プラスミドスタンダードカーブをインポートしての定量リアルタイムPCR

ライトサイクラー コーナー

ライトサイクラーソフトウェア Ver. 3.5の新しい特徴は、単一パラメーター依存的なプラスミドスタンダードカーブの構築と、未知サンプルを定量するための様々なPCRランへのインポートを を可能にする事です。正確で再現性の高い定量が、様々なランからの測定結果を使用した時にも、達成される事が示唆されます。

はじめに

リアルタイムPCRが1993年に初めて記述されて以来、この方法は特異的なmRNAターゲットの定量(定量RT - PCR)に使用される事が増えてきました。例えば、サイトカイン遺伝子発現は、免疫が介在する疾患の機構を解明するためのツールとして重要です。IL - 4、IL - 4R、IFN - γ、IFN - β、内部リファレンスとして働くハウスキーピングジーンである、ポルフォビリノーゲン デアミナーゼ(PBGD)のmRNA発現を定量するために、ライトサイクラーシステムと配列特異的ハイブリダイゼーションプローブ検出フォーマットを使用 しての、定量2ステップRT - PCRアッセイが開発されました。特異的cDNAターゲットの定量は、外部スタンダード(パラメーター特異的プラスミドスタンダード)と、相関法 (PBGDに相関)を組み合わせた操作法を使用して行われました。スタンダードカーブは、ターゲットとPBGDの絶対コピー数を測定するために使用されま した。新しいライトサイクラーソフトウェア Ver. 3.5を使用する事によって、すべてのランにおいてスタンダードカーブを作成する必要が無い事が示されました。この特別機能は、パラメータ依存的プラスミ ドスタンダードカーブを、未知サンプルでの異なるPCRランにインポートし、正確で迅速な測定の実行を可能にします。

材料と方法

外部プラスミドスタンダードカーブ

対象の各サイトカインと、ハウスキーピングジーン(PBGDをコード)に対するスタンダードカーブを作成するために、未知コピー数の外部相同DNAスタ ンダードとして、プラスミドを供しました。すべてのプラスミドスタンダードは、GeneExpress(ベルリン、ドイツ)によりクローニングされまし た。スタンダードカーブを作成するために、プラスミドはシリコン処理したチューブ内のMS2 RNA(終濃度は10 ng/μl、ロシュ・ダイアグノスティックス)中に、適切な濃度範囲(通常105 - 100)で、系列希 釈(1:10)されました。各測定パラメータに対する信頼性のあるスタンダードカーブを達成するために、プラスミドは、このスタンダードカーブ域を越えて スタンダード希釈を行い、5重数のPCR増幅を行いました。再現性をチェックするために、スタンダードカーブは数日に渡り繰り返し測定しました。スタン ダードカーブを異なるPCRランにインポートする事で、ターゲットの定量を可能にするために、103 コピーの希釈物をシリコン処理チューブに小分けし、‐20℃で保存しました。この分注液は、インポートされたスタンダードカーブを評価するための、“103 三重測定”(スタンダードを二重と未知サンプル)として使用されました。

定量リアルタイムPCR

DNA増幅とデータ採集は、ライトサイクラーシステムを使用して行いました。すべての反応は、ライトサイクラー ファストスタートDNAマスターハイブリダイゼーションプローブキット(ロシュ・ダイアグノスティックス)を使用し、4 mM MgCl2、0.5μMの各プライマー、0.15μMの各ハイブリダイゼーションプローブで行われました。サイトカインの定量のために、2μlのスタンダード希釈物(“103 三重測定”)、あるいは2μlのcDNAを加えました。陰性コントロール(H2O)は、各ランのクロスコンタミネーションをチェックするために含められました。
 反応は95℃、10分間のプレインキュベーションステップの後、95℃で10秒、60℃で10秒、72℃で15秒を45サイクル(IFN - βは50サイクル)、繰り返しました(温度の上昇率は常に20℃/s)。蛍光は60℃のアニーリング期の終わりで測定されました。生データはソフトウェア Ver.3.5で解析されました。チャンネル2での蛍光値/チャンネル3での蛍光値の比が、クロッシングポイント(CP)値を計算するために使用されまし た。

図1.異なるPCRランにインポートされた構築プラスミドスタンダードカーブは、多重硬化症を病む患者からの研究サンプルのcDNAの定量 に使用された。DNAプラスミドスタンダード(ログレンジはターゲットに依存)の1:10希釈系列(MS2 RNA:10 ng/μl)を45サイクルの五重数でPCR増幅に使用した。カーブは、クロッシングポイント(CP)に対してログで計算された濃度の平均値をプロットす る事で得られた。エラーバーは、標準偏差を表す(100個への希釈物のポイント以外はn = 5)。増幅効率は1.97から2.02の変動(IFN -γ:y = - 3.305x + 38.92、エラー = 0.0546、r = -1.00)。スタンダードカーブの誤差は、ライトサイクラーソフトウェアにより計算された、二乗平均誤差である。回帰係数は全てのケースで‐1.00で あった。(Khne BS, Oschmann P, 2002. Biotechniques 33: 1078ffを改変)

結果とアプリケーション

外部プラスミドスタンダードカーブ

対象の様々なサイトカインとハウスキーピングジーン(PBGD)を定量する際に、適切な相同プラスミドスタンダードを、cDNAとスタンダードが同様の 効率で増幅される事を確認するために、使用しました。プラスミドスタンダードとcDNAの増幅効率の比較は、以前に記述されています。図1は、異なる PCRランにインポートするために使用される、サイトカインIL - 4、IL - 4R、IFN - βとハウスキーピングジーンであるPBGDに対するスタンダードカーブを示しています。IFN - γのスタンダードカーブ(y = ‐3.305x + 38.92、エラー = 0.0546、r = ‐1.00)は、PBGDのものと正確に一致しないため、ここでは表示していません。ライトサイクラーが計算したコピー数の対数値の平均を、CP値の平均 に対してプロットした時、すべてのパラメーターにおいて5桁以上の直線間系が検出されました。

異なるPCRランへの外部スタンダードカーブのインポート

新しいライトサイクラー ソフトウェアVer. 3.5は、構築されたスタンダードカーブを、異なるPCRランにインポートするためのツールです。外部スタンダードカーブを用いて、別ファイルを作成し、 未知のcDNAを定量するための別のランにインポートする事ができます。インポートの前に必要な事は、既知濃度のサンプルをすべてのランに含める事です。 それゆえ、103スタンダード希釈ポイント(スタンダードとして指定)の二重サンプルと、一個の103スタンダードサンプル(未知として指定)が使用されます(“103 三重測定”)。スタンダードカーブデータが無いランに、スタンダードカーブをインポートした時、傾きは一定を保持し、適切なパラメーター依存的スタンダードカーブと一致します。そして、インポートしたスタンダードカーブは、103希釈スタンダードの測定CP値に応じて、y軸(CP)に沿ってシフトします。CP値が一定で、インポートされたスタンダードカーブの103スタンダードの値と一致する事が、非常に重要です。

インポートされたプラスミドスタンダードカーブの再現性

PBGD、IL - 4及びIL - 4Rのスタンダードカーブをインポートした10種類のPCRランを、“103三重測定”のCP測定値の変動をチェックするために分析しました。103サンプル(未知と指定)を、インポートされた適切なスタンダードカーブに基づく、未知サンプルの定量の正確性のコントロールとしました。“103三重測定”は、別個の分注液を異なる日ごとに測定しました。表1に示されるように、3つのパラメーターにおけるCP値の測定間変動係数は、103スタンダード二重測定と103未知測定において、1‐2%の間であり、良好な再現性を示しました。それゆえ、“103三重測定”のCP値が一定であるかぎり、異なるラン中の未知サンプルの定量にインポートされたスタンダードカーブが使用可能でした。

表1. PBGD、IL - 4及びIL - 4Rのインポートされたスタンダードカーブの再現性。
インポートされたスタンダードカーブでの10回の別々のランが以下に示される。“103三重測定”のCP値(CP STD 103 1と2:スタンダードサンプルの二重測定、スタンダードと指名:CP 103 未知:スタンダードサンプル、未知サンプルと指名)はすべてのランで測定された。変動係数(CV)は、良好な再現性を示している。

パラメーター ラン CP STD 103 CP STD 103 CP 103 傾き Y‐切片
    1 2 未知    
PBGD  1 29.99 29.77 29.86 -3.232 39.58
2 29.56 28.76 29.67 -3.232 38.86
3 28.83 28.86 29.01 -3.232 38.55
4 29.34 29.14 28.9 -3.232 38.94
5 29.43 29.25 29.42 -3.232 39.04
6 29.44 29.49 28.95 -3.232 39.16
7 29.05 29.11 29.34 -3.232 38.78
8 29.21 28.74 29.59 -3.232 38.67
9 28.55 28.14 28.67 -3.232 38.04
10 28.65 28.43 28.12 -3.232 38.24
CV(%)   1.44 1.59 1.71 0.00 1.09
IL - 4 1 25.9 26.13 26.28 -3.268 35.82
2 25.62 25.46 25.82 -3.268 35.35
3 25.64 25.45 25.45 -3.268 35.35
4 25.93 25.61 25.51 -3.268 35.57
5 25.8 25.71 25.85 -3.268 35.56
6 26.12 26.44 26.18 -3.268 35.97
7 26.62 26.54 26.09 -3.268 36.38
8 25.99 26.01 26.45 -3.268 35.8
9 25.83 25.97 25.86 -3.268 35.7
10 26.09 26.31 26.15 -3.268 36
CV(%)   1.05 1.45 1.19 0.00 0.84
IL - 4R 1 27.27 27.84 27.51 -3.399 37.75
2 27.89 27.87 27.53 -3.399 38.08
3 27.01 27.11 27.45 -3.399 37.26
4 28.1 27.55 27.64 -3.399 38.03
5 27.01 27.93 27.79 -3.399 37.67
6 26.46 26.66 27.15 -3.399 36.76
7 26.8 26.7 26.84 -3.399 36.95
8 26.59 27.14 27.03 -3.399 37.07
9 26.83 26.82 27.01 -3.399 37.02
10 26.64 26.69 26.56 -3.399 36.86
CV(%)   1.92 1.82 1.37 0.00 1.26

まとめ

各ライトサイクラーのラン毎に、スタンダードカーブを引く必要の無い事が示されました。このステップを除く事は、mRNAの正確で再現性のある定量に、大変簡便で迅速な方法を提供します。

Order INFO

製品名 製品番号 包装単位 希望価格
ライトサイクラー
ファストスタートDNAマスター
ハイブリダイゼーションプローブ
3003248 96回反応 ←製品番号をクリック
2239272 480回反応 ←製品番号をクリック
ライトサイクラー ソフトウェア Ver.3.5 1909304 1パック ←製品番号をクリック
ライトサイクラー インスツルメント 2011468 1台 ご照会
RNA、MS2  165948 500μl ←製品番号をクリック

★ソフトウェアはキャンペーン価格です。

ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社

〒105-0014 東京都港区芝 2-6-1
モレキュラー・バイオサイエンス本部
TEL. 03-5443-5287 FAX. 03-5443-7098
日本版ホームページ:http://www.rochediagnostics.jp/
(e-mail:tokyo.biochemicals@roche.com
インターナショナルホームページ:http://www.roche-applied-science.com
札幌支店 TEL.011-251-1331 FAX.011-231-1603
仙台支店 TEL.022-224-6491 FAX.022-267-3877
名古屋支店 TEL.052-220-5741 FAX.052-220-5742
大阪支店 TEL.06-4863-7621 FAX.06-4863-7625
広島支店 TEL.082-223-6151 FAX.082-223-8069
福岡支店 TEL.092-461-1021 FAX.092-461-1025

BIOCHEMICA2003NUMBER3(No92)

当社のカタログに掲載する製品は、ライフサイエンス分野の研究のみを目的としています。特に明記のない限り、診断用途目的には使用できません。カスタムバイオテック製品は、特に明記のない限り工業原料用のみを目的としています。
本ウェブサイトでは、幅広い利用者を対象とした製品情報を掲載しています。お住まいの国では利用できない製品、もしくは認可を受けていない製品の詳細情報が掲載されている場合もあります。それぞれの居住国における正当な法的手続や規制、登録、慣習法を満たしていない可能性のある情報の閲覧に関しては、当社は一切の責任を負いません。

ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社 〒105-0014 東京都港区芝2-6-1