時間後に対照試薬ではフィーダー細胞に対してダメージが観察され、細胞数の低下と萎縮した形態の細胞の割合の増加が認められた。また、フィーダー細胞へのダメージによると考えられるES細胞の増殖の抑制が観察された。それに対して、 FuGENE® HDによるフィーダー細胞ならびにヒトES細胞への顕著な影響は観察されなかった。


BIOCHEMICA2006NUMBER4(No105)

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