画期的なタンパク質発現システムであるRTS(Rapid Translation System)は,進化を続けます。 RTS 100 HYの96ウェルフォーマットを使用しての、リコンビナントタンパク質の可溶性発現のスクリーニング

RTS(Rapid Translation System)コーナー

構造及び機能ゲノミクスプログラムのためには、発現量が十分で可溶性の高いタンパク質を得るハイスループット法が必須です。ここでは、E. coli セルフリーシステムである、ラピッドトランスレーションシステムRTS 100の96ウェルフォーマットでの、リコンビナントタンパク質を発現させる迅速な方法について記述します。可溶性タンパク質の同定は、抗ヒスチジンタグ 抗体を使用して、ドットブロットで行われました。

はじめに

最近の20年間で、多くの真核および原核生物からの、多くのゲノムのシークェンシングが完了し、さらに多くのものが進行中です(www.tigr.org/tdb)。 シークェンス解析に基づくと、遺伝子の多くのフラクションは未知の細胞/分子機能を持っています。主要なチャレンジの一つは、これらのオープンリーディン グフレームの生物学的機能を特定し、作用機序を解明する事です。タンパク質の3次元構造は、配列のホモロジーが低い場合にも、既知の機能を持つタンパク質 との構造的ホモロジーを検出する事で、しばしば機能の手がかりを与えます。この挑戦に立ち向かうために、世界のいくつかのセンターが構造ゲノミクスのイニ シアティブを取っています(www.rcsb.org/pdb/strucgen.html)。

構造研究のために、高収量の可溶性タンパク質が必要となります。生育の速さと、取り扱いの容易さや低コストのために、E. coli は最初に選択される発現システムです。

しかしながら、E. coli で作成されたリコンビナントタンパク質は、しばしば不溶性の凝集物として累積します。温度、添加物、誘導条件、融合パートナーの付加などのパラメータを変 える事は、リコンビナントタンパク質の挙動を改変します。それゆえ、発現と可溶性の、迅速で効率的なスクリーニング方法が必要となります。古典的なin vitro システムと比較して、リコンビナントタンパク質発現のスクリーニングにおける、より迅速で簡便なアプローチは、ラピッドトランスレーションシステムRTS 100です。

ここに、様々な微生物からの未知の機能を持つ24個のオープンリーディングフレームをスクリーニングして得られた結果を示します。可溶性に干渉する様々 な変動体をスクリーニングするために、RTS 100を使用し、2種類の温度(25℃と30℃)で、N-末端あるいはC-末端に6-ヒスチジンタグを付加したリコンビナントタンパク質を発現しました (Nt HisとCt His)。スクリーニングは96ウェルフォーマットで行いました。発現とタンパク質の可溶性は、ヒスチジンタグに対する抗体を使用してのドットブロットで 確認しました。

我々は、以下の事を可能にする、迅速法をデザインしました。

  • 多数の遺伝子やその変動体から可溶性のある候補の特徴付け。
  • プロセスの完全自動化
  • 選択された候補を同一条件でスケールアップ発現

材料と方法
発現ベクターの構築

ターゲットの遺伝子(表1)は、Nde I部位を導入するフォワードプライマーと、Xho I部位、ストップコドン、Bam HI部位を導入するリバースプライマーを用いて、相当するゲノムDNAからPCRで増幅された。定量の後、1μgの各PCR産物はNde IとXho I、及びNde IとXho Iで消化し、DNAゲル抽出キットで精製された。T7プロモーターと、N-末端タグ(Nt His)あるいはC-末端タグ(Ct His)のコントロールの下、リコンビナントタンパク質を発現するために、相当する消化PCR産物がpIVEX2.4b-NdeやpIVEX2.3-MCSのフレームにそれぞれサブクローニングされた。リコンビナント発現ベクターのすべてのDNAは、グラスファイバースピンチューブとスピンミニプレップキットを用いて調製された。

表1.発現と可溶性のin vitro スクリーニングのために選択されたタンパク質のリスト。タンパク質名は微生物DNA(PCRにより増幅)に関連する2文字と、Micoplasma pneumoniae GenInfoIdentifier(GIナンバー)の最後の3桁に相当する3つの数字に基づいている。同じ3桁の数字と違う文字を持つ2つのタンパク質は、異なる微生物からの、相当するM.pneumoniae のオープンリーディングフレームのホモグロである事を示す。

タンパク質 生物 GIナンバー 分子量(kDa)
AA967 Aquifex aeolicus 2983573 36.2
BS217 Bacillus subtilis 2633884 16.5
BS676 2635300 19.1
BS742 2632368 20.1
BS967 2633961 35.7
BS994 2633216 18.6
EC731 Escherichia coli 1790387 11.7
EC836 1787757 15.1
MG217 Mycoplasma genitalium 3844824 17.8
MG222 3844817 44.6
MP003 Mycoplasma pneumoniae 1674003 13.6
MP004 1674004 16.8
MP034 1674034 16.2
MP182 1674182 13.4
MP217 1674217 16.3
MP235 1674235 17.7
MP278 1674278 29.0
MP865 1673865 31.0
MP883 1673883 15.4
MP920 1673920 40.5
MP958 1673958 22.4
MP967 1673967 36.6
TM142 Thermotoga maritima 4981173 31.2
TM915 4981625 15.8

96ウェルプレートでのin vitro タンパク質発現

タンパク質の発現と可溶性のin vitro スクリーニングは、セルフリータンパク質合成システムのRTS 100 E. coli HYキットを使用して行った。反応はロシュ・ダイアグノスティックスの使用説明書に従い、50μlの反応液をPCR 96ウェル反応プレートに分注した。

150μgのDNAテンプレートを加えた後、反応はプロテオマスターインスツルメントやPCRデバイス中で、25℃と30℃で4時間インキュベートし た。インキュベーションの後、4℃で20分間、3,000 gで、トータル反応ミックスを96ウェルプレート中で遠心した。

ドットブロット法

リコンビナントタンパク質の発現をテストするために、1.5μlのトータルタンパク質抽出物が、Hybond ECLニトロセルロースメンブレン上にスポットされた。調製されたメンブレンは風乾され、3%の粉ミルク中に1:5000に希釈された抗Hisモノクロー ナル抗体と、1時間インキュベートされた。次に、メンブレンはTBST(50 mM Tris-HCl pH 7、250 mM NaCl、0.05% Tween 20)で10分間、3回洗浄された。二次抗体として、POD標識抗マウスIgがTBST + 3% BSAで1:2000に希釈され、20分間アプライされた。TBST中で10分間、3回洗浄された後、ブロットは、3,3',5,5'-テトラメチルベン チジン(TMB)溶液で発色された。

結果とアプリケーション
可溶性タンパク質が発現される場合の条件のスクリーニング

24個の、様々な微生物からの11.7 kDaから44.6 kDaと推測されるタンパク質をコードしたORFが、可溶性のタンパク質の96ウェルフォーマットでのin vitro 発現を可能とする条件を同定するために使用されました。N-末あるいはC-末にヒスチジンタグを持つリコンビナントタンパク質が、2種類の温度(25℃と 30℃)でRTS 100 HYキットを使用して、50μlの反応液量で発現されました。総タンパク質と可溶性のタンパク質発現に相当するドットブロットは、図1aと1bにそれぞれ 示されました。24個のORFの内、3個(BS967, EC836, MP883)は、in vivo では検出可能な発現でしたが、ここでは、低い発現レベルでした。in vitro 発現条件の至適化は、これらのタンパク質の発現レベルを高めると考えられます。発現タンパク質のほぼ50%が、in vitro で検出可能な可溶性の発現レベルを示しました。それ以上に、ヒスチジンタグの局在がin vitro リコンビナントタンパク質の可溶性(Nt His TM915 , MP278とCt His MG217)のみならず、発現量(Nt His BS967, MP967, MP217, MP003, MP182, MP958とCt His EC836を参照)にも影響を与えました。温度を低くする事は、in vivo に比べ、in vitro ではリコンビナントタンパク質の可溶性発現を増加させないようでした。

図1.25℃および30℃でin vitro 発現されたリコンビナントタンバク質のドットブロット。
タンパク質サンプルはニトロセルロールメンブレン上にスポットされた。His6-タグタンパク質は、抗ヒスチジン抗体で試験された。a)反応ミックスからのトータルタンパク質。b)遠心されたミックスからの可溶性タンパク質(Nt His:N-末端His6-タグ、Ct His: C-末端His6-タグ)

ユニバーサルなタグを介してのタンパク質同定を行うドットブロット法は、可溶性タンパク質を発現しているクローンの正確な定量検出を可能にします。今まで、この方法はタンパク質濃度の定量測定には至適化されていませんでした。in vitro 発現反応は同じ量のDNAテンプレートの存在下で行われますので、発現レベルの迅速な比較がスキャンや肉眼で行えました。

ほとんどのタンパク質は、in vivo ならびにin vitro で同様に振る舞うので、セルフリーシステムは、時間のかかる in vivoシステムの代わりに、可溶性タンパク質を得るための構築物とパラメーターの同定に使用できると考えられます。

RTS 100の簡便さと結果を得るまでのスピードは、構造ゲノミクスでの期待に大きく合致します。その上、タンパク質発現の迅速なスケールアップが可能で、構造研究にかなう発現レベルが得られました。

Order INFO

製品名 製品番号 包装単位 希望価格
RTS 100 E.coil HYキット 3186148 1キット
(24回反応)
←製品番号をクリック
3186156 1キット
(96回反応)
←製品番号をクリック
RTS pIVEX His-tagベクター 3253538 5ベクター ←製品番号をクリック
RTS プロテオマスター 3265650 1台 ご照会

BIOCHEMICA 2002 NUMBER 4(No. 89)

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