大腸癌組織におけるIn situ hybridizationと免疫染色の二重染色

DIGコーナー

はじめに

In situhybridizationを行い、陽性のシグナルが得られた細胞がどのような種類の細胞か、もしくはそのmRNAにより産生されたタンパクの局在を明らかにしたい場合がある。その場合、連続切片の隣接した標本で、in situhybridizationと細胞マーカーや産生タンパクの免疫染色を行い、その両者の分布を比較することによって知ることができる。しかしながら、両者の分布をより厳密に比較するには、in situhybridizationと免疫染色を同一切片上で二重染色を行う必要がある。免疫染色では少なくとも抗体溶液を使用することになるが、当然抗体はRNase-freeとは考えられない。ならば、in situhybridizationを行った後で免疫染色すればと考えて行うと、in situhybridizationの過程でなされるタンパクの変性処理、特に強力なプロテナーゼ処理により、染め上がりはいまひとつになってしまう。RNase の存在を考えると、先に免疫染色をする事はためらってしまうが、実はあまり問題なく、mRNAのシグナルを検出できる。また、変性処理にもかかわらずジア ミノベンチジン(DAB)の発色は最後まで残っている。我々の行っている免疫染色との二重染色の実際を紹介したい。

材料と方法

組織は通常厚さ2 mm以内に切り出され、冷却された4%パラホルムアルデヒド/0.1 Mリン酸緩衝液(PB)、pH 7.4中、4℃一晩で固定している。以降はエタノール列とキシレンを通し、パラフィンに包埋する。シランコートのスライドガラス上に薄切した切片を拾い、 37℃で一晩乾燥させ、染色に用いる。切片を保存するときは、シリカゲルを入れ乾燥状態で、4℃の暗所で保存し、取り出したときはもう一度一晩37℃で乾燥させる。

染色を行うときは、キシレンで脱パラ後、エタノール希釈列を通し、リン酸緩衝生食水(PBS)で水和化し、免疫染色を行う。抗体は、短時間で染色が終了 することができる標識一次抗体を可能な限り用いている。本例では、EPOS標識alpha-平滑筋アクチン抗体(Dako社)を用いた。抗体反応後の洗浄 後DAB/過酸化水素水で発色する。In situhybridization中には殆ど脱色しないが、やや強めに発色させたほうが染め上がりは良い。

In situhybridizationの前処理は、4% パラホルムアルデヒド/0.1 M PBで10分(RNaseの不活化も兼ねているため、全部が液につかるようにする)→0.1 M PBで1分×2回(全体を完全に洗う)→Proteinase K(0.3 unit/ml 20~40分)/TE→4% パラホルムアルデヒド/0.1 M PBで10分→0.1 M PBで1分→0.2 M HClで10分→0.1 M PBで1分 →0.1 M Triethanolamine (TEA) pH8.0で1分→0.1 M TEA+0.25 % Acetic Anhydrideで10分(アセチル化)→0.1 M PBで1分→ エタノール列(70%、90%、100%で各30秒)→風乾、で行っている。

ハイブリダイゼーション溶液は、50% Formamide(生化学用)、10 mM Tris-HCl pH7.6、1 mM EDTA、600 mM NaCl 、10 mM DTT、1×Denhardt solution、0.25 % SDS、10% Dextran sulfate (Sigma社)、200 μg/ml E. ColitRNAを用いている。スライドグラスにパップペン(コスモバイオ社)などで囲いを描き、ハイブリ液をたらして切片上に展ばす。このハイブリ液はかなり粘 度が高く扱いにくいが、50%ホルムアミド(通常の特級)を含ませたろ紙をいれた湿箱の中では、切片にカバーグラスなどの覆いをかけなくても反応させるこ とができる。プレハイブリを50℃で2時間行う。ハイブリ液を軽く取り除き、ハイブリ液で希釈したジゴキシゲニン標識cRNAプローブ(プローブ作製後の 溶液を20~40倍希釈し85℃に加温後、1.5 cm径に40μl程度)を切片上に展ばし、16時間ハイブリを行う。

プローブの洗浄は、4×SSCで50℃ 10分 → 50% Formamide溶液で(4×SSCと特級Formamideを等量混合)で50℃ 15分→TNE(10 mM Tris-HCl pH7.6, 500 mM NaCl, 1 mM EDTA)で37℃ 10分→20μg/ml RNase A/TNEで37℃ 30分→TNEで37℃ 5分→2×SSCで50℃ 10分を2回→0.2×SSCで50℃ 10分(2回)を行う。

標識されているプローブのジゴキシゲニンは、アルカリホスファターゼ標識抗ジゴキシゲニン抗体(500倍希釈)を用いて検出する。洗浄後、発色液 (45μl Nitro-BT溶液、35μl BCIP溶液、 1 mM Levamisole/100 mM Tris-HCl pH9.5、100 mM NaCl、50 mM MgCl2、10 ml溶液中)を用いて、発色させる。発色後、蒸留水で洗浄し、1~5%メチルグリーン溶液で染色し蒸留水で洗浄後に、ドライヤーの冷風で完全に風乾し、キシレンに直接いれ、有機溶媒系封入剤で封入する。


結果と考察

大腸癌組織で、in situhybridizationにおいてテネイシン-CやフィブロネクチンmRNAのシグナル陽性である間質細胞は、免疫染色でalpha-平滑筋アクチンも 陽性である。つまり、これらの細胞外マトリックス糖タンパク産生細胞は、癌間質に出現する筋線維芽細胞の一部であることが明らかとなった。

普通に処理された病理診断用のホルマリン固定標本でも、固定の段階がうまくいっていれば、mRNAを検出できることがある。逆に、特別に作製された試料でも、固定液が迅速に浸透していない組織ではmRNAは保存されていない。また、in situhybridizationができる標本は、基本的に免疫染色も良好な結果が得られる。成功の鍵は、いずれも組織の固定がうまく行われているかである。In situhybridizationと免疫染色を組み合わせることにより、あたらしい分子機能、細胞機能が解明されることを期待したい。

図1:テネイシン-Cとフィブロネクチンのin situhybridizationとalpha-平滑筋アクチン抗体による二重染色。
大腸癌の間質において、テネイシン-C(TN)やフィブロネクチン(FN)mRNAの発現細胞の分布をin situhybridizationによって同定した(濃紺が陽性細胞。矢印で示す)。陽性細胞は、alpha-平滑筋アクチン抗体にも反応性(茶色)を認め、筋線維芽細胞の一部でこれらの細胞外マトリックスタンパクが産生されていることが明らかとなった。

参考文献

  1. Ishihara, A., Yoshida, T., Tamaki, H., and Sakakura, T. Tenascin expression in cancer cells and stroma of human breast cancer and its prognostic significance. Clin Cancer Res1:1035-1041, 1995.(方法論は一番詳しい)
  2. Yoshida, T., Matsumoto, E., Hanamura, N., Ilunga, K., Katsuta, K., Ishihara, A., and Sakakura, T. Co-expression of tenascin and fibronectin in epithelial and stromal cells of benign lesions and ductal carcinomas in human breast tissues. J Pathol182:421-428, 1997.
  3. Hanamura, N., Yoshida, T., Matsumoto, E., Kawarada, Y., and Sakakura, T. Expression of fibronectin and tenascin-C mRNAs by myofibroblasts, vascular cells and epithelial cells in human colon adenomas and carcinomas. Int J Cancer73:10-15, 1997. (図の引用元)
  4. Imanaka-Yoshida, K., Hiroe, M., Nishikawa, T., Ishiyama, S., Shimojo, T, Ohta, Y., Sakakura, T., and Yoshida, T. Tenascin-C modulates adhesion of cardiomyocytes to extracellular matrix during tissue remodeling after myocardial infarction Lab Invest 81:1015-1024, 2001.(二重染色法を用いている)

著者:吉田 利通 先生
三重大学医学部 医学科 病理学第一

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