FuGENE HDトランスフェクション試薬を使用したヒトHL-60前骨髄球性白血病T細胞株のトランスフェクション条件の至適化

Protein Expression コーナー

James B. Olesen and Elizabeth Gough
Department of Biology, Ball State University, Muncie, IN, USA

イントロダクション

トランスフェクションは様々なタイプの分子(プラスミドDNA、RNA、siRNA、miRNA)を真核細胞株に導入するために、一般的に行われていま す。ひとたび導入されると、これらの分子は一過性あるいは安定的に発現されます。トランジェントなトランスフェクションの場合、分子は宿主のゲノムには組 み込まれずに、トランスフェクション後、約48時間から96時間の間のみ発現されます。ステーブルなトランスフェクションでは、遺伝材料はゲノムに組み込 まれ、恒常的に発現されます。多くの試薬と方法が存在しますが、どの方法が最も適しているかを先見することが重要となります。トランスフェクション操作法 は大きく以下のように分類されます;1)マイクロインジェクションやエレクトロポレーションのような機械的/物理的方法、2)リン酸カルシウムや DEAE-デキストランなどを使用した化学的方法、3)リポソームや他のカチオン種を使用する脂質法、4)レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイル スなどのキャリアーを使用するウイルス法などがあります。それぞれの方法は利点と欠点をそれぞれ持ち、そのデリバリー効率は細胞株により変動します。ここ では、浮遊細胞、もっと限って言えば、HL-60前骨髄球性白血病細胞株でのトランスフェクション効率がその興味の対象です。浮遊細胞はその性質上、トラ ンスフェクションが困難で、論文ではリン酸カルシウム法[1]、レトロウイルスによるトランスフェクション[2]、リポソーム法[3,4]、エレクトロポ レーション[5]が使用されています。これらの方法を比べた場合、浮遊細胞のトランスフェクションにはエレクトロポレーションが第一の選択肢のように思え ます。しかし、この方法は高価で、至適化にも問題があります。
以前、我々の研究室でHL-60細胞のトランスフェクションを試みたときに、いくつかの脂質をベースとした試薬で成功しなかったので、我々は FuGENE HDのトランスフェクション効率を測定したいと思いました。トランジェントおよびステーブルなプラスミドDNAのトランスフェクションがレポータージーン (GFP)の発現と比較され、選択マーカー(ネオマイシン耐性)が評価されました。

材料と方法

トランジェントなGFPトランスフェクションと評価

トランスフェクションの前に、24ウェルプレートの各ウェルの0.5 ml RPMI + 10% ウシ増殖血清(BGS)中に500,000個の細胞を播種しました。トランスフェクションコンプレックスは5 mlのポリスチレンチューブ中で、6種類の試薬/DNA比(3:2、4:2、5:2、6:2、7:2、8:2)を調製しました。各比率において、2μgの プラスミドDNA(GFP)、100μlの無血清、抗生物質フリーのRPMIと適当量のFuGENE HD量を室温で組み合わせました。15分間のインキュベーションの後、様々な量のトランスフェクションコンプレックス(10μl、20μl、30μl、 40μl)をウェルに加えました。細胞を更に48時間インキュベートし、各ウェルの内容物をマイクロ遠心管に移し、1000 rpmで5分間遠心しました。過剰の培地を、培地とペレットの比率が約2:1になるように除去しました。各ペレットを再懸濁し、50μlの細胞懸濁液をス ライドに移し、蛍光顕微鏡で観察し、80個のトータル細胞中の蛍光細胞数を記録しました。

表1:トランジェントトランスフェクションのデータ。
HL-60細胞はGFP発現プラスミドで一過性にトランスフェクションされ、蛍光細胞数を数えました。6種類の比率と4種類のトランスフェクションコンプレックス量を評価しました。パーセントの数値は80個の細胞中の蛍光細胞数を表しています。
比率 加えたコンプレックス量(μl) 蛍光細胞 蛍光(%)
8:2 10
20
30
40
14/80
14/80
11/80
24/80
17.5
17.5
13.8
30
7:2 10
20
30
40
6/80
3/80
2/80
10/80
7.5
3.8
2.5
12.5
6:2 10
20
30
40
13/80
16/80
3/80
30/80
16.3
20
3.8
37.5
5:2 10
20
30
40
26/80
19/80
30/80
26/80
32.5
23.8
37.5
32.5
4:2 10
20
30
40
32/80
10/80
16/80
34/80
40
12.5
20
42.5
3:2 10
20
30
40
23/80
20/80
29/80
38/80
28.8
25
36.3
47.5

TAL1/LMO1のステーブルトランスフェクション

HL-60細胞を上述の通りに播種しました。4種類の実験集団を作製するために、TAL1(P/.2)あるいはLMO1(L1)遺伝子とネオマイシン耐 性遺伝子のcDNAを含むプラスミドDNAとネオマイシン耐性遺伝子のみを持つ空のコンストラクト(P)を使用しました。一種類のプラスミド(P)による 単一のトランスフェクションを2μgのDNAで、コトランスフェクションの組み合わせでは2種類のプラスミドをそれぞれ1μg、トータル2μgの DNA(P+L1, P/.2+P, P/.2+L1)を使用しました。コンプレックスは3:2と4:2の比率で無血清、抗生物質フリーの培地中で調製しました。短いインキュベーションの後、 各ウェルに40μlのコンプレックスを加えました。細胞は48時間インキュベートされ、ジェネティシン(1000μg/ml)が培地に加えられました。選 択の13日後、トリパンブルー排除細胞を計測し、各集団の増殖と生存活性を評価しました。

結果と考察

条件を至適化し、高いトランスフェクション効率を達成するために、GFP発現プラスミドを使用したトランジェントなトランスフェクションを行いました。 FuGENE HDトランスフェクション試薬の説明書に従い、トランスフェクションコンプレックスのシリーズを調製し、様々な量のコンプレックスを個々のウェルに加えま した。細胞の蛍光を評価したとき、6:2、7:2、8:2の比率で、10μl、20μl、30μlの添加物が作成されましたが、3:2、4:2、5:2の 比率に比べ蛍光細胞(%蛍光)がより少なくなりました(表1)。より高い希釈物は2個(2.5%)から16個(20%)の蛍光細胞と変動し、より低い希釈 物は10個(12.5%)から32個(40%)の変動でした。また、6:2、7:2、8:2の比率で10μ、20μl、30μlを添加した場合を平均した とき、それぞれ、16.3%、4.6%、13.4%でした(表1)。それに比べ、3:2、4:2、5:2の比率で10μ、20μl、30μlを添加した場 合は、それぞれ31.3%、24.2%、30%でした。興味深いことに、40μlのコンプレックスに暴露された細胞はすべての比率において、より高い傾向 を計測しました(表1)。これらは12.5%(7:2)から40%を超える値(4:2で42.5%、3:2で47.5%)まで変動していました。
上記の知見より、ステーブルなトランスフェクション実験を3:2と4:2の比率と40μlのコンプレックスで行いました。選択の最後で、4種類の集団よ りの細胞計測は、4:2の比率よりも3:2の比率のサンプル中でより多くの活性細胞が存在することを明らかにしました(表2)。P/.2+L1集団におい て、細胞数の違いは6%でした。Pあるいはコントロール集団では12.5%、P+L1集団では23.3%の違いでした。P/.2+P集団では最終的に 69%の細胞数の違いでした。

表2:ステーブルトランスフェクションのデータ。
HL-60細胞を、ネオマイシン耐性遺伝子(P)、ネオマイシン耐性遺伝子とTAL1(P/.2)やLMO1(L1)を持つ様々なプラスミドの組み合わせで安定的にトランスフェクションしました。生存細胞数は各比率毎に、各細胞群での細胞数/mlで計算しました。
細胞群 比率 細胞数/ml
P 3:2
4:2
2.4×105
2.1×105
P+L1 3:2
4:2
3.0×104
2.3×104
P/.2+P 3:2
4:2
1.7×105
5.3×104
P/.2+L1 3:2
4:2
1.7×105
1.6×105

結論

FuGENE HD:DNAの比率に関する、この研究から結論付けられることは、最少でも40μlのコンプレックスを細胞に加えるべきということです。これは試験された 最大量ですので、より多くのトランスフェクションコンプレックスを加えた場合、どれくらいトランスフェクション効率が上がるかは不明です。それ以上に、様 々な比率で、効率において定量可能な違いが存在し、この細胞株での至適化が重要です。トランジェントな効率を40%以上実現するには、3:2あるいは 4:2の比率で40μlを使用することが推奨されます。ステーブルトランスフェクションのデータは、2種類の集団でそれぞれの比率の間に細胞数の違いが 23%と69%あるため、細胞は3:2の比率でトランスフェクションされるべきだと示唆しています。最小限の至適化により、FuGENE HDトランスフェクション試薬は今までの方法よりも優れたトランスフェクション効率をもたらしました。

リファレンス

  1. Rane M et al. (1998) J Biol Chem 273: 20916-20923
  2. Carlesso N et al. (1999) Blood 93: 838-848
  3. Perkins C et al. (2000) Cancer Res 60: 1645-1653
  4. Zhong X, Safa A (2004) J Biol Chem 279: 17134-17141
  5. Bergeron S et al. (2004) Mol Cancer Ther 3: 1659-1669
  6. Xu J et al. (2005) PNAS 102: 6884-6889

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BIOCHEMICA2006NUMBER3(No104)

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