改変トランスレーションシステムを使用しての、 メラノーマインヒビトリー活性(MIA)タンパク質の組換え発現

RTS(Rapid Translation System)コーナー

メラノーマインヒビトリー活性(MIA)タンパク質の組換え発現は、時間がかかり面倒な操作法を要するものです。分子の正確なリ フォールディングは、高度にクリティカルで、手間のかかる操作法によってのみ達成されてきました。いくつかの実験(予備実験やミューテーション分析)に は、少量のタンパク質しか必要ではありません。煩雑な操作法を避けるため、我々はMIAの作成に2種類のRTS製品をテストしました。高収量キットは最高 のタンパク量をもたらしました。機能試験は、in vitro 翻訳されたMIAが正しいフォールディングと活性を持つことを確認しました。

はじめに

MIA(メラノーマインヒビトリー活性)は、ヒトメラノーマ細胞株から分泌タンパク質としてクローニングされました。MIAは悪性メラノーマと軟骨細胞 で発現、分泌されます。最近の研究は、MIAがフィブロネクチンなどの細胞外マトリックス分子からのメラノーマ細胞の解離を仲介することで、腫瘍の進行や 転移に重要な役割を持つことを示しています。MIA発現レベルは、有性動物における転移を形成するメラノーマ細胞の能力と強い相関性があります。

最近、MIAの3次元構造が多元核磁気共鳴(NMR)で決定されました。データは、MIAが溶液中でSH3ドメイン様フォールドを持つ分泌タンパク質の新しいファミリーであると定義されることを示しています。

材料と方法

MIA cDNAのpIVEX2.3-MCSへのクローニング
MIA cDNAは次のプライマーを用いてPCRによりサブクローニングのために増幅された。
MIA pIVEX2.3-MCSフォワード:
→GCT ACC ATA TGG GTC CTA TGC CCA AG
MIA pIVEX2.3-MCSリバース:
→GCT ACG GAT CCT TAT TAT CAC TGG CAG TAG AAA TC
インサートはpIVEX2.3-MCSのNde I/Bam HIサイトにクローニングした。

RTSによるMIAの組換え発現

以下のRTS製品を使用した。

  • RTS 500 E. coli 環状テンプレートキット
  • RTS 500 E. coli HYキット

ウェスタンブロッティングとMIA-ELISA

MIAタンパク質量はウェスタンブロッティングとワンステップMIA-ELISAで測定した。MIA in vitro 翻訳産物の希釈系列を、Roti-load-buffer (Roth)を加えた後、10分間、70℃で変性し、4-12%のグラジェントSDS-PAGEゲル (Invitrogen)で分離した。ウェスタンブロット後のMIAタンパク質の検出はポリクローナルの抗MIA抗体を1:150に希釈して行った。標準 化は、E. coli で発現させたrMIAを使用した。
MIAは市販のELISAキットの測定法に従い、供給されている内部スタンダードを用いて測定した。

インベージョンアッセイ

インベージョンアッセイは、以前に記述したようにケモアトラクタントとして線維芽細胞コンディション培地を使用して、8μmの孔径を持つポリカーボネートフィルターを含むBoydenチャンバー内で行った。

結果とアプリケーション

今まで、MIAの組換え発現は煩雑で時間のかかる操作法が要求されていました。MIAの、2個のジスルフィド結合を持つ、機能的に活性のあるタンパク質 正確なリフォールディングはクリティカルなステップです。いくつかの細胞発現システム(pETベクター[Novagen]、pGEXベク ター[Pharmacia]、pQEベクター[Qiagen])が、FPLCやHPLC機器を使用しての煩雑な操作法により、大量の組換え、機能性MIA を得るための至適な操作法を確立する事が試みられてきました。予備およびミューテーション分析に十分な量を、迅速および効率的に得るために、in vitro トランスレーション(IVT)が採用されました。標準的なIVT法では成功しなかったため、我々はラピッドトランスレーションシステムをテストしました。

MIA発現の収量とその正しい機能を分析するために、3種類のシステムを使用しました:内部スタンダードによるウェスタンブロッティング、MIA- ELISA、インベージョンアッセイ(Boydenチャンバー)です。プローブ中のMIAの総量はウェスタンブロッティング、正確なフォールディングの検 出はELISAで評価されました。インベージョンアッセイを用いて、(MIA機能活性を反映する)メラノーマ細胞の接着を阻害するMIAの能力を測定しま した。

図1.RTSでIVT発現させたMIAのウェスタンブロット分析。
RTSにより発現したMIAの量は、rMIA(5 ng、10 ng、20 ng)と比較して測定した。MIAの分子量は11 kDaである

2種類のRTSキットがMIAの実験で評価されました:それは、RTS 500 E. coli 環状テンプレートキットとRTS 500 E. coli HYキットです。インキュベーション温度は25℃と30℃に変動しました。
 ウェスタンブロッテイングは全てのシステムで相当量のMIAタンパク質が発現されたことを証明しました(図1)。最も高い発現は、RTS 500 E. coli HYキットを30℃で使用した時に達成されました。MIA-ELISAを用いて、正しくフォールディングした組換えMIAの量を測定しました(表1)。正しくフォールディングしたMIA量が最も高いのは、同じくRTS 500 E. coli HYキットを30℃で使用した時でした。正しくフォールディングされたタンパク質のパーセンテージによると、最良の比は25℃でのRTS 500 E. coli HYキットで得られました。

表1:RTSでのMIA発現-異なる温度でのウェスタンブロット(WB)とELISAでの結果を示す。最後の列はウェスタンブロッティングとELISA測定で比較された正確にフォールディングされたタンパク質の比率を表す。

サンプル MIA
(μg/ml)
WB
MIA
(μg/ml)
ELISA
正確なフォールディングの比率
25℃でのRTS 500 E. coli
環状テンプレートキット
110 22.3 22.2
30℃でのRTS 500 E. coli
環状テンプレートキット
44 2.33 5.2
25℃でのRTS 500
E. coli HYキット
105 22.5 24.3
30℃でのRTS 500
E. coli HYキット
1,100 52.9 4.9

インベージョンアッセイにおいて、各アッセイでほぼ同量のタンパク質でIVTサンプルを使用しました。インサートの無いベクターのIVTサンプルを、陰性コントロールとして使用しました。RTS発現MIAタンパク質は、メラノーマ細胞接着を阻害すると知られている、天然のMIAと同様に観察されました。

図2.インベーションアッセイで試験されたRTS MIAの機能活性。
RTSサンプルは、各アッセイでほぼ同量のタンパク質で、Boydenチャンバー内で使用された。インサートの無いベクターのRTSサンプルが陰性コントロールとして使用された(反応バッファー)。

まとめ

RTS、特に高収量キットを使用して、我々は十分な量と機能的に活性を持つMIAタンパク質を製造しました。MIAは特にIVTシステムで組換え発現が 困難なので、これは大変有望な結果でした。MIAタンパク質の正しいフォールディングをサポートする追加試薬は、より正しいフォールディングタンパク質の 割合を良くすると思われます。

Order INFO

製品名 製品番号 包装単位 希望価格
RTS 500 E. coli HYキット 3246817 1キット(2回反応) ←製品番号をクリック
3246949 1キット(5回反応) ←製品番号をクリック
RTS 500 E.coli
環状テンプレートキット
3018008 1キット(5回反応) ←製品番号をクリック
MIA ELISA 1976826 1キット(96テスト) ←製品番号をクリック

BIOCHEMICA 2002 NUMBER 3(No. 88)

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