ファストスタートTaq DNAポリメラーゼを使用しての、少量のDNAからの困難なPCR産物の特異的増幅

Tips & Facts

はじめに

サイクルシークェンスの前に十分量の特異的できれいなPCR産物を得る事は、高品質のDNAシークェンスの作成に必要とされる事です。ヘテロ接合体サン プルは明確に同定する必要があるため、高品質DNAは、ミューテーションの検出やSNPsの発見等のアプリケーションに特に重要です。

PCRの効率は、ポリメラーゼのタイプ、バッファー、プライマー濃度や安定性、dNTPの純度と濃度、サイクルのパラメーター、開始テンプレートの濃度 と複雑性などの、多くのパラメータにより制御されているため、汎用的なPCR増幅プロトコールを確立する事は不可能です。それゆえ、各PCR増幅の条件の 至適化が必要とされます。困難なテンプレート(GC-リッチ部位を含むテンプレートなど)の増幅に成功するためには、DNA鎖の分離温度が低くなるよう に、共溶媒(ジメチルスルフォキシド(DMSO))の添加が必要となります。しかし、この方法は、酵素活性を阻害し、伸長率を低下させるため、DNA量が 少ししかない場合に問題となります。

それゆえ、我々は、困難な(GC-リッチ)テンプレートを、様々な開始量のDNAから増幅させ、Taq DNAポリメラーゼとファストスタートTaq DNAポリメラーゼの性能を比較しました。

材料と方法

5-ハイドロキシトリプタミンレセプター2C(HRT2C)からの、GC含量65%を持つ540 bpのDNA断片を、Taq DNAポリメラーゼとファストスタートTaq DNAポリメラーゼを使用して、反応液量50μlで増幅した。

20 ngのヒトゲノムDNAが、0.2 mMのプライマー(5'-CAGCCATCCGGGACCTGTC-3'と5'-ACCTGCCGATTGCATATGAAC-3')を用いて、酵素に添 付のバッファー(Taq DNAポリメラーゼは10 mM Tris pH 8.3, 50 mM KCl, 1.5 mM MgCl2; ファストスタートTaq DNAポリメラーゼは50 mM Tris pH 8.3, 10 mM KCl, 2.0 mM MgCl2 , 5 mM、[NH]2 SO4)中、200 mMのdNTPsと1.5 Uの酵素で増幅された。DMSOあるいはGC-リッチ溶液(ファストスタートTaq DNAポリメラーゼに添付)のレンジは0~10%であった。

サーマルサイクリングのプロトコールは、最初のインキュベーションに95℃で15分間、その後、94℃で1分、60℃で30秒、72℃で1分間を35サイクル行い、最後の伸長ステップを72℃で10分間行った。

540 bpのPCR産物は、エチジウムブロマイドを含む1.5%のアガロースゲル電気泳動を行い、UVライトで可視化した。

図1. ファストスタートTaq DNAポリメラーゼとTaq DNAポリメラーゼを使用して、5-ハイドロキシトリプタミンレセプター2C(GC含量65%)からの、540 bpのDNA断片の増幅。様々な濃度のDMSOとGC-リッチ溶液を加えた。

結果と討論

Taq DNAポリメラーゼとファストスタートTaq DNAポリメラーゼを使用した時、DMSOやGC-リッチ溶液を添加しない場合は、十分な量の540 bpのアンプリコンを得られませんでした。

DMSOとGC-リッチ溶液の添加は、特異性と収量の点で、反応を改善しました。2%のDMSOや2~10%のGC-リッチ溶液は、2種類の酵素を使用 して特異的なPCR産物の増幅を行いましたが、ファストスタートTaq DNAポリメラーゼの方が高収量でした。Taq DNAポリメラーゼとは異なり、ファストスタートTaqはその伸長率の低下のもととなるDMSOやGC-リッチ溶液と反応しませんでした。2%以上の濃度 のDMSOは、Taq DNAポリメラーゼの活性を阻害しますが、ファストスタートTaq DNAポリメラーゼは阻害しません。ロシュ・ダイアグノスティックスにより特別に開発され、推奨されるGC-リッチ溶液との組み合わせで、ファストスター トTaq DNAポリメラーゼは、酵素活性の阻害が無く、65%という高いGC-含量のテンプレートに最適です。

両方の酵素の感度を測定するため、ヒトゲノムDNAの希釈系列(50 pg, 100 pg, 200 pg, 500 pg, 1 ng, 2 ng, 5 ng, 10 ng, 20 ng)を、2%のDMSO、あるいは2%のGC-リッチ溶液の存在下で増幅しました(図2)。検出の閾値は、ゲル上で540 bpのフラグメントのPCRシグナルとして示されるDNA量(矢印)として、定義されました。Taq DNAポリメラーゼは、2%のDMSO反応で10 ng以上、2%のGC-リッチ溶液反応中で2 ng以上の可視化PCR産物を増幅しました。ファストスタートTaq DNAポリメラーゼは少なくとも10倍以上の感度を示し、100 pgのDNAテンプレートからでも可視化PCR産物を増幅しました。これらの結果は異なる濃度の共溶媒で得られた結果からも同意された。ファストスタート Taq DNAポリメラーゼのより高い感度は、添加物(DMSOやGC-リッチ溶液)の存在下での、頑強さにより説明する事ができます。ファストスタートTaq DNAポリメラーゼは、これらの共溶媒により阻害されず、伸長率を低下させません。

図2.ヒトゲノムDNAの希釈系列が2%のDMSO並びに2%のGC-リッチ溶液の存在下で増幅された。ファストスタートTaq DNAポリメラーゼはより低い検出閾値を示した(100 pgのDNAから可視化PCR産物が得られた)。

まとめ

我々は、ファストスタートTaq DNAポリメラーゼを使用し、少量のテンプレートDNAのGC-リッチ部位の特異的PCR産物を得る事に成功しました。特異性に対するホットスタートの優 位点に加え、ファストスタートTaq DNAポリメラーゼは高濃度の共溶媒により阻害されず、100 pgという少量のテンプレートDNAからのきれいなPCR産物を保証します。それゆえ、このアプリケーションにおいて、Taq DNAポリメラーゼより優れています。

Order INFO

製品名 製品番号 包装単位 希望価格
ファストスタート Taq DNA
ポリメラーゼ
2158264 50 units
(25回PCR反応)
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2032902 100 units
(50回PCR反応)
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2032929 2 x 250 units
(250回PCR反応)
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2032937 4 x 250 units
(500回PCR反応)
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2032945 10 x 250 units
(1250回PCR反応)
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2032953 20 x 250 units
(2500回PCR反応)
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BIOCHEMICA 2002 NUMBER 4(No. 89)

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