ライトサイクラーシステムを用いてのsiRNAサイレンシング効率の定量

ライトサイクラー コーナー

はじめに

外来遺伝子の侵入に対する防御機構として、RNA干渉(RNAi)が数年前に初めて報告されて以来、RNAiは哺乳細胞における遺伝子機能分析の強力な ツールとなりました。RNAiは、抑制される遺伝子と相同の短い2本鎖RNAにより仲介されます。これらの小さな干渉RNAs(siRNA)は、哺乳細胞 において配列特異的mRNAを分解します。

細胞内にトランスフェクションする目的で、in vitro でsiRNAを作成するには、化学合成やin vitro トランスレーションなど、さまざまな方法が用いられます。他の方法としては、細胞内でin vitro にsiRNAを作成するためにベクターを利用します。siRNAの作成方法と、そのsiRNAの配列は、ノックダウン実験を成功させるための重要なファク ターです。選択されたsiRNA配列のすべてが、同じ効率で遺伝子発現を抑制するわけではありません。最も効率的なsiRNAにより、90%以上の mRNAレベルの減少が得られ、その他の物はより効果が少ないか、効果がありません。それゆえ、最も適したsiRNAを見つけるために、目標の遺伝子あた りに3つか4つのsiRNAが試験されます。またsiRNAの混合物を得るためには、in vitro 転写されたRNAをDICER酵素を用いて消化します。タンパク質レベルにおいて観察されたサイレンシング効果が、使用されたsiRNAに特異的かどうか を確認するために、ターゲット遺伝子のmRNAレベルも測定されなければなりません。遺伝子産物に対する特異的抗体が入手できない場合であっても、遺伝子 に対するmRNAは測定することができます。長寿命のタンパク質に対しては、ノックダウン効果がより高いため、mRNAに対するsiRNAの効果の評価は より簡単となります。

われわれは、GFP遺伝子が安定的にトランスフェクトされた細胞において、GFP遺伝子のノックダウン後に、ハウスキーピング遺伝子に相対するGFPの mRNAレベルの定量に、ライトサイクラーシステムを使用しました。この方法により、GFP特異的siRNAsの特異性とサイレンシング効果を示すことに 成功しました。

材料と方法

細胞培養

GFP遺伝子が安定的にトランスフェクトされたヒト接着細胞株PC3(PC3 - GFP)を、10%のFCS、2 mMのL - グルタミン、750μg/mlのネオマイシンを含むRPMI1640で培養しました。siRNAオリゴヌクレオチドでトランスフェクションする2日前に、 5 x 104細胞を24ウェルプレートの各ウェルに播種しました。siRNA(Dharmacon)を希釈されたトランスフェク ション試薬と混合し、血清不含の培地(Opti - MEM)中に、100 mMの濃度でアプライしました。トランスフェクションの4時間後、FCSを10%の終濃度で加えました。

GFPアッセイ

GFP濃度は蛍光光度計RF - 5301(波長:EX: 395 nm、EM: 508 nm)により、100μlのライセート中で測定しました。

mRNAの分離

mRNAはMagNA Pure LC mRNAアイソレーションキットIを使用し、MagNA Pure LCインスツルメントで分離しました。溶出量は50μlでした。

cDNA合成

ランダムプライマーとRT - PCR用ファーストストランドcDNA合成キットを使用して、各サンプルより5μlのmRNAをcDNAに逆転写しました。cDNAをPCRグレード水で10倍に希釈し、ライトサイクラーインスツルメントで定量しました。

定量リアルタイムPCR

GFPとハウスキーピング遺伝子の増幅のために、ライトサイクラー ファストスタートDNAマスターSYBRグリーンIキットとライトサイクラー ファストスタートDNAマスター ハイブリダイゼーションプローブキットを使用しました:0.5μMの各プライマー、0.2μMのハイブリダイゼーションプローブ、4 mMのMgCl2を アプライしました。GFP特異的プライマーとハイブプローブは、ライトサイクラー プローブデザインソフトウェアでデザインしました。増幅は以下の条件で行いました:95℃で10分間のプレインキュベーション、95℃で10秒、60℃で 10秒、72℃で15秒の45サイクル(温度の上昇率は20℃/秒)。

結果

ヒト細胞株PC3 - GFPは安定的にGFPを発現し、強い蛍光シグナル(図1)を示しました。化学的に合成したGFP特異的siRNA(GFP siRNA)のトランスフェクションの72時間後、蛍光シグナルは顕著に減少しました(図1)。
 GFPのノックダウンは、タンパク質レベルで測定しました。GFP発現は、GFPのノックダウンを示さないルシフェラーゼsiRNAをトランスフェクト した細胞に比べ、GFP siRNAをトランスフェクトしたPC3 - GFP細胞では、53%(ng GFP/μg総タンパク質)に減少していました(図2)。

図1 A、B:
GFP siRNAによるGFP発現の阻害。
siRNA未処理(A)およびGFP特異的siRNA(GFP siRNA)のトランスフェクション(B)の72時間後の、安定的にGFPを発現するヒト細胞株PC3 - GFPの免疫蛍光(Zeiss、Axiophot)が示される。白色の数字は、顕微鏡像あたりの総蛍光集積数を表示している。
図2. タンパク質レベルのでGFPの検出。
ルシフェラーゼsiRNAとGFP siRNAをトランスフェクトした72時間後のPC3 - GFP細胞におけるGFPと総タンパク質の比が示される。

ライトサイクラーシステム(定量リアルタイムPCR装置)は、リファレンス遺伝子のmRNAレベルに対する、ターゲット遺伝子のmRNAレベルの相対定 量に適しています。mRNAレベルにおける使用されたGFP siRNAの特異性を測定するために、ライトサイクラーシステムを用いました。

最初の実験で、PC3 - GFP細胞でのハウスキーピング遺伝子の発現レベルが測定されました。もっとも適切なハウスキーピング遺伝子が相対定量のリファレンス遺伝子として選択さ れました。GFPの増殖と検出は、ライトサイクラー ファストスタートDNAマスターSYBRグリーンIキット、ハウスキーピング遺伝子の増幅と検出は、ライトサイクラー h - ハウスキーピングジーン セレクションセットとライトサイクラー ファストスタートDNAマスター ハイブリダイゼーションプローブキットで行いました。ハウスキーピング遺伝子からのデータは、GFPの結果を標準化するために使用されました(図3)。5 種類のハウスキーピング遺伝子(β2M、G6PDH、ALAS、HPRT、PBGD)がテストされ、β2ミクログロブリン(β2M)の発現レベルがGFP の発現レベルに最も近いものでした(相対比が1に近い)(図3a)。それゆえ、これを次の実験のリファレンスとして選択しました。GFPのダウンレギュ レーションは、相対定量のリファレンスとして使用されたハウスキーピング遺伝子に係わりなく、同じレンジ内でした。GFP siRNAによるGFP mRNAのダウンレギュレーションは、ルシフェラーゼsiRNAに比較して81 - 89%でした(図3a、b)。

次の実験で、GFPのノックダウンを、HybProbeTMにより検出しました。結果の定量データは、β2M定量データで標準化 しました。GFP cDNAの増幅は、GFPのノックダウンを示さないルシフェラーゼsiRNAをトランスフェクトした細胞に比べ、GFP siRNAをトランスフェクトしたPC3 - GFP細胞では、GFP mRNAが大きく減少していることを示しました(図4b)。GFP siRNAによるGFP mRNAのダウンレギュレーションは、ルシフェラーゼsiRNAに比較して85%でした。それに対し、ルシフェラーゼsiRNAやGFP siRNAをトランスフェクトしたPC3 - GFP細胞でのハウスキーピング遺伝子の発現レベルはほぼ同一でした(図4a)。

図3.(a)mRNAレベルでのGFPの検出。
ルシフェラーゼsiRNAとGFP siRNAをトランスフェクトした72時間後のPC3 - GFP細胞におけるGFPとハウスキーピング遺伝子の比率が示される。(b)ルシフェラーゼsiRNAとGFP siRNAをトランスフェクトした72時間後のPC3 - GFP細胞における、さまざまなハウスキーピング遺伝子(β2M、G6PDH、ALAS、HPRT、PBGD)により標準化された、ルシフェラーゼ siRNAと比較したGFP siRNAでのGFPノックダウンの比率を示す。
図4.(a)ルシフェラーゼsiRNAとGFP siRNAをトランスフェクトした72時間後のPC3 - GFP細胞からのハウスキーピング遺伝子β2M cDNAを、β2M特異的プライマーとハイブプローブ(ライトサイクラー Red 640)を使用して増幅した。(b)ルシフェラーゼsiRNAとGFP siRNAをトランスフェクトした72時間後のPC3 - GFP細胞からのGFP cDNAを、GFP特異的プライマーとハイブプローブ(ライトサイクラー Red 705)を使用して増幅した。

結論

siRNAにより起こったダウンレギュレーションの特異性の確認のために、タンパク質レベルでのダウンレギュレーションが、mRNAレベルでも検出でき ることを示す必要があります。特に、GFPのような大変に安定なタンパク質では、タンパク質レベルでの高いノックダウンを観察することはしばしば困難で す。われわれはライトサイクラーシステムを使用して、タンパク質レベルでは53%の減少であるのに対して、GFP siRNAがGFP mRNAを85%減少できたことを示しました。GFP mRNAの検出のために、SYBRグリーンIとHybProbeTMを使用しましたが、両法で、ほぼ同等の結果を示しました。

ライトサイクラーシステムは、使用されたsiRNAが特異的にターゲットのmRNAをノックダウンできることを確認する、簡便で迅速な方法を提供します。

ご注意:バイオケミカニュースに記載の製品の希望価格は、2004年3月1日よりの新価格です。

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製品名 製品番号 包装単位 希望価格
ファーストストランドcDNA
合成キット(RT-PCR用)
1483188 30回反応 ←製品番号をクリック
ライトサイクラー
ファストスタートDNAマスター
SYBRグリーンIキット
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2239264 480回反応 ←製品番号をクリック
ライトサイクラー
ファストスタートDNAマスター
ハイブリダイゼーション
プローブキット
3003248 96回反応 ←製品番号をクリック
2239272 480回反応 ←製品番号をクリック
ライトサイクラー
h - ハウスキーピングジーン
セレクションセット
3310159 96回反応 ←製品番号をクリック
ライトサイクラー
h -β2Mハウスキーピング
ジーンセット
3146081 96回反応 ←製品番号をクリック
MagNA Pure LC mRNA
アイソレーションキット I
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BIOCHEMICA2004NUMBER1(No94)

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