LightCycler® 480 システム:正確なハイスループット定量PCRの新しいスタンダード

Gene Expression コーナー

Christian Weilke, Gudrun Tellmann, and Michael Hoffmann*
Roche Applied Science, Penzberg, Germany
*Corresponding author: michael.hoffmann@roche.com

はじめに

LightCycler® 480システムは、核酸の定性、定量検出、及びジェノタイピングのため、新しくマルチウェルプレートベースのリアルタイムPCRプラットフォームとして、特にハイスループットでの自動化ワークフローに対応できるようにデザインされています。
キャピラリーベースのLightCycler® 1.5(ST300) や 2.0(DX400)と同様に、LightCycler® 480システムは多機能なプラットフォームであり、両立が難しいと考えられていた、正確でかつ再現性ある結果、最高のフレキシビリティそして抜群のスピードを提供いたします。

正確な定量PCRの達成

マルチウェルPCRプレートから迅速に再現性のある結果を得るためには、サイクリング中の厳密な温度制御が不可欠です。 プレート上の各々のポジションのサンプルは目的温度に迅速かつ同時に到達されなければなりません。 LightCycler® 480では、サーマルブロックサイクラーに組み込まれたTherma-Baseと呼ばれる機構によって達成されています。 Therma-Baseとは、熱 分配と温度平衡化装置であり、動作原理は薄い真空腔中での液体の蒸発と凝結に基づくものです(図1)。 また、専用96- 、384-マルチウェルプレートは、反応溶液への迅速な熱伝導に必要不可欠なものであり、 それぞれのサーマルブロックに完璧にフィットするように設計され ています。 挿入されたプレートは、反応容器上部への結露を防ぐための加熱リッドによって固定されています。
光学システムは精巧な巨大レンズと冷却CCDカメラで構成され、これによりプレート全面にわたり蛍光は高感度、かつ均一に測定されます。 また、自由な組 み合わせが可能な励起・蛍光の2つの光学フィルターは500-670nm間で検出可能な蛍光色素について特異的な励起と蛍光検出を実現しています。 ミラー を用いて光路を曲げることにより光路長を確保すると同時に非常にコンパクトな機器サイズをも実現しています。
ホットスタート型酵素を含んだReady to useのマスターミックス試薬もLightCycler® 480システムの正確性に寄与する重要な要素です。 主要な各リアルタイムPCRアプリケーションにおいて、ハイスピードプロトコルを使用した時でも、安定した高感度な結果が得られるように、 酵素のバリアントとバッファー組成を注意深く選択することで最適化されています。
LightCycler® 480システムには高い正確性と自由度を持ったデータ解析用のソフトウエアモジュールが含まれています。 標準曲線を描くため、バイアス-フリーのsecond derivative Cp測定と非直線フィットアルゴリズムを採用することで、 LightCycler® 480 Basic Softwareは、比類無き定量化環境を提供します。 さらに別売のLightCycler® 480 Relative Quantification Software は、PCR効率を考慮したキャリブレーターに基づいた方法論を提供するなど一歩進んだシステムです (例:ターゲットとリファレンス遺伝子の比較)。

図1:LightCycler® サーマルブロックサイクラーの断面図.
上部層:マルチウェルプレートマウント; 中間層:Therma-Base; 下部層:冷却エレメント

定量PCRの正確性の証明

上記概説のように、マルチウェルプレート全体にわたる温度の均一性は、定量PCRの再現性に重要な必須条件です。 融解温度 (Tm) 分析を高感度なツールとして用いて、このプレート上の温度モニタリングを実施しました(図2)。 所定の実験手順に従って、同じ反応溶液 (SimpleProbe[SimpleProbe;特殊なハイブリダイゼーションプローブで、2本ではなく、 1本の蛍光プローブを用います。 ハイブリダ イズしたときに蛍光シグナルを発します。]プローブとそのSimpleProbeプローブに相補的に結合するオリゴヌクレオチド)を プレートの様々な位置 に添加した後、ゆっくりと一定速度で温度上昇を続けながら蛍光を観察しました。 反応溶液中のSimpleProbeプローブとオリゴヌクレオチドの特異的 な融解温度において2重鎖が解離するため、蛍光強度の減衰は最大になります。 結果として、プレート上のどのポジションにおいても高い再現性で予定通りのTm値が得られました(図2a)。 他方、不均一なヒーティングの機器においては、予定のTm値に対して上下差のある融解温度を示しました(図2b)。

図2: 融解温度測定によるサーマルブロックサイクラーの正確性のモニタリング.
(a) Therma-Baseを含むLightCycler® 480サーマルブロックサイクラー (b) Therma-Baseを含まない他社リアルタイムPCRシステム. オリゴヌクレオチド/SimpleProbeプローブ2重鎖の融解温度(Tm値)をマルチウェルプレート全領域の温度均一性を実証する 高感度なパラメータ として使用した. オリゴヌクレオチドから予測されたTm値と実際に測定されたTm値との差異を、 予想Tm値(50°)をゼロとして示している。

正確な定量PCRから得られる利点

高い再現性を目標に設計されたLightCycler® 480システムは、非常に低いウェル/プレート間差での定量PCRアッセイを可能にします。 希釈系列のレプリカをプレートの異なる領域に配置した場合でも (“walk-around-the-block”experiment)、 低濃度のターゲット遺伝子においてさえ再現性の高い増幅曲線が得られます。 図 3の結果から、1010から100コピーのレンジにおいて信頼性のあるターゲット遺伝子の定量が可能である ことが示されており、 最終的にこの特性がシステムの幅広いダイナミックスレンジに寄与していることがわかります。 さらに、このダイナミックスレンジ内にお いては、2倍の濃度差であっても高い再現性を持って識別することができます(図4)。
これらの実験は、LightCycler® 480システムの抜群の解像度、感度、再現性、そして、プレート全域にわたる均一なPCRデータ(Cp値)についても示しています。 各レプリカ群の間のPCRデータ(Cp値)の高い均一性と低い標準変動は高い再現性を反映しています。
LightCycler® 480システムにおいて、蛍光測定はプレート上のサンプル位置による影響が無いため、 反応溶液中に含まれる蛍光色素シグナル(例:ROX)による補正の必要性もありません。

図3: LightCycler® 480のダイナミクスレンジ.
プラスミドDNAは1:10の段階希釈(1010から100コピー)、 9重測定でLightCycler® 480 Probes Master試薬を用いて増幅され、 Universal ProbeLibraryプローブを用いて検出された. PCRの結果は幅広いダイナミックスレンジ(10 log intervals)で対数直線性を示し、 異なる希釈ステップからのレプリケートも高い再現性を示した.
図4: LightCycler® 480 機器での2倍希釈の解像度.
ウイルスのターゲットシーケンスは1:2の段階希釈、7重測定でLightCycler® SYBR Green I Master試薬を用いて解析された. (a) コピー数(下部) とピペッティングスキーム(上部)
(b) 増幅曲線((a)で使用した色に対応, 例, 灰色: 977 コピー, 緑色: 1953 コピー, など) と標準曲線.

要約

LightCycler® 480システムの各々の構成パーツ (ハードウエア, ソフトウエア, 試薬)の特長と実験データから示されるように、 LightCycler® 480システムは統合されたシステムとして、高い正確性と再現性を必要とするすべてのリアルタイムPCRアプリケーションに最適な環境を提供します。
ロシュ・アプライドサイエンスは、LightCycler® ファミリーにおいてリアルタイムPCRにおけるスピードと正確性の重要性を数年前から提唱しています。 今回はじめて、LightCycler® 480システムは、マルチウェルプレートベースの多検体アッセイに対しても、 LightCycler® システムのユニークなスピードと正確性のコンビネーションの提供を可能としました。



BIOCHEMICA2006 NUMBER1 (No102)

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