プロテオマスター-ナレッジベースによるタンパク質発現の至適化ソフトウェア

RTS(Rapid Translation System)コーナー

はじめに

様々なタンパク質の製造において、収量に影響するファクターを同定するための多くの進歩があったにもかかわらず、ある発現システムにおける、ある種のタ ンパク質の発現はしばしば至適化を必要とします。例えば、より高いタンパク質収量は、様々な発現ベクターの試験、N-あるいはC-末端へのタグ配列の導 入、コード配列内の1塩基の変換により、得られるでしょう。しかしながら、多くのケースで、これらの至適化戦略は試行錯誤に基づき、時間と金のかかるもの です。

より合理的な戦略への必要性を明らかにするために、我々は、ある発現システムでの収量に影響するファクターを注意深く研究することにしました。簡便な使 用法とオープンシステムの特性が、mRNA配列パラメータの理論的計算と組み合わされ事で、多数のハイスループット発現データの作成を容易にするため、セ ルフリーRTSはこの目的に高度に適していることが明瞭です。これらのデータの補正分析に基づき、従来の試行錯誤的な至適化法の制限を克服する、ナレッジ ベースによるタンパク質発現の至適化プログラムであるプロテオマスターを作成することが可能となりました。プロテオエキスパートは、インターネット経由の アプリケーションとして、www.proteoexpert.com/を通じて供給されます。

プロテオエキスパートの特徴

発現テンプレートの配列を変動させることは、タンパク質の発現収量に関する問題を指摘するために使用される方法です。配列的変動体は、試行錯誤的あるい はバイオインフォマティックスソフトウェアにより行われた予測に基づき、作成することができます。しかし、これらのソフトウェアの多くは、純粋な理論的計 算(mRNAの二次構造予測など)に基づいていますので、それらを使用して得られた結果は、しばしば満足できません。それに加え、現在得られるほとんどの 至適化ツールは生化学的実験により検証されておらず、ソフトウェアのアウトプットは実際的な推奨手順や実験的操作法を含んでいません。

プロテオエキスパートはBiomax Infomatics(Martinsried, Germany)とロシュ・ダイアグノスティックスの協力により開発されました。ある特定のシステムのために作られた特注品であり、従来の至適化プログラ ムよりも強力です。現在のバージョンのプロテオエキスパートは以下の機能を持っています。

  1. 700種類以上のmRNA配列の理論的解析と、相当するタンパク質の発現から得られた実験データから派生したアルゴリズム。
  2. 実験ワークフローに直接組み込める、高収量cDNA変動体を調製するための推奨手順。
  3. 試験された全ての低収量タンパク質の約90%において実質的な収量の増加が示唆された、高い成功率。

プロテオエキスパートの計算出力は、以下の詳細なワークフローに従うことにより、RTSにおいていかに発現収量を改善するかという、詳細な推奨手順が含まれます(図1):

  1. プロテオエキスパートサーバに承認された、入力cDNA配列から開始して、プログラムはサイレント N-末端ミューテーションにおいて、野生型から派生した10種類の変動物を作成します。高い確率で、これらの変動物はオリジナルの配列に比べ発現収量の実 質的な増加を与えます。計算はBiomaxにあるサーバ上で行われます。
  2. プロテオエキスパートの計算結果に基づき、提案された変動物がRTS E. coli 直鎖テンプレート作成セット、His-タグあるいはHA-タグを使用して、PCRで簡単に作成できます。遺伝子特異的プライマー配列やPCR条件に関する詳細な推奨もプロテオエキスパートのアウトプットの一部です。
  3. PCRで作成された至適化テンプレートは、DNAの精製やクローニングを行うこと無く、RTS 100 E. coli HYキットでの発現に直接使用できます。
  4. プロテオエキスパートはまた、潜在的な内部翻訳開始部位、翻訳産物の物理的性質、アミノ酸配列内に存在するシグナルペプチド、シャペロンとの推定上の相互作用、などに関する情報も提供します。

図1.RTSテンプレート作成および発現キットに従う、プロテオエキスパートの計算に基づくテンプレートの至適化への推奨されるワークフロー。

プロテオエキスパートへのアクセス法

他のウェブでのサービス(オンライン バンキングなど)と同様、プロテオエキスパートの使用には、プログラムが配列を受け入れる毎に、特別なアクセスナンバーが必要です。プロテオマスターのア クセスナンバーは、ロシュ・ダイアグノスティックスから3種の包装サイズとして入手することができます。アクセスナンバーのリストは、データの受け入れに おける必須のステップと解析法を記述した、ユーザーズガイドである小冊子と共に、安全に配布されます。

プロテオエキスパートは自身のウェブサイト、www.proteoexpert.com/をBiomax AGのプロテオエキスパートサーバ上に持っており、広範囲で詳細なマニュアルがダウンロードできます。

安全管理と秘密保持について

プロテオエキスパートへのアクセスナンバーを注文した後、ユーザーは以下のことが可能です;

  • プロテオエキスパートサーバへの登録と個人アカウントの作成
  • 低タンパク質収量と知られる、あるいは予想される発現テンプレート配列の提示
  • どのように至適化変動物を実験的に作成できるかについての推奨手順の受信

全てのデータ転送は、ユーザーとBiomax Infomatics AGを独占的に接続するセキュアソケットレイヤー(SSL)を使用して行われます。それゆえ、転送データはRocheを含む第3者にはアクセスできず、秘密保持が保証されます。

評価と典型的結果

プロテオエキスパートの計算の正確性をテストするために、主にヒト由来の52種類の様々なcDNA配列を用いて、評価研究を行いました。プログラムにより提案された変動物(入力した配列当たり10種類)をPCRにより作成し、RTS 100 E. coli HY反応で発現し、ウェスタンブロッティングで比較しました。研究に使用された52種類のcDNAの内、48種類が野生型ではRTS 100反応で低収量でした。このうちの47種類(トータル52個の90%)がプロテオエキスパートにより至適化でき、2-10倍のタンパク質収量の増加を 導きました。プロテオエキスパートによる計算で成功した実験の典型例を図2に示します。それ以外の例と、その実験操作の詳細は、www.proteoexpert.com/で入手可能です。

図2.野生型の配列(wt)とプロテオエキスパートにより計算されたcDNA変動物の収量比較。
RTS 100 E. coli HYのバッチ反応から3μlを分取し、抗His6抗体によるウェスタンブロッティングで分析した(実験の詳細とその他の例はwww.proteoexpert.comを参照)。

結論

プロテオエキスパートオンラインアプリケーションは、より高いタンパク質収量に到達するための発現ベクターの至適化を可能にします。現在のプロテオエキ スパートのバージョンは、特にセルフリーRTSシステムに適用しています。これらのインフォメーションサービスをお届けすることにより、研究プロジェクト の簡略化と至適化を可能にするバイオインフォマティックスソリューションを提供するという、我々のゴールに到達するでしょう。

Order INFO

製品名 製品番号 包装単位 希望価格
ProteoExpert
RTS 100 E. coli HY
3115569 1回計算 ←製品番号をクリック
3115577 5回計算 ←製品番号をクリック
3115585 25回計算 ←製品番号をクリック
RTS E. coli リニアテンプレート
作成セット、His-Tag
3186237 1セット
(96回反応)
←製品番号をクリック
RTS E. coli リニアテンプレート
作成セット、HA-Tag
3315860 1セット
(96回反応)
←製品番号をクリック
RTS 100 E. coli HYキット 3186148 1キット
(24回反応)
←製品番号をクリック
RTSプロテオマスター 3186156 1キット
(96回反応)
←製品番号をクリック

BIOCHEMICA 2002 NUMBER 3(No. 88)

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