LightCycler®480 システムの導入 次世代の高速、高正確性のリアルタイムPCR

Gene Expression コーナー

はじめに

PCRシステムであるLightCycler®ファミリーにより、ロシュ・ダイアグノスティックスはリアルタイムPCRにおいてスタンダードを確立しました。LightCycler®インスツルメントは 対称的な“one-well-like”なデザイン、空気による加熱と冷却、反応容器としてのキャピラリーの使用などによるそのスピード、正確性、柔軟性が良く知られています。

同じ流れを踏襲した、新しいLightCycler®480システムは、ライフサイエンス研究における遺伝子発現や変異解析の実 行時に、サンプルのハイスループットを可能とします。今回新たに、96または384ウェルプレートベースの、すべてのqPCRアプリケーションに対応し た、スピードと正確性のユニークなコンビネーションを持つLightCycler®システムのリアルタイムPCRプラットフォームが提供されます。それに加え、LightCycler®480システムのハードウェアとソフトウェアの高度なモジュールコンセプトが、研究室ごとのニーズにマッチするように、システムのカスタマイズを可能にします。

デザイン

LightCycler®480システムはコンパクトでフレキシブルな卓上型インスツルメントで、96または384ウェル用のマ ルチウェルプレートが装着できます。機器はWindows XPをベースとするデータステーションと共に供給されます(図1a)。二種類のサーマルブロック(96または384サンプル)は簡単に交換可能で様々なス ループットの要求に適用できます。ブロック交換後のキャリブレーションは必要ありません(図1b)。

図1:
(a) LightCycler®480インスツルメントとワークステーション
(b) サーマルブロックユニットの交換

LightCycler®480システムのコンポーネント

PCRをベースとする多数サンプルの遺伝子解析は、シグナルの生成、検出、解析が高い再現性と均一性で行われた場合にのみ、正確に実行することが出来ま す。より詳しく言うと、PCRサイクル条件(温度と時間)、蛍光色素の励起と測定法、遺伝子を定量および定性的に特徴付けるために使用されるアルゴリズム などが高度に精密で信頼性のあるものでなくてはなりません。LightCycler®480システムは、高性能なハードウェア、ソフトウェア、試薬、消耗品において今までにないレベルで、これらの要求を満たしています。

LightCycler®480インスツルメントのサーマルブロックと消耗品

PCRの特異性と収量は、反応温度への到達と温度の維持というサーマルサイクリングシステムの迅速かつ正確さの性能に直接影響を受けます。キャピラリーベースのLightCycler®システムでは、空気による加熱と冷却がこのことを達成しました。マルチウェルプレートをベースとするシステムにおいて同等の性能に達するために、新しいタイプのサーモブロックがデザインされ、LightCycler®480システムに採用されました(図2a)。

PCRインスツルメントにおいて初めて、LightCycler®480インスツルメントはプレート内のすべてのサンプルへの最適な熱伝導のためのTherma-Baseテクノロジーを取り入れ、優れたウェル間の温度均一性とウェル内およびサイクル中の再現性を最大限に引き出すことに成功しました。

LightCycler®480システムでは5-20μl(384ウェルプレート)ならびに20-100μl(96ウェルプレー ト)の幅広い容量域におけるPCRを可能とします。これにより例えば、感度が重要となるターゲットが低濃度の場合などに柔軟性の高いアッセイデザインが可 能となります。LightCycler®480サーマルブロックにフィットする特別なマルチウェルプレートはこのシステムの要です。これは蒸発とコンタミネーションを予防するシールとの組み合わせで使用されます。各プレートにはバーコードがあり、サンプルの追跡を容易にします。

LightCycler®480システムの光学システム

蛍光の励起のために、LightCycler®480インスツルメントは高強度のキセノンランプを使用しています。この光源の幅広いスペクトルが色々な色素の使用を可能にし、同時にすべてのチャンネルにおいて、様々なアッセイフォーマットにおいて最大の感度を提供します。

複数の色素を使用する際に特異的な励起を行い、チャンネル間のクロストークを最小限にするために、LightCycler®480 システムは多くのフィルター(励起用に5種類の最大波長-450、483、523、558、615 nm;検出用に6種類の最大波長-500、533、568、610、640、670 nm)を装備しています。これらのフィルターは実験に使用されるプローブフォーマットと色素に合わせて、柔軟に組み合わせることが可能です(図2b)。

シグナルの検出においては、プレート全域にわたるシグナルの均一な取得のために、広視野のレンズとCCDカメラが採用されています。それゆえ、蛍光検出はサンプルの位置に関係せず、強度における二次元的な差異を補正するための別の色素(ROX)が不要です。

図2:
(a)LightCycler® 480インスツルメントのサーマルブロック。
(b) 光学システム

キセノンランプは見えているユニットの外側に位置することにご注意ください。光は光ファイバー(図の左側上部)を通してユニットに向かいます。

LightCycler®480システムのソフトウェアコンセプト

LightCycler®480インスツルメントは、反応プロトコールのセットアップ、絶対定量および融解曲線分析を簡単に行う ためのベーシックソフトウェアと共に供給されます。追加のソフトウェアモジュールは必要なアプリケーション(相対定量とジェノタイピング)に応じて別途購 入できます。LightCycler®ソフトウェア4.05の原理を基に、解析モジュールはメルティングカーブによるジェノタイピングや2nd derivativeクロッシングポイント(CP)測定などを含む、高度に頑強で精密な方法をベースとしています。

アプリケーションに係わらず、ソフトウェアインターフェースはアッセイセットアップやデータ管理を簡単に分かりやすいようにデザインされています。すべ てのモジュールにおいてラン内あるいはインポートされたスタンダード、サブセットやテンプレートの定義の使用をサポートしています。生データ自身がインス ツルメントのラン後もアクセスできるので、解析は非常に柔軟に行えます。バッチエキスポートなどの容易なデータの転送のためのオプションも提供されます。

従来のLightCycler®システムに比べ、LightCycler®480システムは、一歩進んだ全自動のハイスループットワークフローへの適合性を提供します。統合されたワークフローのモニターのために、LightCycler®480 システムは標準的なLIMS(ラボラトリーインフォメーション マネージメントシステム)への接続性とCFRパート11スタンダードとの適合性を提供します。バーコードリーダーとの組み合わせにより、LIMS/バー コードソフトウェアモジュール(オプション)が、全自動サンプル調製や反応のセットアップ、プレートのローディングなどのロボット機器の下流でのインスツ ルメントの使用を可能とします。

LightCycler®480システムの試薬

LightCycler®480システムには、その主要なアプリケーション(遺伝子検出、遺伝子やcDNAの定量、ジェノタイピ ング)に対する専用のマスターミックスが含まれます。すべての試薬は単一のマスターミックスとして供給されるため、反応のセットアップにはテンプレート DNAとプライマー、プローブ(SYBR Green Iでの実験を除く)を添加するだけです。様々なシークエンスを増幅するためのMgCl2濃度の調整は、通常必要としません。ミックスはホットスタートプロトコールに対応しており、2ステップRT-PCRアプリケーション(Transcriptor Reverse Transcriptaseの使用後)で使用可能です。

アッセイフォーマットと実験デザイン

シグナルの生成と検出のための高い発光強度と幅広い波長を提供することで、LightCycler®480システムは、現在入手 可能な蛍光色素とアッセイフォーマットに適合します。このシステムはロシュ・ダイアグノスティックスの時間試験的および性能保証された遺伝子発現ならびに ジェノタイピング法に従い、加水分解プローブやHybProbe(FRET)プローブを使用するこれらのアプリケーションのそれぞれに至適化されていま す。LightCycler®480システムの検出フォーマット、蛍光色素、アプリケーションは表1に要約してあります。

LightCycler®480システムによる遺伝子発現解析のために、ロシュ・ダイアグノスティックスの新規のユニバーサルプ ローブライブラリーは、有用な補足的アプローチを提供します。種特異的なレディー・ツー・ユースのユニバーサルプローブライブラリーセットが入手可能で、 わずか90種類の検証済みの検出プローブで、選択した種の完全なトランスクリプトームをカバーします。オンラインでの無料アッセイデザインセンター(www.universalprobelibrary.com)によるサポートで、プローブはライブラリーから選択され、次にプライマーがデザインされます。このアプローチを使用することで、すべての遺伝子発現アッセイが2日以内に終了できます。

 

表1:LightCycler®480システムの検出フォーマット、蛍光色素、アプリケーション

励起 検出 アッセイフォーマット 蛍光色素 アプリケーション
483 533 SYBR Green I SYBR Green I 特徴付け
定量
483
483
483
610
640
670
HybProbeプローブ LightCycler® Red 610
LightCycler® Red 640
Cy5
定量
SNP解析
450
483
523
558
558
615
500
533
568
610
640
670
加水分解プローブ




LightCycler® Cyan 500
FAM
VIC/HEX
LightCycler® Red 610
LightCycler® Red 640
Cy5
定量
SNP解析
483 533 SimpleProbeプローブ フルオレセイン SNP解析

性能データ

個々の構成品(ハードウェア、ソフトウェア、試薬)の特長と以下の実験例により提示されたように、LightCycler®480 システムはリアルタイムPCRアプリケーションにおいて高い正確性と再現性を持つ至適化された条件をすべて提供します。同一サンプルをマルチウェルプレー トの対角線上に加えたとき(“walk-around-the-block”実験)、遺伝子定量(図3)と融解曲線分析(図4)におけるアッセイの再現性 と正確性を示すことが出来ます。このような実験はまた、LightCycler®480システムの優れた解像度とダイナミックレンジを提示します。

要約

LightCycler®480システムは核酸の正確性の高い定量および定性、ジェノタイピングのための優れたモジュールオンラインPCRプラットフォームです。ロシュ・ダイアグノスティックスのLightCycler®1.5 および2.0システムの利点に基礎を置きながら、スループット、全自動機器への適合性やハードないしソフトウェアの最大の柔軟性などの提供において、より 一歩進んでいます。複雑性を増すことなく速度と正確性の組み合わせに有用な方法を提供することで、SNP解析や遺伝子発現研究、アレイデータの検証などの 研究分野で必要とされる広範囲のアプリケーションに適合しています。

図3:LightCycler®480インスツルメントを使用しての遺伝子の絶対定量実験におけるアッセイ内の再現性。
G6PDH遺伝子由来の390-bpアンプリコンの希釈系列(7段階希釈、102~106コピー /20μl)をSYBR Green Iで検出しました。すべての希釈系列はプレートの中央部(茶色)で5重測定を行い、スタンダードカーブの作成のために使用しました(右下)。スタンダード と濃度の異なる5個のサンプルをプレートの四隅で2重測定を行いました(赤)。増幅曲線のグラフ表示(青色はスタンダード、緑色は未知サンプル)と標準偏差値は、プレート内のサンプルの位置は結果に重大な影響を及ぼしていないことを示し、すべてのプレート内のウェル間の均質性が非常に高いことが示されました。
 
図4:哺乳類MDH-1の様々な多型を含むサンプルのハイスループットな融解曲線分析。
増幅産物はLightCycler®480インスツルメントを使用し、HybProbeプローブで融解曲線分析を行いました。各サ ンプルは96個が384ウェル上で筋違いに均等に添加され、96重測定されました(青色の四角のウェル:1本のメルティングピーク;黒色の四角のウェ ル:2本のメルティングピーク;空のウェルは灰色で表示)。グラフと表で示されたように、再現性の高いメルティングカーブとTm値が得られました(緑色: ホモ接合型の野生型;青色:ホモ接合型のミュータント;赤色:ヘテロ接合型のサンプル)。

BIOCHEMICA2005 NUMBER4 (No101)

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