MagNA Pure Compact システムを使用した、様々なサンプルからのバクテリアDNAの迅速・自動分離

Gene Expression コーナー

システムの特長

  • 完全自動化されたベンチトップタイプ
  • プレパックされたReady-to-useのカートリッジ式核酸分離キット
  • 1サンプルに対して1カートリッジの使用でクロスコンタミネーションを回避
  • タッチパネル操作とバーコードリーダでプロトコルやサンプルの取り違えを回避

イントロダクション

様々な種類のサンプルからバクテリアDNAを効率的に分離することは、それに続く核酸ベースの実験において、バクテリアを感度よく検出するために非常に 重要です。物理的、酵素的な精製を自動化することは、ラボのワークフローに大きなメリットをもたらし、テンプレートDNA調製の手順をスムーズに標準化す ることができます[1, 2]。自動化システムのほとんどは、ハイスループットを目的としてデザインされています。しかしながら、多くの微生物学のラボでは、数少ないサンプルにお いても可能な、多目的、効率的および経済的な自動化の手段を求めています。MagNA Pure Compactシステムは、これらの要求にお応えします。MagNA Pure Compactは、高いフレキシビリティと信頼性の高いDNA分離能をもち、1~8サンプルを20~50分で処理することができます。

MagNA Pure Compactシステムは、完全自動化されたベンチトップタイプの装置と、プレパックされたReady-to-useのカートリッジ式核酸分離キットで構 成されています。1つのサンプルに対して1つの密閉されたカートリッジを使用するため、クロスコンタミネーションを回避することができ、また試薬も無駄に しません。装置はタッチパネル操作型コンピュータとバーコードリーダで操作するため、プロトコルやサンプルの取り違えを回避することができます。また、 MagNA Pure Compactシステムには、全サンプルのトラッキングと探知機能(液体、詰まり、チップ)が備えられています。

バクテリアの標準的なプロトコルには、溶解バッファーやプロティナーゼの添加や、目的サンプル中に潜在する病原菌を不活化するための短時間の加熱処理な ど、いくつかのマニュアル操作が含まれます。それに続くDNA分離のすべての工程は、既に確立されたカオトロピック溶解/結合バッファーと磁性ガラス粒子 (Magnetic Grass Particle、MGP)のコンビネーションをベースとした、MagNA Pure Compact システムで自動的に行いました[2]。DNAはMGPの表面に結合し、数回の洗浄ステップを経て精製されます。最終的に、抽出されたDNAは、少量の溶出 バッファーによって溶出され、その後の解析実験のテンプレートとして直接使用することができます。

ここでは、気管支肺胞洗浄液(BAL)、尿、唾液、糞便、スワブ、脳脊髄液(CSF)、気管支分泌物、血液培養液、バクテリア培養液など、様々なタイプの研究サンプルからバクテリアDNAの自動分離プロトコルの開発について述べます。

サンプルは、既知量のグラム陽性および陰性菌をスパイクしたもの使用しました。続いてMagNA Pure Compact Nucleic Acid Isolation Kit Iを用いて、トータルゲノムDNAを分離し、LightCycler®システムにより種特異的PCRアッセイで解析しました。

材料と方法

サンプルの調製

サンプルの調製方法は、サンプル材料のタイプに大きく依存します。BAL、唾液、CSF、糞便などのサンプルは、その濃度や粘度が大きく異なります。す べてのサンプルは、安全キャビネット内で、不活化するまで煮沸しました。処理に用いたサンプル容量は200μLです。MagNA Pure Compact Nucleic Acid Isolation Kit Iでは、1回のサンプルのインプット量は最大200μLで最適化されていますが、尿やCSFなどの液体サンプルにおいては、遠心ステップを行うことで(以 下を参照)、より多量のサンプルを処理することが可能です。それに対し、非常に細胞数の多いサンプルの場合は、その後のPCRへのオーバーローディングを 避けるために、サンプル量を減らすことを推奨します。

溶解

非常に粘性の高いサンプル(BAL、唾液)の場合、終濃度0.15%になるように、用時調製した0.75% Dithiothreitol(DTT)溶液を1/5量加えました。次に、ピペッティングが可能になるまで、37℃でゆっくりとシェイキングしながらイン キュベート(10~30分)しました。

バクテリアのスパイク

様々なタイプのサンプルを、規定細胞数のStaphylococcus aureus、Enterococcus faeciumPseudomonas aeruginosaおよびLegionella gormaniiでスパイクしました。その他のバクテリア種については、培養懸濁液を直接用いて解析しました。バクテリア数はMcFarland法で決定しました。

オプション:遠心

(液体サンプルの“濃縮ステップ”)
多量の液体サンプル(>200μL)や低コピーもしくはバクテリア量が未知(例;尿、CSF、BAL)の場合、サンプルを8,000xgで10分間遠心 し、バクテリア細胞をペレット化しました。上清を捨て、目に見える沈殿物と残った上清(約200μL)を処理しました。このようにして、元の容量が数mL のサンプルを、1度の分離ステップで、最大の解析感度が得られるように処理することが可能です。

オプション:MagNA Lyser 処理

機械的な破砕により溶解効率が更に増大するかを確認するために、それぞれのターゲットのバクテリアをスパイクしたサンプルをMagNA Lyser Green Beadsチューブへ移し、MagNA Lyserで処理しました。ビーズ間のデッドボリュームを埋め合わせるために、250μLのサンプルと250μLのBacterial Lysisバッファー/プロティナーゼKを使用しました。ビーズによる破砕は6,000rpm、30秒間行いました。

オプション:酵素カクテルによる消化

酵素による前処理により溶解効果が更に増大するかを確認するために、それぞれのターゲットのバクテリアをスパイクしたサンプルを溶菌酵素で処理してか ら、MagNA Pure Compactで処理しました。2種類の酵素カクテルを検討しました。酵素カクテルIはN-acetylmuramidase(0.625mg/mL)と beta-1,3-glucanase(Zymolyase)(0.25mg/mL)から成り、酵素カクテルIIはlysozyme(100mg/mL) とlysostaphin(10mg/mL)(すべてSigma社)で構成されます。それぞれの酵素カクテルを10μLずつ加え、37℃で30分間イン キュベートしました。

Bacterial Lysis バッファー/プロティナーゼKの添加

MagNA Pure Compact Nucleic Acid Isolation Kit Iから180μLのBacterial Lysis バッファーと20μLのプロティナーゼK溶液を分取し、サンプルへ添加しました(スクリューキャップ付の反応チューブを使用)。ピペッティングのマニュア ル操作を最小限にするために、まず2つの試薬を混合しておき、1ステップでサンプルへ添加しました。軽くボルテックスし、溶解物を65℃で10分間イン キュベートしました。粘性の高いサンプルや細胞数の多いサンプルは、溶液化の程度により(目視で確認)最大30分間インキュベーション時間を延長、あるい はオーバーナイトでインキュベートしました。

煮沸処理による不活化

病原性微生物を不活化あるいは減少させるために、サンプルを更に95℃で10分間インキュベートしました。以上のような酵素処理された、あるいは溶解さ れたサンプルは、安全キャビネット外で操作することができます。サンプルを室温までクールダウンさせた後、直接MagNA Pure Compactへアプライしました。

MagNA Pure Compact システムによるDNAの分離

溶解液をMagNA Pure Compact Sample Tubeへアプライし、MagNA Pure Compact Nucleic Acid Isolation Kit Iの消耗品(Elution Tube、Tip Tray)および試薬カートリッジと共に装置へセットしました。自動DNA分離を行いました(“Bacteria Protocol”)。MagNA Pure Compactシステムは、自動的にすべての分離と精製ステップを行います。比較対照として、同時に代表的なフィルターチューブ法を行いました。

図1:Staphylococcus aureusにおける異なる分離プロトコルの比較。
S.aureus(約104colony forming units CFU/mL)をスパイクした尿サンプルから抽出したテンプレートDNAを使用して、4重測定でLightCycler®PCRを行いました。
図2:Enterococcus faeciumにおける異なる分離プロトコルの比較。
E.faecium(約104CFU/mL)をスパイクした尿サンプルから抽出したテンプレートDNAを使用して4重測定でLightCycler®PCRを行いました。
図3:Pseudomonas aeruginosaにおける異なる分離プロトコルの比較。
P.aeruginosa(約104CFU/mL)をスパイクした尿サンプルから抽出したテンプレートDNAを使用して4重測定でLightCycler®PCRを行いました。
図4:Legionella gormaniiにおける異なる分離プロトコルの比較。
L.gormanii(約104CFU/mL)をスパイクした尿サンプルから抽出したテンプレートDNAを使用して4重測定でLight Cycler®PCR(Legionellaspp. 特異的プロトコル)を行いました。

LightCycler®PCR解析

病原微生物特異的LightCycler®キットまたは充分に評価された自家製プロトコルを使用して、それぞれのターゲットバクテリアであるS. aureusE.FasciumP.aeruginosaLegionella spp.をLightCycler®PCRで検出しました[3, 4]。20μLのLightCycler®アッセイにおいて、5μLのMagNA Pure Compact 溶出液(溶出量は100μL)を、プライマー、ハイブリプローブ、LightCycler®FastStart DNA Master Hybridizaion Probesと共に既出の記述に従って加えました[1, 4]。PCRの結果は、LightCycler®のCrossing Points(CP)により解析しました。CP値は添加DNAの量とクオリティを反映しています。

結果と考察

もっとも効率的なDNA抽出と精製方法を確立するために、いくつかの分離プロトコルを比較しました。唾液やBALなど粘性の高い呼吸器の粘液サンプルを 溶液化するためには、DTTと共にインキュベートすることが非常に効果的であることが分かりました。また、検討したすべてのプロトコルについて、プロティ ナーゼK処理は、粘性の高いサンプルを改善し不純物を取り除くことが分かりました。このステップは、煮沸処理による病原性微生物の不活化に続けて行います。


グラム陽性菌の細胞壁構造は、一般的な溶菌法に耐性を示すことが知られています。そのためにサンプルの前処理法は、溶菌酵素での消化、凍結/煮沸の繰り 返し、MagNA Lyserによるビーズ破砕など様々な方法で体系的に評価しました。比較データとして、フィルターチューブを使用したマニュアル操作でDNAを抽出しまし た。抽出効率はLightCycler®におけるリアルタイム定量PCRによって評価しました。

結果は、図1~4に示すように、バクテリア種に依存して著しく異なりました。数回の凍結/煮沸処理を行った場合、バクテリア種によるDNA抽出効率に著しい影響は見られませんでした(データ不掲載)。S.aureusにおいては、標準的なMagNA Pure Compactによる抽出工程と比較すると、ビーズ破砕による前処理において感度が約100倍、酵素カクテルIでは約5倍改善された一方で、酵素カクテルIIは劇的(約500倍)に溶菌効率を増大させることが分かりました。

E.faeciumにおいては、酵素カクテルIおよびビーズ破砕処理は、共に解析感度を10倍程度増大させる結果が得られました。P.aeruginosaL.gormaniiなどグラム陰性菌においては、前処理によって解析感度が増大することはありませんでした。

結論

MagNA Pure Compactシステムは、様々なタイプのサンプルから自動的にバクテリアDNAを効率的に分離するための便利で多目的なツールであることが分かりまし た。すべてのDNA抽出ステップは、MagNA Pure Compactを使用して、30分以内で自動的に行われました。個々のサンプルの抽出と精製に必要なすべてのバッファーや試薬は、プレパックされたカート リッジで供給されます。この“1サンプルにつき1カートリッジ”コンセプトが、フレキシビリティをもたらし、クロスコンタミネーションと試薬や消耗品の無 駄使いを回避します。サンプル中に存在する病原性微生物を不活化するために、煮沸処理を行うことを推奨します。

ここでは想定されるサンプルタイプについて検討を行いました(例;BAL、尿、糞便、唾液、スワブ、CSF、気管内分泌物、培養液)。DNA調製の結 果、高品質なDNAが得られ、その後のPCR解析において阻害は見られませんでした。同条件でスパイクしたサンプルについて、MagNA Pure Compactを使用した場合、他の方法で分離した場合と比較してLightCycler®による解析感度は、同等または良好でした。

特にグラム陽性菌において、MagNA Pure Compact抽出ワークフローに追加のステップ(例;溶菌酵素カクテルインキュベーション、MagNA Lyserシステムによる物理的破砕)を適用することで、溶菌効率と、その後の核酸ベースのアッセイ感度が大幅に増大することが分かりました。グラム陰性 菌においては、酵素処理や物理的な前処理が抽出効率に著しく影響を及ぼすことはないことが分かりました。

この追加ステップを行ったとしても、全抽出工程は45~75分で行うことできます。高速リアルタイムPCRのLightCycler®[1]と組み合わせると、最終的なPCR検査結果は、サンプルを受け取ってから、2時間以内で得ることができます。

リファレンス

  1. Reischl U, Wittwer C, Cockerill F (eds)(2001) Rapid Cycle Real-Time PCR: Methods and Applications. Springer Verlag, Heidelberg
  2. Laopin L and Kirchgesser M (2000) Biochemica 1:10-16
  3. Wellinghousen N et al. (2001) Appl Environ Microbiol 67:3985-3993
  4. Reischl U et al. (2002) J Clin Microbiol 40:3814-3817

Order INFO

製品名 製品番号 包装単位 希望価格
MagNA Pure Compact Instrument 3731146 1 instrument ご照会
MagNA Pure Compact Nucleic Acid Isolation Kit I 3730972 1 kit
(32サンプル分)
¥50,000
MagNA Pure Bacteria Lysis Buffer 4659180 20 mL ご照会
Proteinase K, rec. PCR grade, solution 3115828 5 mL ¥21,500
Lysozyme 837059 10 g ¥19,300
MagNA Lyser Instrument 3358968 1 instrument ¥774,000
MagNA Lyser Green Beads 3358941 100 tubes ¥42,000

BIOCHEMICA2005 NUMBER2 (No99)

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