BrdU ELISAを用いての細胞増殖の定量的測定: 発色と発光検出の比較

Tips & Facts

はじめに

培養細胞のDNA合成の定量的測定は、今や多くの研究室で日常的な手法となっています。多くのアプリケーション、特に細胞培養システムに対するプロト コールが入手可能です。成長因子の効果、外在性因子による細胞分裂の阻害、サイトカインによる刺激/阻害、無血清培地の開発、増殖におけるホルモンとレセ プター活性の影響、異数倍数体細胞の選択優位性などは、DNA合成の測定が重要な情報をもたらす実験例です。

過去には、3H-標識チミジンでの新規合成DNAのタギングが最も繁用された方法でしたが、現在では、チミジンアナログである BrdUによるNon-RI標識の使用が増加しています。BruUと抗BrdUを使用した免疫学的手法の優位性は討論されていませんし、BrdUを検出す るシステムの範囲と限界についても常に明確に定義されているわけではありません。これらの実際的局面は、以下に述べられた実験で詳細が検討されました。細 胞レベルでの顕微鏡検出の他に、ELISA法が日常的なスクリーニング法として存在します。2種類の検出システムが入手可能ですが、それは両法とも抗 BrdUに基づく、a)従来よりの発色法と、b)化学発光法です。

我々は特にヒト前立腺上皮細胞の継代培養に興味を持っています。この目的のために、外因性の成長因子やホルモンを加えた特殊な培地を開発しました。この 過程において、我々はBrdU ELISA(ロシュ・ダイアグノスティックス)の発色法と化学発光法を平行して実験しました。

材料と方法

我々の特殊な細胞培養システムの詳細と、現在使用している細胞増殖の測定法の短報は報告済みである。我々はすでに確立した2種類のヒト前立腺ガン細胞株、P1/289とP1/373の増殖を検討した。
予備実験において、適切な培養条件と標識間隔、適切な細胞濃度を決定した。ここでは細胞株P1/289とP1/373のDNA合成における成長因子(外 皮成長因子、EGF)の影響と、インシュリン(Ins)とハイドロコルチゾン(HC)の効果を評価した。この実験では、104個の 細胞が200μl培地/ウェルの標準的な96ウェルマイクロタイタープレートに播種され、10%のFCS、添加剤としてEGF(10 ng/ml)、ハイドロコルチゾン(10 ng/ml)、コレラ毒素(CT、10 ng/ml)、インシュリン(4μg/ml)を含む完全培地(DMEM/ F12+、ライフテクノロジー)で培養された。細胞増殖における添加剤の効果を 検討するために、それらが不在の培地(DMEM /F12-)でも平行して培養した。

他の培養モデルに関係する第2のアプリケーション:不均一な組織サンプルから培養細胞を確立する時、上皮細胞の増殖を抑えるために、コレラ毒素の存在下 での内皮細胞の培養が推奨される。通常の細胞培地に加えた時、このコレラ毒素は上皮細胞の増殖を抑制する。それに従って、摘出組織(ZF 07)から得られたヒト上皮細胞をマイクロタイタープレートで培養した。標準培地(DMEM)でのDNA合成率が測定され、上皮細胞の成長を阻害するコレ ラ毒素(Sigma)を含む培地(DMEM+CT)での合成率と比較された。

第3セットの実験において、ヒト臍帯血管内皮細胞(HUVEC)のための無血清培地(PromoCell)の利点を、標準培地(RPMI+10% FCS)と比較実験した。

それぞれのケースで、細胞の種24時間後、終濃度1μMのBrdUを加えた。更に24時間インキュベーション後、DNA合成を細胞増殖 ELISA BrdU(ロシュ・ダイアグノスティックス)の発色および化学発光検出キットで分析した。新たに合成されたBrdU-DNAはELISAリー ダー(BioRad、450)およびルミノメーター(Orion, Berthold Detection Systems)で測定した。

結果

結果は、細胞の増殖挙動と標識条件に依存し、発色と化学発光の2つの検出システムで大きく異なる結果が得られたことを示した(図1)。

図1.増殖の発色と化学発光測定の感度比較。

ホルモン、増殖因子、毒素、処理した前立腺ガン細胞株P1/289とP1/373の場合、化学発光では、50%以上のDNA標識インデックスの増加が観 察されたが、同じ細胞で、発色BrdUアッセイではわずか20%の増加であった。上皮細胞培養でのコレラ毒素による生育阻害は、BrdUの取込みを顕著に 減少させ、10 ng/mlのコレラ毒素存在下、同じ検出システムで、コントロールの44%と35%であった。

新たに合成されたDNA量として発現される、増殖挙動の変化における類似の結果は、またヒト臍帯血管内皮細胞を用いた比較実験でも得られている。この場 合では、PromoCellの無血清培地が増殖に対して明確な促進能を持ち、発色アッセイで49%、化学発光アッセイで50%と、RPMI標準培地に比べ ほぼ50%の増加を示した。

討論

結果は、従来の発色法が測定の直線域において制限があることを示しています。一般的に、この直線性は、吸光度0.5から1.5の間に見られます。多くの リーダーはより高い吸光度(しばしば3まで)を読むことができますが、測定した吸光度とBrdUの実際の取込みとの間の直線関係は、これらの範囲には存在 しません。従って、増殖因子による細胞株の増殖や阻害における増加を記録したいなら、以下の2つの可能性しかありません。

a)直線域の制限内で測定を行う。これは、適切な予備実験を必要とする。
b)数桁以上の直線域を持つテストを使用する。

総合的に言えば、直線域が8-4桁をカバーし、同一実験でのDNA合成インデックスの大きな変化を検出、記録が可能なため、化学発光システムの使用は大 きな優位点を持っています。最初に、ヒト前立腺ガン細胞株の培養のために様々な添加剤を入れた培地は、16%と20%の増加が記録されたBrdU発色デー タの基づくと、必要が無いように見えます。しかし、細胞増殖の程度は、すでに非直線領域での値を導き出しています。化学発光テクニックの使用は、様々な データセットの結果を示します。この場合、細胞株に依存して、培地への添加により、55%および63%の増殖促進を達成しています。これらのテストシステ ムを評価した際の問題は、一つの実験に多くのパラメータが関与しているため、この実験での発色テストの直線域を選択するために、別法は実際的ではありませ ん。増殖インデックスやBrdUの取込みでのポジティブおよびネガティブな変化は、パラメータからパラメーターを変動させます。それゆえ、しばしば細胞数 や標識時間を変えるなどの、いくつかの実験を繰り返す必要があります。

発色法は、短い標識時間が選択され、コンフルエンスの近くである生育曲線の終わりで増殖の変化が測定される細胞系や実験系で、困難なく使用できます。こ れは、生育の遅い上皮細胞(ZF 07)や内皮細胞(HUVEC)での比較実験で示されます。これらの場合、2つのBrdUシステムは、コレラ毒素の使用による細胞分裂の阻害能や、標準培 地に比較しての無血清内細胞培地の促進能に関して、ほとんど同じ情報を提供します。発色テストの吸光度が直線域内の時、BrdUの取込みにおける差異は、 化学発光分析と同様となります。

測定を、一つの実験において様々な条件下で、様々な増殖細胞で行わなければならない時、直線域の広い化学発光試験が、選択される方法です。一方、増殖実 験を数種あるいは一種の細胞で行う場合は、より使用法の簡単な発色法が採用できます。発色法を使用する場合は常に測定域の制限を考慮してください。しか し、その他の多くのELISAキットに比べ、BrdUの直線域は拡張しています。後者は標識された培養細胞がシグナルを産生する細胞内ELISAのため、 サンプルを希釈する必要はありません。このような場合、別法は、より短時間の標識時間で完全に新たな実験を行うためのものです。シグナルを直線域に運ぶた めに細胞数を減らすことは、細胞群のin vitro 増殖特性が変化するため、うまく行かない可能性があります。

これらの観察は、実際の適切性を示しています。吸光度計より高価なため、日常的にDNA合成を測定している研究室が、発光測定に要求される実験機器を持っているわけではありません。上述の実験がこの決心の一助になれば幸いです。

Order INFO

製品名 製品番号 包装単位 希望価格
細胞増殖 ELISA、BrdU (発色) 1647229 1キット
(1000回テスト)
←製品番号をクリック
細胞増殖 ELISA、BrdU (化学発色) 1669915 1キット
(1000回テスト)
←製品番号をクリック
In-Situ 細胞増殖キット、FLUOS 1810740 1キット
(100回テスト)
←製品番号をクリック
細胞増殖試薬WST-1 1644807 1キット
(2500回テスト)
←製品番号をクリック

マニュアルのご請求

http://www.rochediagnostics.jp/bioche/bio_index.htm

BIOCHEMICA 2001 NUMBER 4(No. 85)

当社のカタログに掲載する製品は、ライフサイエンス分野の研究のみを目的としています。特に明記のない限り、診断用途目的には使用できません。カスタムバイオテック製品は、特に明記のない限り工業原料用のみを目的としています。
本ウェブサイトでは、幅広い利用者を対象とした製品情報を掲載しています。お住まいの国では利用できない製品、もしくは認可を受けていない製品の詳細情報が掲載されている場合もあります。それぞれの居住国における正当な法的手続や規制、登録、慣習法を満たしていない可能性のある情報の閲覧に関しては、当社は一切の責任を負いません。

ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社 〒105-0014 東京都港区芝2-6-1