<結核菌(M.tuberculosis)のRFLP解析の標準化と省力化-検査室におけるDIGシステム>

DIG コーナー

はじめに

結核菌の疫学マーカーとして以前は,薬剤感受性パターンやファージ型別が用いられていましたが,より特異性の高いIS6110をプローブとしたRFLP の有用性が90年代に数多く報告され,日本においても結核研究所にて広く研究され,現在では最も有効な方法として利用されています.当所においても、安全 実験室の整備を機会に、三重県内で発生した集団感染の疑いのある事例についてRFLPを実施することとなりました。しかし、本法の手技は決して簡便とは言 えず、他の業務に支障が出ないよう極力省力化するため、DIGシステムを採用して試薬調製の手間を省いています。

材料と方法

1)DIG標識DNAプローブの作成

PCR DIGプローブ合成キットの取扱説明書に従い、以下の操作手順で標識プローブを作成した。テンプレートDNAの調製には、市販DNA抽出キットを用いた。

反応溶液の調製:
試薬 容量
滅菌再蒸留水 30.25μl
10x PCRバッファー(バイアル3) 5μl
PCR DIGラベリングミックス(バイアル2) 5μl
プライマーISN-1, ISN-2(50μM) 各2μl
Expand HF酵素ミックス(バイアル1) 0.75μl
テンプレートDNA 5μl
トータル 50μl
サーマルサイクラーの温度プロファイル:
  温度 時間 サイクル数
最初の変性 95℃ 2分  
変性
アニーリング
伸長
94℃
60℃
72℃
10秒
30秒
2分
40x
最終の伸長 72℃ 7分  

作成したプローブはスピンカラムで精製し、10μLづつマイクロチューブに分注して、-20℃で保存した。

2)ブロットの作成

  1. 市販DNA抽出キットを用いて結核菌から抽出したDNAをPvu IIで切断後,DIG標識DNAサイズマーカーIIIと共に0.8%アガロースで電気泳動分離
  2. アルカリ変性溶液(0.5N NaOH,1.5M NaCl)でゲルを室温、15分×2回処理
  3. 蒸留水で洗浄
  4. 中和溶液(0.5M Tris-HCl,3M NaCl pH7.5)でゲルを室温、15分×2回処理
  5. 3時間~O/Nのキャピラリー・トランスファー(20×SSC,GIBCO BRL)でニトロセルロースメンブレンへ転写
  6. UV固定(120mJ)
  7. 蒸留水で洗浄

3)ハイブリダイゼーション

  1. DIG Easy Hyb(30mL/100cm2)を使用してDNAオーブン内で42℃、30分のプレハイブリダイゼーション
  2. ハイブリダイゼーション溶液(DIG Easy Hyb 30mL+変性したプローブ 10μL)を使用してDNAオーブンで42℃、O/Nのハイブリダイゼーション
    [再利用する場合は,ハイブリダイゼーション溶液を回収し、日付とプローブ名を明記し-20℃保存した。]
  3. 2×洗浄液(2×SSC,0.1%SDS)で振盪しながら室温で洗浄(5分×2回)
  4. 0.1×洗浄液(0.1×SSC,0.1%SDS)で振盪しながら42℃で洗浄(5分×2回)

4)DIG化学発光検出

  1. 検出系で必要となる各種バッファーの調製にはDIG洗浄&ブロックバッファーセットを利用した。~の各ステップは、室温で振とうしながら行った。
  2. 1×洗浄バッファーで1分リンス
  3. 1×ブロッキング溶液(30mL)で30分インキュベート
  4. 希釈抗体溶液(1×ブロッキング溶液30mL+AP標識抗DIG抗体1.5μL)中で30分インキュベート
  5. 1×洗浄バッファー(100mL)で15分、2回洗浄
  6. 1×検出バッファー(30mL)中で2分平衡化
  7. CPD-Star, ready-to-use(0.5mL/100cm2)をメンブレンへアプライ
  8. メンブレンの入ったハイブリダイゼーションバックをシール

図1.M.tuberculosis のRFLP解析

結果と考察

図1に示したように、Lane 1~Lane 4の検体が同一のパターンを示し、保健所の調査を裏付ける結果となりました。結核菌の疫学マーカーとしてIS6110をプローブとしたRFLPの有効性に ついては、多くの報告により実証されていますが、その手技は煩雑です。当所のように行政に属する研究機関では、転勤による人の入れ替わりが常に考えられ、 一定以上のクオリティを得ることと、突然の依頼に対して、他の業務への影響を最小限とするために、コストは高くなるものの、市販キット等の導入が有効で あったと思われます。

参考文献

  1. Van Embden J.D.A.,Cave M.D.,Crawford J.T. et al.(1993)Strain identification of Mycobacterium tuberculosis by DNA fingerprinting: recommendations for a standardized methodology. J.Clin.Microbiol.,31,406-409
  2. 高橋光良(1998)RFLP分析を用いた結核菌の分子疫学,日本細菌学雑誌,53,662-668
  3. DIGシステムを用いてハイブリダイゼーションを行うためのユーザーガイド 第2版,Roche Diagnostics GmbH
  4. Tabet S.R, Goldbaum G.M, Hooton T.M et al(1993)Restriction fragment polymorphism analysis detecting a community based tuberculosis out break among persons infected with human immunodeficiency virus, J. Infect. Dis., 169, 189-192
  5. Takahashi M., Kazumi Y., Fukuzawa Y. et al(1993)Restriction fragment length polymorphism analysis of epidemiologically related Mycobacterium tuberculosis isolates, Microbio. Immunol., 37, 289-294

(今回、三重県科学技術振興センター 保健環境研究部 微生物研究グループの岩出 義人先生のご厚意によりご提供頂きました。)

Order INFO

製品名 製品番号 包装単位 希望価格
1636090 1キット(25回標識分) ←製品番号をクリック
DIG標識DNA MWM 1218603 5μg(500μl) ←製品番号をクリック
DIG Easy Hyb 1603558 500ml ←製品番号をクリック
DIG Wach & Block Buffer Set 1585762 1セット(30ブロット分) ←製品番号をクリック<
Anti-DIG-AP,Fab fragment 1093274 150U(200μl) ←製品番号をクリック
CDP-Star,ready-to-use 2041677 2x50ml ←製品番号をクリック
Lumi-Imager F1 Work Station 2012847 1台 ご照会

BIOCHEMICA 2002 NUMBER 2(No. 87)

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