Transcriptor First Strand cDNA Synthesis Kit : 反応効率と反応速度についての他キットとの比較

Gene Expression コーナー

Monika Jung1, Chuanliang Xu1,2, Falk Ohl1, Ann-Kathrin Mager1, and Klaus Jung1
1Department of Urology, Charité-University Medicine Berlin, Germany
2Department of Urology, Shanghai Hospital, Second Military Medical University, Shanghai, China

Transcriptor First Strand cDNA Synthesis Kitは、逆転写反応に必要な全ての試薬がセットになったオールインワン製品です。本キットに含まれる逆転写酵素トランスクリプターRTは、高い熱耐性や 長鎖cDNA合成、短時間での逆転写反応、RNase H活性など様々な高性能な特長を持っています。

  • 最適反応温度は55℃。最高反応温度は65℃まで対応しています
  • 最大合成鎖長は14 kbまで。完全長mRNAの逆転写が可能です
  • 最短30分でcDNA合成が可能です
  • RNase H活性を持っていますので、PCR前にRNase H処理を行う必要はありません
  • キット同梱のプロテクターRNaseインヒビターは高温60℃までの活性が確認されています
  • キット同梱のアンカーオリゴ[dT]18プライマーは、完全長mRNAの逆転写に最適です

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製品名 製品番号 包装単位 希望価格
Transcriptor First Strand cDNA Synthesis Kit 4379012 50回反応分 ¥43,000
・Transcriptor Reverse Transcriptase・Transcriptor RT Reaction Buffer・Protector RNase Inhibitor・Deoxynucleotide Mix・Anchored Oligo[dT]18Primer・Random Hexamer Primer・Control RNA・Control Primer Mix [PBGD]・Water PCR -grade

我々は、ライトサイクラー®システムを用いて、前立腺細胞系のHPRTとPBGD、CD59の転写断片のcDNAの定量を行い、 3種類のファーストストランドcDNA合成キットの転写効率を比較しました。オリゴ[dT]、ランダム、さらに両プライマーをミックスしたものをプライ マーとして、逆転写反応を行いました。
Transcriptor First Strand cDNA Synthesis Kitは、各プライマーの単独使用で多量のcDNAを合成しただけでなく、その他のキットと比較して、最も速い反応速度を示しました。より長いmRNA配 列には、アンカーオリゴ[dT]を使用したTranscriptor First Strand cDNA Synthesis Kitで、微量のCD59のmRNAは、効率的に完全鎖長7.6 kbが逆転写されました。

イントロダクション

遺伝子発現の定量は、RT-PCRに先立つ2つの要素に影響されます。完全な状態で精製されたトータルRNAまたはmRNAの抽出と、それに続く、ファーストストランドcDNAの効率的な合成です。さらに、in vitro逆転写反応の効率は、次の要素の影響を受けます[1]。

  • RNAの品質と量
  • RNAのGC含量、その二次構造や高次構造
  • 逆転写酵素の特性(由来や耐熱性)
  • プライミングの効率(プライマー配列と濃度に依存)

分子生物学における様々なアプリケーションでは、微量の遺伝子(例えば、単一細胞の研究、循環性癌細胞の判定など)の高感度な検出が課題となります。さ らに、RNA構造中の異なる遺伝子との相対的定量による遺伝子発現量の推定は[2]、2ステップRT-PCR中の同じcDNAサンプルから検出されなけれ ばなりません。そのため、少量から多量までのmRNAの完全鎖長cDNA合成を行う逆転写キットが必要です。

マイクロダイゼクションされた前立腺組織由来細胞の遺伝子発現研究のために、我々は効率的な逆転写反応を探しました。我々は、新製品の Transcriptor First Strand cDNA Synthesis Kitと、他の2種類の逆転写キットを、様々なプライミング方法で比較しました。Transcriptor Reverse Transcriptaseを含むTranscriptor First Strand cDNA Synthesis Kitは、in vitro転写RNAのごく微量から多量のコピー数までの幅広い検出幅を達成した酵素です[3]。

3種類のcDNA合成キットの性能は、4種類のヒト前立腺細胞系由来のRNAサンプルを用いて、比較されました。逆転写反応効率は、ライトサイクラー®1.5インスツルメントを使用して、リアルタイムRT-PCRによるcDNA量の測定によって判定されました。
2種のハウスキーピング遺伝子(HPRT、PBGD)の発現と、ターゲット遺伝子プロテクチン(CD59)は、様々なキットで定量し比較しました。
CD59はもちろん、HPRT、PBGDのmRNAは、微量なmRNAに分類されます。CD59は、腫瘍進行にとって重要な調節をする細胞表面タンパク質です。様々な腫瘍の治療ターゲット遺伝子として考察されます[4]。

材料と方法

細胞系と細胞培養

3種類の前立腺悪性細胞系、LNCaPとDU145、PC3(American Type Culture Collection)と良性前立腺細胞系BPH-1(German Collection of Microorganisms and Cell Culture DSMZ)は、RPMI-1640培地(Life Technology)で培養しました[5]。

RNA抽出

トータルRNAは、収集されて計数された個々の細胞からDNase処理ステップを含む市販のRNA抽出キットを用いて、抽出しました。トータルRNAは、それぞれの細胞系でNanoDrop ND-1000分光光度計で算出した2~5×106細胞から、抽出しました。RNAの完全性は、Agilent 2100 Bioanalyzerで確認しました。

cDNA合成

3種類のcDNA合成キットを用いて、1μgのRNAを逆転写しました。全てのRNAサンプルを、65℃で10分間変性しました。その後、各サンプルについて、次の3種類のプライミング方法を用いました。

  1. オリゴ[dT]プライマー
  2. ランダムプライマー
  3. オリゴ[dT]プライマー+ランダムプライマー

反応構成成分や反応ステップの最適化は行わず、添付説明書どおりにcDNA合成を行いました。全てのキットはRNase Inhibitorを同梱しています。全ての細胞系とプライミング方法で、ゲノムDNAコンタミネーションのコントロールを行いました。キット毎の操作の 違いは次のとおりです。

  • 特殊な組換え型ヘテロ二量体の逆転写酵素から成るサプライヤーAのキットは、RNase H活性を持ち、E. coliで発現されています。プライマーはキットに同梱されていません。我々は、オリゴ[dT]15プライマーを1μM、ランダム[dN]6プライマーを10μM、そして両プライマーのミックスを使用しました。cDNA合成は、37℃で60分間行いました。
  • First Strand cDNA Synthesis Kit[AMV]は、逆転写酵素AMVとオリゴ[dT]15プライマー、ランダム[dN]6プライマーを同梱します。ゲラチンは反応に加えませんでした。cDNA合成は、25℃で10分間プライマーをアニーリングさせた後、逆転写反応を42℃で60分間行い、逆転写酵素の不活性化を95℃で5分間行いました。
  • Transcriptor First Strand cDNA Synthesis Kitは、RNase H活性を持つE. coliで発現された最新の酵素と、ランダム[dN]6プライマー、新しくデザインされたアンカーオリゴ[dT]18プ ライマーを同梱します。プライマー存在下で、RNAの変性を行いました。ランダムプライマーやミックスプライマーを用いる場合、合成反応の前に、アニーリ ングを25℃で10分間行いました。全てのトランスクリプターcDNA合成反応を55℃で30分間行い、酵素の不活性化を85℃で5分間行いました。

ライトサイクラー®1.5インスツルメント

2種類のハウスキーピング遺伝子のリアルタイムRT-PCRは異なる検出フォーマットで行われました。In vitroで転写されたHPRT のmRNAは、LightCycler®h-HPRT Housekeeping Gene SetとLightCycler®FastStart DNA MasterPLUSHybprobe Kitで測定し、定量しました。トータル反応ボリューム20μlには、1:4希釈のcDNAがテンプレートとして1μl含まれます。増幅は、以下のコンディションで行いました。

プレインキュベーション: 95℃、10分
45サイクル: 95℃、15秒
  55℃、15秒
  72℃、15秒

(温度勾配:20℃/秒)
PBGDとCD59のcDNA断片は、SYBR Green定量フォーマットで検出しました。同様に、1:4希釈のcDNAは前述と同様に使用しました(PBGD定量に1μl、CD59定量に2μl)。 PBGDの増幅には、上流プライマー:5'-GCAACGGCGGAAGAAAAC-3'、下流プライマー:5'- CCCTGTGGTGGACATAGCA-3'を使用しました。CD59プライマーは、7.6 kb断片の5'末端にあります(配列は発表されています[4])。それぞれのプライマーの最終濃度は、0.5μMです。増幅されたPBGD産物は、特異的 融解温度84℃の156 bp断片です。増幅されたCD59産物は、209 bpで融解温度82℃を示します(図1)。増幅は次のとおりに行いました。

45サイクル: 95℃、15秒
  59℃、20秒(PBGD)
  60℃、20秒(CD59)
  72℃、20秒

(温度勾配:20℃/秒)

cDNA定量

逆転写したHPRTのmRNAは、LightCycler®h-HPRT Housekeeping Gene Setに含まれるRNAスタンダードを使って定量しました。それぞれのPCRにおいて、蓄積したcDNAサンプルは、HPRTのスタンダードカーブを作成 するための相同スタンダードとして使用しました。導入したPBGDスタンダードカーブは、LNCaP細胞系由来のcDNAから作りました。データは、 LightCycler®Software, version 3.5で分析しました。ランはSecond Derivative Maximumを使用して評価しました。

結果と考察

2

種類の異なる逆転写キットとの比較で、新しいTranscriptor First Strand cDNA Synthesis Kitは、最高のcDNA収量を示しました。3種類全ての遺伝子の調査で、プライミング方法に依存せず、高収量を確認しました(図2)。

観察されたパフォーマンスの違いは、明確にターゲットRNAの配列と構造に依存していました。CD59について、Transcriptor First Strand cDNA Synthesis Kitを使用した場合、cDNA収量は50~90%高くなりました。特に、オリゴ[dT]プライマーを使用した場合、他の2種類のキットは極めて低い cDNA収量を示しました。より長いmRNA配列のためには、アンカーオリゴ[dT]プライマーと組み合わせたTranscriptor First Strand cDNA Synthesis Kitの使用が有効であることを明らかにしました。CD59のmRNAは、両ハウスキーピング遺伝子HPRTやPBGDの約5倍の約7.6 kbの鎖長です。この7.6 kbのCD59のmRNAが、完全に逆転写されます。Transcriptor Reverse Transcriptaseを用いて、14 kbまでのRNAから完全鎖長のcDNAが合成出来ます[3]。

図3は、Transcriptor Reverse Transcriptaseを用いて、様々なRTプライミング方法の影響を示しています。cDNAの最大量は、全ての遺伝子で、アンカーオリゴ[dT]プ ライマーとランダムプライマーから成るプライマーミックスの使用で観察されました。続いて、アンカーオリゴ[dT]プライマー、ランダムプライマーです。 HPRTとCD59において、アンカーオリゴ[dT]プライマーと、プライマーミックスの間に差は認められませんでした。プライミングに依存する逆転写反 応の効率は、遺伝子間で様々です。これは別の研究でも観察されています[1、6]。

最後に、キット特有のTranscriptor Reverse Transcriptaseとアンカーオリゴ[dT]プライマーは、長いRNAや高次構造を持つRNA分子からのcDNA合成率を向上させます。微量の遺 伝子を研究する場合に高い感度を達成することは、Transcriptor Reverse Transcriptaseの重要な特長です。

我々は、検証したキットは、説明書で推奨される反応時間のうち、最も少ない反応時間で使用されることを推奨します。我々は、新しいアプリケーションに先 立って、プライミング方法の検証も推奨します。Transcriptor First Strand cDNA Synthesis Kitは、反応の速さと、完全で高収量なcDNA合成を約束します。

リファレンス

  1. Stahlberg A et al. (2004) Clin Chem 50:509-515
  2. Technical Note No. LC 13/2001
  3. Biochemica (2003) 4:17-19
  4. Xu C et al. (2005) Prostate 62:224-232
  5. Jung M et al. (2003) Prostate 55:89-98
  6. Lekanne Deprez RH et al. (2002) Biochem 307:63-69

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製品名 製品番号 包装単位 希望価格
Transcriptor Reverse Transcriptase 3531317 25回反応分 ¥16,000
3531295 50回反応分 ¥27,000
3531287 200回反応分 ¥100,000
Protector RNase Inhibitor 3335399 2000ユニット ¥24,000
3335402 10000ユニット ¥96,500
LightCycler®h-HPRT Housekeeping Gene Set 3261891 96回反応分 ¥36,000
LightCycler®FastStart DNA MasterPLUSHybridization Probes 3515575 96回反応分 ¥24,600
3515567 480回反応分 ¥70,000
図1:融解曲線分析(Melting-curve Analysis)。
融解ピークはPBGDとCD59のPCR産物で示されます。4種類の前立腺細胞系由来のcDNAを使用しました。PBGDとCD59のネガティブコントロールとして、テンプレートを含まない反応液を使用しました。
図2:逆転写キットの比較。
棒グラフは、4種類の前立腺細胞系の遺伝子発現レベルの標準偏差の中間値を示しています。同じプライミング方法での最高発現レベルは、100%に設定しています。cDNA収量は、HPRTとPBGD、CD59の遺伝子断片で示されました。
図3:Transcriptor FirstStrand cDNA Synthesis Kitを使用した際の、cDNA収量におけるプライミング方法の効率。
HPRTとPBGD、CD59の遺伝子断片は、定量しました。棒グラフは、4種類の前立腺細胞系の中間標準偏差を示しています。遺伝子ごとの最高の発現量を、100%に設定しています。

BIOCHEMICA2005 NUMBER2 (No99)

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