真核細胞タンパク質をセルフリーで大量合成するための新しいツール:RTS 100と500小麦胚芽CECFキット

Protein Expression コーナー

Kairat Madin, Manfred Watzele, Michael Hoffmann, Thomas Metzler, Hans-Jürgen Rode, Markus Schmid, Dora Mayr, Thomas Nikolaus, Thilo Schlossman, Wolfgang Obermeier, Rolf Reichhuber, and Bernd Buchberger
Roche Applied Science, Penzberg, Germany

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製品名 製品番号 包装単位 希望価格
RTS 100小麦胚芽CECFキット 3728811 24×50μl反応 ¥89,000
RTS 500小麦胚芽CECFキット 4492838 5×1ml反応 ¥260,000

キットの特長

  • 高収量のタンパク質発現
  • PCRで作成した直鎖テンプレートが使用可能
  • E.coliシステムでは不可能なタンパク質の発現と可溶性の獲得
  • 精製や検出が容易なHis6-タグ発現ベクターが使用可能

はじめに

真核タンパク質の発現にとって、細胞ベースおよびセルフリーのE. coliシステムはしばしば最適ではありません。それは、多くのケースでミスフォールディングしたポリペプチドの凝集産物を生み出します。これらの問題は、ラピッ ドトランスレーションシステム(RTS)における発現テンプレートのシークェンスの至適化や、シャペロン、界面活性剤の使用で改善される場合がありますが、必要とされる労力はハイスループットアプリケーションにおいてしばしばボトルネックとなっています。新しいRTS 100と500小麦胚芽CECFキットにより、可溶性タンパク質、特に真核細胞タンパク質の発現において、E. coliシステムでの限界を打ち破り、高い成功率を示します。RTS小麦胚芽CECFキットは効率的で至適なタンパク質発現のために、連続交換セルフ リー(CECF)[1]、トランスクリプション/トランスレーションの組み合わせ、高度に効率的な小麦胚芽ライセートという、いくつかの新技術を組み合わせています。

このシステムの主要な優位点は、PCRで作成した直鎖テンプレートがRTS 100小麦胚芽CECFキットで簡単に使用できることです。新たに開発されたCECFデバイス(図1a)との組み合わせで、ハイスループットの条件下で多 くの遺伝子を処理できるロボットシステムが使用可能です。タンパク質のタイプに応じて、PCRで作成した直鎖テンプレートから24時間で数 100μg/mlのタンパク質が発現できます。RTS小麦胚芽ベクターを使用したとき、RTS 500小麦胚芽CECFキットで1mg/mlの合成反応が可能となります。

材料と方法

直鎖テンプレートDNAの調製

RTS小麦胚芽CECFキットでの発現用の直鎖テンプレートを増幅するために、2ステップのPCRで直鎖発現ユニットが調製されました。使用した製品は:
  • 最初のステップでは、Expand High Fidelity PCRシステム(能書に従いデザインされた遺伝子特異的プライマーを使用)
  • 第2のステップでは、RTS小麦胚芽直鎖テンプレート作成セット、His6-タグ

第2のPCR用のプライマーと、真核細胞の発現に必要な上流と下流に調節エレメントを導入するためのDNAフラグメントは、直鎖テンプレート作成セットに含まれます。

PCRは以下の20サイクルが行われました:94℃ 1分、50℃ 1分、72℃ 1分/kb。
PCR産物の濃度はアガロースゲル電気泳動で測定しました。PCRで作成された発現テンプレートは小麦胚芽ライセートでの効率的な発現に必要とされる、 すべての上流と下流の調節エレメントを含んでいます。これらは、精製の必要がなく、直接にトランスクリプション/トランスレーション反応に使用しました。

発現ベクターの構築

すべての遺伝子はpIVEX 1.3 WG(C-末端にHis6-タグ)やpIVEX 1.4 WG(N-末端にHis6- タグ)発現ベクターにクローニングされました。増幅されたテンプレートはIn-Fusionテクノロジー(BD Bioscinece Clontech)やpIVEX 2.3あるいはpIVEX 2.4 E. coli発現ベクターからのNco I/ Sma I、Nco I/ Xho I、Nde I/ Xho I制限サイトへの単純な再クローニングによりクローニングされました。pIVEX 1.4 WGとpIVEX 2.4は同一のマルチプルクローニングサイトを持っています(www.proteinexpression.com)。

In vitro タンパク質合成と反応産物のアフィニティ精製

すべての発現ベクターはRTS 100およびRTS 500小麦胚芽CECFキットで発現されました。反応はプロテオマスター中、24℃で24時間インキュベートしました。反応ミックスは、40μg/mlの プラスミドおよび20μg/mlのPCRで作成した発現テンプレートを含んでいます。RTS 500小麦胚芽反応フォーマットには、60μg/mlのプラスミドを使用しました。0.5μlの発現反応産物をSDS-PAGEとクマシーブ ルー(CBB)染色、あるいはニトロセルロースメンブレンへのトランスファーで分析しました。His6-タグタンパク質は、POD標識抗His6抗体とLumi-LightPLUSウェスタンブロッティング基質で検出と可視化を行いました。CBB染色後のタンパク質量は同一ゲルにアプライされた既知量のスタンダードから推計しました。

His6-タグタンパク質の精製はアフィニティ樹脂(Qiagen)を使用して行いました。すべての精製ステップは1mlのMobicolsカラム(MoBiTec GmbH)中で行いました。

RTS小麦胚芽キットの使用

RTS小麦胚芽CECFはスケールアップ可能な真核のセルフリートランスレーションシステムです。特製のCECFデバイス中の2槽の反応フォーマットよ り成り、トランスクリプションとトランスレーションは反応槽で同時に行われます。基質とエネルギー成分は半透膜を介して連続的に供給されます。同時に反応 を阻害する副産物は同じ膜を通して、供給槽側に希釈、拡散されます。

従来のバッチシステムに比べ、CECF条件下のタンパク質合成は24時間続き、結果的に高い収量が得られます。サンプルはプロテオマスター内でインキュベートされます。

RTS 100小麦胚芽CECFキットは50μlの合成反応を24回行うのに十分な試薬を含んでいます。スケールアップしたRTS500小麦胚芽CECFキットは 1 mlの反応5回分です。両方のキットとも、小麦胚芽ライセート、反応ミックス、フィーディングミックス、アミノ酸(メチオニン不含)、メチオニン、再懸濁 バッファー、コントロールとして使用されるグルクロニダーゼ(GUS)発現ベクターの各バイアルと、反応デバイスとキャップのスペアを含んでいます。

結果とアプリケーション

RTS小麦胚芽キットのワークフロー

PCRで作成された直鎖テンプレートは、RTS 100小麦胚芽キットでの発現能の簡便なスクリーニングに使用できます。発現のスケールアップ用のテンプレートを作成する、特性の良く分かった(シークェ ンスされた)、あるいは安定なテンプレートを作成するためには、RTS pIVEXベクターへのクローニングが一般的に推奨されます。従来の制限サイトへのクローニングやPCRクローニング技術は、テンプレートを安定化するた めの時間が節約できる代替法です。作成された発現ユニットは、小麦胚芽ライセート中での効率的な発現に必要なすべての調節エレメントを含んでいます。セル フリー発現システムの利点の一つに、PCRで作成したテンプレートの使用があります。最初のPCRステップのために遺伝子特異的プライマーが能書に従いデ ザインされ、作成されたPCR産物は機能的な直鎖発現テンプレートを作成するために使用できます。それ以上に、あらゆる発現システムから簡単にRTSプ ラットフォームに移行でき、RTS E. coli と小麦胚芽の間でも同様です。

RTS小麦胚芽CECFキットでのタンパク質合成

RTS小麦胚芽CECFキットを評価するために、E. coli ライセートでは発現されないか不溶性となるタンパク質の合成に、最初にトライしました。真核および原核由来の24種類のタンパク質を選択し、発現テンプレートをRTS小麦胚芽長鎖テンプレート作成セット、His6-タグで調製しました。図2は、RTS100小麦胚芽CECFキットで発現された様々なタンパク質を表しています。タンパク質発現の成功率は100%に近いものでした。

図3はpIVEX小麦胚芽へクローニングされた後の、β-グルクロニダーゼ、survivin、ヒトキナーゼと核内レセプタータンパク質の、RTS 100小麦胚芽CECFキットでの効率的な発現を示しています。対象の遺伝子は、His6- タグタンパク質を得るためにpIVEX 1.3 WGやpIVEX 1.4 WGにクローニングされました。プラスミドDNAは従来法で調製し、2μgの各DNAをセルフリー反応でインキュベートしました。タンパク質合成と評価は 上述の通り行いました。RTS 100小麦胚芽CECFキットで合成されたタンパク質の量は、数100μg/mlと見積もられました。

His6-タグタンパク質のアフィニティ精製

合成されたHis6-タグタンパク質はAnti-His6アフィニティ樹脂での精製に成功しました。洗浄バッファー中のイミダゾールの濃度を、溶出される反応産物の純度を改善するためにいろいろ変化させました。タンパク質は500 mMのイミダゾールで溶出し、SDS-PAGEで分析しました(β-グルクロニダーゼ、図4)。

RTS 100対RTS 500

両システムのタンパク質の生産性を比較するために、β-グルクロニダーゼ、survivin、ヒトキナーゼと核内レセプタータンパク質を両システムのキットで合成しました。反応は24時間行い、分注液を3、6、12、24時間ごとに採取しました。
反応産物はSDS-PAGEで分析しました。すべての試験サンプルにおいて、反応時間を24時間まで延長したときにタンパク質量が増加していました。24 時間の反応で、約1 mg/mlの合成でした。結果はウェスタンブロッティングで確認しました(データ不掲載)。図5はsurvivinで、新たに合成されたタンパク質は、両 者のフォーマットで同様の効率で合成されたことを示しています。推計としては、RTS 500反応フォーマットはRTS 100フォーマットよりも高い収量を得ました(ml当り)。 これはCECFデバイスのデザインの違いによるものと思われます。RTS 500デバイスの透析膜の表面はより広くなっています。

要約

RTS 100フォーマットでの小麦胚芽ライセートをベースとするセルフリータンパク質合成は、活性と可溶性のスクリーニング用の高収量のタンパク質(30μg/50μl)を迅速に作成するための有用な技術です。このPCRをベースとするin vitro タ ンパク質発現法は、時間のかかるクローニングやバクテリアホスト細胞での、機能を持たないタンパク質の作成を回避できるため、細胞ベースの発現システムよ り優れています。これはまた、活性タンパク質のホモログや遺伝子ファミリーからのフラグメントの迅速な発現と同定にも適しています。システムは、タンパク 質の特徴付けに使用でき、タンパク質間相互作用の測定もサポートします。RTS 500小麦胚芽CECFキットを使用したよりスケールの大きな反応フォーマットでは、1 mg/mlのタンパク質発現が可能となります。

この経済的なセルフリー小麦胚芽トランスレーションシステムは、遺伝子からタンパク質の特徴付けまでの道を、数日から数時間に短縮します。これは、タンパク質の活性スクリーニングやカイネティックス、阻害研究などのアプリケーションに容易に適用できます。

リファレンス

  1. Sprin AS et al. (1988) Science 242:1162-1164
  2. Hoffmann M et al. (2004) Biotechnol Annu Rev 10:1-30

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製品名 製品番号 包装単位 希望価格
RTS小麦胚芽直鎖テンプレート作成セット、His6-タグ 3728790 96回反応 ¥28,000
RTS pIVEX小麦胚芽His6-タグベクターセット 3728803 2ベクター、各10μg ¥25,000
RTSプロテオマスターインスツルメント 3265650 1台 ご照会
POD標識抗His6抗体 1965085 50 U ¥42,400
Lumi-LightPLUSウェスタンブロッティング基質 2015196 100 ml(1000cm2メンブレン) ¥49,400
図1:CECFデバイス。
(a) RTS 100小麦胚芽CECFキットのCECFデバイス。
(b) RTS 500小麦胚芽CECFキットのCECFデバイス。
図2:セルフリータンパク質合成反応液のウェスタンブロット分析。
様々なタンパク質がRTS 100小麦胚芽CECFキットを使用して発現されました。
図3:セルフリータンパク質合成。
様々なHis6-タグタンパク質がRTS小麦胚芽キットを使用して合成されました。合成反応液はSDS-PAGEで分析しました。ゲルハクマシーブリリアントブルーで染色しました(N=N-末端タグ、C=C-末端タグ)。
図4:His6-タグタンパク質のアフィニティ精製。
β-グルクロニダーゼはRTS小麦胚芽CECFキットを使用して発現され、抗His6アフィニティ樹脂で精製されました。
図5:タンパク質の生産性。
RTS 100とRTS 500小麦胚芽CECFキットでのsurvivin合成のSDS-PAGE分析が示されています。


BIOCHEMICA2005 NUMBER2 (No99)

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