画期的なタンパク質発現システムであるRTS(Rapid Translation System)は、進化を続けます。 ストレプトアビジン ムテインマトリックスを用いたビオチン化酵素の精製

RTS(ラピッドトランスレーション システム)コーナー

はじめに

野生型のストレプトアビジンは、ビオチンと非可逆的に相互作用すると知られています。これは、アフィニティ精製マトリックスのリガンドとしてのストレプ トアビジンの使用を妨げます。それゆえ、ビオチンとの親和性を減少させたミュータントのスクリーニングに、組換えストレプトアビジン技術が使用されまし た。3個のアミノ酸置換により、ビオチンとの解離乗数が1.3 x 10-7 Mの変異タンパク質(ムテイン)が得られました。固相化されたムテインである、ストレプトアビジン ムテインマトリックスは、簡便で安定なアフィニティマトリックスであり、ビオチン化タンパク質の優れた純度と回収率での精製を可能にします。

ここでは2種類の酵素、E. coli 由来のペニシリンGアミダ-ゼ(PGA, EC 3.5.1.11)とTrigonopsis variabilis 由来のD - アミノ酸オキシダーゼ(DAO, EC 1.4.3.3)を、RTS/AviTagテクノロジーにより、in vitro で発現、ビオチン化できることを示しました。その後、ビオチン化タンパク質はストレプトアビジン ムテインマトリックスにより精製されました。

PGAはN - 末端求核(Ntm)アミドハイドロラーゼの、構造的スーパーファミリーに属する加水分解酵素です。α(109 aa、24 kDa)とβ(557 aa、62 kDa)の 2種類のサブユニットより構成され、非共有結合作用により一体となっています。PGAはシグナルペプチド(26 aa、3kDa)と、αとβサブユニットを連結する結合ペプチド(54 aa、6 kDa)を含む前駆タンパク質から、翻訳後に作成されます。

DAOはフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)を含むオキシダーゼのプロトタイプです。D - アミノ酸の、α- ケト酸とアンモニアへの酸化的脱アミノ化を触媒します。DAOは約80 kDのホモダイマー酵素で、1つのサブユニットに、強固に結合した1分子のFADを含みます。

両酵素とも、工業的に興味がもたれています。ほとんどの6 - アミノペニシリン酸(半合成ペニシリンの前駆物質)が、ペニシリンGのPGAによる切断で製造されます。DAOは半合成セファロスポリンの主要な中間体で ある、グルタリル - 7 - アミノセファロスポリン酸の製造に使用されます。

材料と方法

発現ベクター

αendoβPGAとDAOの遺伝子は、pIVEX2.1αendoβPGAとpIVEX2.1DAOからNco I/Sma I 消化と標準的なライゲーション法により、pIVEX2.7 RTS発現ベクターにクローニングされました。pIVEX2.7dは、酵素的にビオチン化できるAviTagをC - 末端に持っています。

in vitro タンパク質発現とビオチン化反応

タンパク質の発現とモノビオチン化は、RTS 500プロテオマスター E.coli HYキットとRTS AviTag E.coli ビオチン化キットを使用して行われました。発現タンパク質はプレキャストSDSゲルトバッファーを使用したSDS - PAGEで分析しました。分離されたタンパク質はPVDFメンブレンにブロットされ(50 V、1.5時間)、そのブロットされたメンブレンはPBS/0.1% Tween - 20(PBST)中の5% 低脂肪ミルクによりブロッキングされ、洗浄の後、POD標識ストレプトアビジンとルミ - ライトウェスタンブロッティング基質により可視化しました。SDSゲルはクマシーブルー染色が行われました。

化学的ビオチン化

精製された野生型のPGAの化学的ビオチン化は、ビオチンタンパク質ラベリングキット(ロシュ・ダイアグノスティックス)で行い、ゲルろ過の代わりに透析で分離しました。

ストレプトアビジン ムテインマトリックス

ミュータントのストレプトアビジンは、標準的なBcCN法で架橋アガロースビーズに固相化されています。このマトリックスの結合能は、mlのゲル当たり2.5 mgのモノビオチン化Fabを超えています(モノビオチン化Fabの分子量は約60 kDa)。

ビオチン化PGAとDAOの精製

ビオチン化タンパク質は次の2種類の方法で精製しました:

  • 2 mlのミクロバイアル中の50μlのゲルを使用したバッチ法
  • マイクロカラム中の200μlのゲルを使用したカラム法

アフィニティマトリックスは平衡バッファー(100 mMリン酸カリウム、150 mM NaCl、400 mM硫酸アンモニウム、pH 7.2)で、事前に平衡化しました。3倍濃縮の平衡バッファーで、1:1.5に希釈した後、ビオチン化のPGAとDAOを含むRTS発現ミックスをストレ プトアビジン ムテインマトリックス(1.5倍容量の発現ミックス/ゲルのベッド容量)にロードし、室温で10分間インキュベートしました。洗浄操作は、ベッド容量の 10倍の洗浄バッファー(100 mMリン酸カリウム、150 mM NaCl、pH 7.2)で行いました。ビオチン化タンパク質は溶出バッファー100 mMリン酸カリウム、150 mM NaCl、2 mM D - ビオチン、pH 7.2)で溶出しました。バッチ法による精製の場合は、洗浄と溶出操作でゲル粒子を吸引することを避けました。

使用されたストレプトアビジン ムテインマトリックスは、洗浄バッファー(5倍ゲルベッド容量)と溶出バッファー(5倍ゲルベッド容量)による洗浄と、それに次ぐ再生バッファー(100 mMグリシン、pH 2.8; 6倍ゲルベッド容量)と平衡バッファー(5倍ゲルベッド容量)による処理で再生できます。保存には、マトリックスを保存バッファー(10 mMリン酸カリウム、0.095% NaN3 pH 7.0; 10倍容量)で洗浄し、4℃で保存します。

結果と討論

PGAとDAOのin vitro 発現とビオチン化

PGAはpIVEX2.7dαendoβPGAから発現され、PGA前駆体からα- およびβ- サブユニットへの分離の自己分解によるプロセッシングは、in vitro の条件下でも完全でした。未切断のαendoβPGAは、SDS - PAGEやSA - PODによるウェスタンブロットでは検出されませんでした(図1)。β- サブユニットにはC - 末端にAviTagが付加されていますので、このサブユニットのみがモノビオチン化され、SA - PODにおいてシグナルを発しました。PGAの化学的ビオチン化は、α- とβ- サブユニットで異なる標識挙動をもたらしました。
DAOはpIVEX2.7dDAOから発現されました。SDS - PAGEとウェスタンブロットは40 kDサブユニットでのシグナルのみが観察されました(図1)。

図1. PGAとDAOのin vitro 発現とビオチン化。
(a)コロイダルクマシー染色でのSDS - PAGE分析。(b)PVDF - ウェスタンブロッティングとSA - POD検出によるSDS - PAGE分析。クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)を発現収量の推定のためのキャリブレーションスタンダードとして使用した。

PGAbioとDAObioの精製

バッチ法による精製には、ビオチン化PGAおよびDAOを含む50μlのRTS発現ミックスを、イオン強度を増加させるために25μlの3倍濃度平衡 バッファーで希釈しました。これは、モノビオチン化物質のストレプトアビジン ムテインマトリックスへの結合を支持します。典型的には、2.5 mgのビオチン化タンパク質(約60 kD/mlゲル)をアプライできます。非ビオチン化物質を除去するために、マトリックスを洗浄した後、ビオチン化酵素は2 mMのビオチンで、分画2 - 3に溶出されました。図2は異なる精製分画のSDS - PAGE分析を示しています。

図2. ストレプトアビジン ムテインマトリックスによるPGAbioとDAObioの精製。
さ まざまな精製分画をSDS - PAGEにアプライした。電気泳動による分離後、ゲルを(a)コロイダルクマシー染色(サンプル量は元の分画の0.5μl)、あるいは(b)PVDFメン ブレンにブロットし、SA - PODで可視化した(サンプル量は元の分画の0.1μl)。

ビオチン化PGAの約30%がフロースルーと洗浄分画に現れていました。これは、たぶんマトリックスのビオチン結合部位のいくつかが、AviTagの接 近可能性やタンパク質のサイズ(>90 kD)のために接近できないと思われます。同量の発現ミックスからのビオチン化DAOは、ほとんどが結合し、良好な純度で回収されました。

同じ精製パターンは、6倍以上のサンプルとゲルベッド容量を使用しての、カラム法による精製でも得られました(データ未掲載)。

AviTagを介しての酵素的ビオチン化に対して、化学的ビオチン化では、PGAのα- とβ- サブユニットにビオチンが取り込まれました。その次の精製では、さまざまな標識タンパク質が得られました(図3)。少量のモノビオチン化タンパク質は洗浄分画に現れました。

図3.化学的にビオチン化されたPGAの精製(SA-PODウェスタンブロット)。
PGAサブユニットの位置が示される。

結論

PGAやDAOなどの複合体酵素が、RTS 500/AviTagテクノロジーにより発現およびビオチン化されました。酵素的in vitro 発現とビオチン化のアプローチは、化学的ビオチン化よりも優れていることが保証されました。ストレプトアビジン ムテインマトリックスはモノビオチン化タンパク質の迅速で簡便な精製を可能にします。

Order INFO

製品名 製品番号 包装単位 希望価格
ストレプトアビジン
ムテインマトリックス
3708152 10 ml
(50%懸濁)
←製品番号をクリック
RTS AviTag
E. coli ビオチン化キット、
リニアテンプレート
3521818 1キット
(96回反応)
←製品番号をクリック
RTS AviTag
E. coli ビオチン化キット、
プラスミド
3514919 96回反応
(RTS 100)、
5回反応
(RTS 500)
←製品番号をクリック
RTS AviTag
ビオチン化キット
3514935 96回反応
(RTS 100)、
5回反応
(RTS 500)
←製品番号をクリック
RTS 500プロテオマスター
E. coli HYキット
3335461 5回反応 ←製品番号をクリック
ビオチンプロテイン
ラベリングキット
1418165 1キット ←製品番号をクリック

BIOCHEMICA2004NUMBER1(No94)

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