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Reference: Science (2006) 311: 392-394
454社で開発されたGenome Sequencer 20の技術を使用し、シベリアで発掘されたケナガマンモスのDNAを解析し、2800万塩基対のDNA配列を読み取ることができました。この280万塩基 対のDNA配列の内1300万塩基対(約45.4%)がマンモス由来として確認されました。マンモス由来DNAの回収率を上げることで、ゲノム配列を解読 することが可能となり、Paleogenetics分野を飛躍的に革新することができるでしょう。
生物の進化の過程を研究する上で、絶滅した生物のDNA配列情報を読み取ることは非常に有益です。古典的なPCRを使用した配列解読方法では、発掘サン プル中のDNA保存状態が悪いため、DNA配列情報を読み取ることは困難でした。化石中のDNAは通常300塩基対位の大きさに断片化されていることか ら、PCRによる増幅は困難です。また、バクテリアや菌類DNAのコンタミネーションが多いことから、これまで絶滅した生物のDNA配列解析は、細胞中に 非常に多く存在しているミトコンドリアゲノムに限定されていました。これに加え、核由来のDNA配列を解読するには、遺伝子の配列がすでに既知であること が条件でした。Genome Sequencer 20によるDNA配列解析のプロセスは、従来法に変わる手法で、マンモスの核由来DNAを初めて大規模に配列決定することができました。
マンモスのDNAサンプルは、シベリアのハタンガにあるマンモス博物館から寄与された8つの形態的に非常に良好に保存された部位から抽出されました。 DNA抽出作業は、クリーンルームにて1gのマンモスの骨から、フェノール・クロロホルム抽出法を用いて行われました。DNAの収量は、定量PCR法に て、マンモス由来のミトコンドリアチトクロームb遺伝子に対しておこない、一番DNAの収量が多かった部位は歯の抜けた下顎の骨でした。1gの骨から抽出 できたミトコンドリア由来DNAは、0.73μg(121×106 コピー)でした。抽出されたDNAは100μlまで濃縮し、ライブラリー作成から配列決定まで使用されました。
ライブラリー作成はGenome Sequencer 20のプロトコールに従い、まずDNAの断片化をおこない、DNAフラグメントの両端を平滑化し、PCRプライマー及びシーケンスプライマー配列を含むア ダプターを結合し、この2本鎖DNAを1本鎖に調製しキャプチャービーズに結合させます。
キャプチャービーズに結合させたライブラリーDNAを、油水エマルション中に増幅反応試薬と共に閉じ込め、それぞれのエマルション中で独立した増幅反応を行い、キャプチャービーズ表面に多量の1本鎖DNAコピーを貼り付けます。
これらビーズはPicoTiterPlateTMと呼ばれるプレートの各反応層に遠心力にて酵素ビーズと共に落としセットします。その後、PicoTiterPlateTMをGenome Sequencer 20にセットし、パイロシークエンス法にて各1本鎖DNA断片を配列解析します。PicoTiterPlateTM表面にそれぞれの塩基溶液を順番に流し、各塩基がビーズに結合した鋳型DNAとアニールした場合、塩基はDNA中に取り込まれ、化学発光反応が起こります。この化学発光をCCDカメラにて記録し、光の蓄積量を元に取り込まれた塩基数を計算します。
解析された配列情報は、これまで解析されているアフリカゾウ、ヒト、イヌ等のゲノムDNA配列に対してBLASTZを使用し、相同性90%以上の条件で 相同性検索を行いました。サンプルからの配列情報が、ゾウのゲノム配列と一致するものを確認し、またマンモスとゾウとの間での配列置換パターンを解析しま した。また、すべてのサンプルからの配列情報はコンタミネーションの無いことを確認するために、ノンリダンダントと環境DNA配列データベースに対し相同 性検索を行いました。これらすべての結果はGenome Taxonomy Browserを使用し最終的な評価をしました。
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図:マンモスDNAサンプルをメタゲノム的解析をした結果 それぞれの配列情報を種別分類したもので、それぞれの解析結果は、BLASTを使用しGenBankと環境データベースに対して相同性検索をおこなったものです[Poinar HN et al. 2006]。 |
GS20を使用し配列解析することにより、平均判読塩基長95 bpで302,692リードの配列情報を得ることができ、結果28×106 bpの配列情報をNCBIのTrace Archive(SID131303)に登録しました。
これらの配列情報中45.4%がアフリカゾウのゲノム配列と90%の相同性で一致しました。この結果から、サンプルは、他種のコンタミネーションではな く、マンモスのDNA由来であることが言えます。また、サンプルからの配列情報とゾウのゲノム情報との一致精度は98.55%でした(DNAの分解による 影響は結果に反映していません)。
ヒトやイヌのコンタミネーションを調べるために、配列情報がそれぞれのゲノムに97%以上の相同性で一致するものに関して調査しました。結果ヒト及びイヌのコンタミネーションはほとんど認められませんでした。
マンモスのゲノム配列(全体の45.4%)以外の内、14.5%は環境由来のもので、5.76%はバクテリア由来のDNA配列で、4.15%は真核生物 由来のDNA配列でした。また、非常に少量ですが、始原菌やウイルス由来のDNA配列も確認されましたが、菌類や線虫由来のDNA配列は確認されませんで した。18.24%のDNA配列情報は現在登録されているどのデータベースとも相同性がありませんでした。BLASTを使用した相同性解析結果は図1と表 1にまとめてあります。
ミトコンドリアゲノムに関しては、109塩基のデータベースとの相違が確認され、そのうち49塩基の配列情報は冗長度の少ないものでした。結果を総合的 に見ると、マンモスとゾウの配列を合わせると、マンモスの“T”の塩基にゾウの“C”の塩基が重なるものが、ゾウの“T”塩基にマンモスの“C”塩基が重 なるものに比べ、非常に過剰にあることが解り、おそらくシトシンからウラシルへの分解が原因と考えられ、結果C→TとG→Aの塩基置換が起こっているので はないかと予想されます。また、ミトコンドリアDNA配列中に13塩基ほどのインサーションが見つかり、おそらくこれらは古代のDNAを扱っている為、避 けて通ることのできないDNAダメージに起因する問題であると思われます。このような結果から、GS20システムは発掘されたDNAサンプルでも配列解析 できることが証明されました。
Genome Sequencer 20を使うことにより、絶滅生物の発掘サンプルより抽出されたDNAを総合的に解析することが可能となりました。これはGS20システムが、短いDNA断 片にアダプターを結合し塩基配列解析を行うという特徴があり、今回の解析に理想的であったと言えます。
回収されたDNAに対しアダプターを結合し、増幅を行うことにより、クローニングや増幅によるバイアスを防ぐことができ、結果的に元のDNA配列情報を 忠実に解析し、ゲノム全体をカバーする効率を上げることができます。加えて、従来法に比べ一度に解析できる塩基長は短いのですが、冗長度を上げて解析する ことができ、その結果、DNAの分解による解析ミスを改善することができます。これら新たな技術を利用することにより、マンモスゲノム配列解析を一部行う ことができ、機能性遺伝子解析や変異率解析などを行うことが可能となりました。これらのDNA配列解析情報を元に後新世の哺乳類がどのように気候変化に対 応したのか予想することが可能となります。
| 表1:アフリカゾウ、ヒト、イヌに対して相同性の有る配列数の割合[Poinar HN et al. 2006]。 | |||
| Elephant | Human | Dog | |
| Total no. reads | 302,692(100%) | 302,692(100%) | 302,692(100%) |
| Aligned reads | 137,527(45.4%) | 4,237(1.4%) | 3,775(1.2%) |
| Uniquely aligned reads | 44,442(14.7%) | 3,901(1.3%) | 3,548(1.2%) |
| Multiply aligned reads | 93,085(30.8%) | 336(0.1%) | 227(0.1%) |
| Reads with at least | 90,507(30.0%) | 1,184(0.4%) | 1,140(0.4%) |
| 95% identity | |||
| Reads with 100% identity | 21,952(7.3%) | 116(0.04%) | 142(0.05%) |
| Uniquely aligning base pairs | 4,332,350 | 318,966 | 291,714 |
| Identity in unique alignments | 98.55% | 92.68% | 92.91% |
| Mitochondrial reads | 209 | -/- | -/- |
| Identity in mitochondrial reads | 95.93% | -/- | -/- |
| Mitochondrial base pairs | 16,419 | -/- | -/- |
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BIOCHEMICA2006NUMBER2(No103)
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