蛍光をベースとしたマルチプレックス ミクロサテライトPCRによる、結腸直腸腫瘍中の異形接合性の消失(LOH)とミクロサテライトの不安定性(MSI)の検出

2 TIPS and FACTS

はじめに

結腸直腸ガン(CRC)は西欧社会におけるガン死の中で、最も多いケースの一つです。約15%のCRCに優性遺伝のパターンが見られ、家族性腺腫ポリポー シス(FAP)と遺伝性ノンポリポーシス結腸直腸ガン(HNPCC)の、2つの家族型がよく定義されています。HNPCC症候群の主要な特徴は、ミスマッ チ修復(MMR)システムの不良が原因で起こる、ミクロサテライトの不安定性(MSI)です。DNAの複製の間に起こったエラーは修復できず、ヌクレオチ ドのミューテーションと置換がミクロサテライトの単純反復配列内に導かれます。

今回のレポートでは、ミクロサテライトマーカーに基づくロシュ・ダイアグノスティックスのミクロサテライト不安定性テストキットを、ルーチンのHNPCCスクリーニングアッセイとして評価しました。

HNPCCミクロサテライト不安定性キットの内容

バイアル/
キャップ
ラベル 内容
1 (パープル) コントロールDNA
  • 25μl(20 ng/μl)
  • ヒトゲノムDNA(白血病細胞株由来)
2

(ホワイト)

マルチプライマー ミックス、5x
  • 5 x 110μl
  • 色々な蛍光色素(6-FAM, TFT, HEX)で標識したプライマーのミクスチャー
3

(イエロー)

酵素マスター ミックス、5x
  • 5 x 110μl
  • バッファー、Taq DNAポリメラーゼ、dNTPミックスを含む
4

(無色)

蒸留水、滅菌、PCRグレード
  • 2 x 1 ml

材料と方法

165の初代結腸直腸腺ガンでミクロサテライトの不安定性を分析しました。ゲノムDNAは5μm厚のパラフィン包埋切片より、キットのプロトコールとHigh Pure PCRテンプレート プレパレーションキットを組み合せて調製しました。

組織切片処理

  1. キシレンによる脱パラフィン
  2. エタノール系列による再水和
  3. ヘマトキシリン/エオシンによる染色
  4. 0.5 cm2の正常組織とガン組織を切除

DNAの精製

  1. High Pure PCRテンプレートプレパレーションキット内の、溶解バッファーとプロティナーゼK溶液で組織を溶解。
  2. 夾雑物を遠心で除去
  3. 透明な上澄をHigh Pureカラムに通し、DNAを精製、回収

マルチプレックスPCR

マルチプレックスPCRはHNPCCミクロサテライト不安定性キットに従い行いました。(略)

ミクロサテライトの検出

増幅PCR産物はPRISMシークエンサー モデル310で分析されました。

MSIは腫瘍DNAのPCR増幅の後、異常なピークの存在により決定され、このピークは正常なDNAには存在しませんでした。5個の遺伝子座の内で1個以上不均一な不安定性を示す場合(少なくとも40%の不安定遺伝子座; 8,10)に、腫瘍は高いMSI(MSI-H)として定義されました。ミクロサテライトの不安定性が見られない場合、腫瘍はミクロサテライト安定性(MSS)と分類されました。1種類のマーカーのみ不安定性(20% 不安定性遺伝子座)の場合、腫瘍は低ミクロサテライト不安定性とされました。

図1: 高いMSIのフラグメントパターン。5個の遺伝子座全てでミクロサテライトの不安定性が示されている。
図1a:三種類のラベルの蛍光を1つの図にまとめたもの。Bat26(緑)、Bat25(青)、APC(黒)、Mfd15(緑)、D2S123(青)。

結果と考察

  • 165サンプル中148サンプル(90%)のDNAの増幅と分析に成功しました。残りの17サンプルでは増幅に失敗しました。未標識 プライマーで通常のPCRを行い、銀染色を行っても検出は不可能でした。パラフィン包埋前の組織サンプルの固定が長期に渡ったか、不適切であったためサン プル中のDNAが分解していたと考えられます。
    148サンプルがHNPCCミクロサテライト不安定性キットでの分析に成功しましたが、未標識プライマーでのPCRの後の銀染色法では12サンプルが失敗 しました。これは標準法である銀染色法の感度が、いくつかのケースでは十分でないという事を示しています。HNPCCミクロサテライト不安定性キットで は、完全なゲノムDNAが少ししか分離できない場合も成功しました。
  • MSIに加え、異形接合性の消失(LOH)もHNPCCミクロサテライト不安定性キットでの分析で検出できました。新しい対立遺伝子 が形成されるMSIに比べ、LOHは腫瘍DNA(分析細胞中のいくつかのサブポピュレーション)中の野生型対立遺伝子の消失に相関します。それゆえLOH の検出では、近接の正常細胞からのガン組織の不正確な切除が、特に問題となります。蛍光に基づくHNPCCミクロサテライト不安定性キットの優位点は、正 常および腫瘍対立遺伝子のピークの高さを計算する事により、対立遺伝子の消失が精密に決定できる事です。

もし切除が正確に行われれば、LOHは0.5以下か2.0以上の比率で表示されます。LOHは通常、二つのサイズの定量と増副産物の伸長が可能な方法で、行われるべきです。HNPCCミクロサテライト不安定性キットでの蛍光に基づくPCRはこの基準を満たします。

  • 図2は銀染色と、蛍光に基づくHNPCCミクロサテライト不安定性キットを用いての定量的アッセイとの比較です。蛍光に基づくPCR では、正常細胞と腫瘍細胞の蛍光強度比が正確に測定されますので、LOHの程度の評価が可能です。銀染色の飽和の速さと低解像度は、LOHの程度の評価を 困難にしています。

図2:銀染色でのモノプレックスPCRと、HNPCCミクロサテライト不安定性キットを用いての、マルチプレックスPCRのデータ分析の比較。2個の遺伝子座(D2S123とAPC)を持つLOHの場合、データは異形接合性の消失を示している。
図2a:D2S123遺伝子座。6.6のLOH値が各遺伝子座の主要ピークの高さを基に計算された。
図2b:APC遺伝子座。3.0のLOH値が各遺伝子座の主要ピークの高さを基に計算された。

結論

HNPCCミクロサテライト不安定性キットを用いて、165結腸直腸腫瘍サンプルのミクロサテライト不安定性を分析しました。このキットは5種類のミクロ サテライトマーカー、BAT25, BAT26, D5S346[APC], D2S123, Mfd15[D17S250]を同時に、蛍光をベースとした増幅を可能にします。これらのマーカーは、MSIを高感度で特異的に検出する事ができ、MSI 状態の決定の最初に選択すべきパネルであると推奨されます。

製品名 製品番号 包装単位
HNPCCミクロサテライト不安定性キット 2041901 結腸直腸腫瘍研究サンプル50検体と、正常組織サンプル50検体分
High Pure PCRテンプレート調製キット 1796828 100回

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