DIG標識RNAプローブによる心臓血管系凍結切片でのmRNAの検出

DIG コーナー

以下のプロトコールは、35S-RNAプローブを用いるプロトコールを至適化したものです。この方法は、心臓血 管系における希少なmRNA(正常なヒト冠状動脈中の前炎症性サイトカインである顆粒球マクロファージコロニー刺激因子[GM-CSF]や、機能不全のヒ ト心臓雄のインターロイキン-6[IL6]やグリコプロテイン gp130)の、発現の検出を可能にしました。プロトコールは免疫組織化学的手法と組み合わされ、パラフィンおよびメタクリレート包埋切片でも使用可能で す。

材料と方法

DIG標識RNAプローブの調製

cDNAをRT-PCRにより増幅し、in vitroトランスクリプションベクターにクローニングしました。DIG標識RNAプローブは、DIG RNAラベリングキットの説明書に従い、プラスミドからin vitro転 写で作成しました。最適の結果は<600 bpのジゴキシゲニン標識RNAプローブで得られました。より長いプローブは、切片のプロティナーゼKによる処理が、プローブの変性よりも好ましい結果で した。DIG標識物の量はドットブロットにより測定しました。RNAプローブの正確な濃度を測定する事が、ハイブリダイゼーション後のバックグランドを避 けるために重要です。

組織の調製

組織サンプルは-22℃まで戻し、組織切片(4-12μm、より厚い切片は共焦点顕微鏡用)を作成します。切片はシランコートスライド上に静置し、直ちに使用するか、-80℃で保存します(数ヶ月まで)。

プレハイブリダイゼーション操作

スライドを室温で1時間、あるいはオーブン中で50℃、10分間で乾燥させます。切片に脂質が多い場合は、クロロフォルムで10分間処理します。切片を 4%PBS-パラフォルムアルデヒドで10分間固定し、5x TEで3回リンスします。必要なら、切片をプロティナーゼKで、室温10分間処理します。プロティナーゼK処理が求められるとしても、その濃度は組織のタ イプと固定法に強く依存します。血管や心筋組織には:

  • 凍結切片:2μg/mlまで
  • パラフィン包埋切片:20μg/mlまで
  • メタクリレート包埋切片:50μg/mlまで

切片はトリス-グリシン(100 mM Tris-HCl pH 7.0、100 mM Glycine)でリンスし、4%のPBS-パラフォルムアルデヒドで10分間、後固定し、TBSで5分間3回リンスします。次に切片を蒸留水で1 回(5分間)リンスし、エタノール濃度を上げながら親水化し、ホコリの無い場所で乾燥します。プレハイブリダイゼーション操作後は、切片は冷蔵庫で数日間 は保存できますが、直ちにin situハイブリダイゼーションを行った方が、至適な結果が得られます。

ハイブリダイゼーション操作

ホモロガスなプローブは50-52℃でハイブリダイゼーションされました。ヘテロガスなプローブは、より低い温度を推奨します。  ハイブリダイゼーション溶液(50%フォルムアミド、2x SSPEバッファー、10 mM DTT、1 mg/ml ニシン精子DNA、500μg/ml 酵母tRNA、1 mg/ml BSA)を80℃で10分間変性しました。切片はハイブリダイゼーション溶液中、湿式チャンバー内で2時間プレインキュベーションしました。その溶液を捨 て、ハイブリダイゼーション溶液(DIG標識RNAプローブ:0.3-1μg/ml)を加えました。堅くシールしたチャンバーを50℃、振とうウォーター バス中でオーバーナイトインキュベーションします。

ポストハイブリダイゼーション操作

スライドを4x SSCでリンスする事で、ハイブリダイゼーション溶液を完全に取り除きます。スライドを2x SSCで50℃、15分間、2回リンスし、その後に、1x SSCで50℃、15分間、2回リンスします。DIG標識RNAプローブの非特異的結合を除去するために、スライドをRNase A(10μg/ml NTE:500 mM NaCl、10 mM Tris-HCl、pH 8.0、1 mM EDTA)で37℃、10分間インキュベートします。スライドは次に0.1x SSCで50℃、10分間インキュベートします。

検出操作

検出にはDIG核酸検出キットを使用しました。切片はバッファー1で5分間洗浄され、に特異的結合は、バッファー2(バッファー1+0.5% ブロッキング試薬)で切片を1時間インキュベートする事でブロックされました。

→ アルカリホスファターゼ標識抗体

切片をAP標識抗DIG抗体、Fabフラグメント(バッファー2中に1:500-1:1000に希釈)と室温、1時間インキュベートしました。その次 に、0.05% Tweenを含むバッファー1で十分にリンスし、バッファー3で15分間で2回洗浄した後、15分間インキュベートします。スライドはその後、湿式チャン バー内で、適当な量の染色溶液と30分間 -24時間インキュベートされます(染色溶液:バッファー3のml当たり335μg NBT [ストック溶液;70% ジメチルフォルムアミド中75 mg/ml]、174μg BCIP [ストック溶液;100% ジメチルフォルムアミド中50 mg/ml]、240μg レバミゾール)。

染色溶液は5x TEでリンスする事で除去され、スライドを5x TEで15分間インキュベートする事で、染色操作を停止します。切片は蒸留水で軽くリンスし、メチレングリーンでカウンター染色します。切片は Kaiser's グリセリン-ゲラチンでマウントされました。免疫蛍光法を、in situハイブリダイゼーションと組合わせる場合は、ELF基質(ELFキット、Molecular Probes)による展開を推奨します。

→ 蛍光標識抗体

対象のmRNAが多量に発現する場合は、FITCや他の蛍光色素を標識した抗体が使用できます。 スライドはFITC標識抗DIG抗体(バッファー1中1:20-1:200)と2時間インキュベートされ、バッファー2(0.05% Tweenを含むバッファー1)で5分間、2回洗浄されました。切片はHechst Dye 33342でカウンター染色され、蛍光マウンティングメディウム(DAKO)でマウントされました。

免疫組織化学

通常、免疫組織化学はin situハイブリダイゼーションの後に、直ちに行われます。しかし、両方の検出操作により、in situハイブリダイゼーションの数週間後(数ヶ月まで)でも、素晴らしい結果が得られています。すべての洗浄操作は振とう器上で行われました。

  • ペルオキシダーゼ染色操作は、製造者の推奨に従い行われました(Vectastain Elite Kit, Vector Laboratories)。
  • 免疫蛍光:スライドは湿式チャンバー内で、PBS/1-2% BSAとインキュベートされ、その後、ブロッキング溶液が除去されました。スライドは、適度に希釈された一次抗体(PBS/1-2% BSA中)と湿式チャンバー内で、室温で1-4時間、あるいは4℃でオーバーナイトインキュベーションされました。過剰の抗体は0.05% Tweenを含むPBS中で5分間、3回洗浄する事で取り除きました。次にスライドは適切に希釈(PBS/1-2% BSA中1:500-1:1000)された二次抗体(Chemiconより供給のCy標識抗体を推奨)とインキュベートされ、PBS中で5分間、3回洗浄 した後、Hechst Dye 33342でカウンター染色され、蛍光マウンティングメディウム(DAKO)でマウントされました。

結果と討論

in situハイブリダイゼーションと免疫組織化学的染色の組み合わせが、ヒト冠状動脈中の血管細胞で発現するGM-CSFおよびタイプVIII コラーゲンを同定するために使用されました。このNon-RI操作法は、以下のものを組合わせています:

  • DIG標識cRNAプローブ(GM-CSFおよびタイプVIII コラーゲン)によるin situハイブリダイゼーション
  • 細胞型特異的抗体(平滑筋細胞:抗平滑筋アクチン、Enzo;内皮細胞:von Willebrand因子、Sigma;マクロファージ:CD68、DAKO)とPOD染色法(Vectastain Elite Kit、Vector Laboratories)を使用しての免疫組織化学による血管細胞の特徴付け。試験された抗体の70%は、この操作法でうまく行きました。

この方法は、アテローム性動脈硬化症プラクの進行、特に前進した病変における、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)を発現している 主要な細胞型である、内膜および中膜の平滑筋細胞を同定する事を可能にしました。進行した病変で見つかった、他のGM-CSF発現細胞は内皮細胞でした。 初期の病変では、GM-CSF mRNAは、主に内膜細胞、いくつかのtunica intimaの平滑筋細胞(図1A)、内皮細胞の約50%(図1B)、tunica adventitiaに 局在するマクロファージ(図1C)で発現されていました。プラク進行のすべてのステージで、GM-CSFはタイプVIIIコラーゲンと共発現していました (図2)。上記のプロトコールを使用して、我々は容易に、様々な動脈、心筋層中や培養血管細胞の凍結切片、パラフィン包埋切片中の、GM-CSFとタイプ VIIIコラーゲンを発現している細胞を特徴付けられました。

図1:DIG標識アンチセンスcRNAプローブによる、プラク進行の初期ステージにおけるGM-CSF mRNA(紫)の検出と、GM-CSF発現血管細胞型の免疫組織化学的特徴づけ(赤)。
GM-CSF mRNAは平滑筋細胞(A)、内皮細胞(B)、マクロファージで発現している。in situハイブリダイゼーションシグナルの検出には、アルカリホスファターゼによる方法を使用した。細胞型特異的抗体は、POD染色法により可視化した。
図2:DIG標識アンチセンスcRNAプローブによる、プラク進行の初期ステージにおけるプロコラーゲンα1 タイプVIII mRNA(紫)の検出。
初期の動脈硬化発生における平滑筋細胞(赤)で発現しているタイプVIIIコラーゲン mRNAを示すための二重染色。

図1と2に示すように、このプロトコールにより、様々な組織や培養細胞中のmRNAの空間的、時間的発現パターンを、容易に評価できました。

Order INFO

製品名 製品番号 包装単位 希望価格
DIG RNAラベリングキット(SP6/T7) 1175025 1キット ←製品番号をクリック
DIG核酸検出キット 1175041 40ブロット ←製品番号をクリック
AP標識抗ジゴキシゲニン、
Fabフラグメント
1093274 150 U ←製品番号をクリック
ブロッキング試薬 1096176 50 g ←製品番号をクリック
BSA 711454 20 mg
(1 ml)
←製品番号をクリック
DNA、MBグレード、魚精子由来 1467140 500 mg
(50 ml)
←製品番号をクリック
プロティナーゼK、PCRグレード 3115828 5 ml ←製品番号をクリック
NBT/BCIPストック溶液 1681451 8 ml ←製品番号をクリック
tRNA、パン酵母由来 109495 100 mg ←製品番号をクリック

BIOCHEMICA 2003 NUMBER 1(No. 90)

当社のカタログに掲載する製品は、ライフサイエンス分野の研究のみを目的としています。特に明記のない限り、診断用途目的には使用できません。カスタムバイオテック製品は、特に明記のない限り工業原料用のみを目的としています。
本ウェブサイトでは、幅広い利用者を対象とした製品情報を掲載しています。お住まいの国では利用できない製品、もしくは認可を受けていない製品の詳細情報が掲載されている場合もあります。それぞれの居住国における正当な法的手続や規制、登録、慣習法を満たしていない可能性のある情報の閲覧に関しては、当社は一切の責任を負いません。

ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社 〒105-0014 東京都港区芝2-6-1